欧州最強クラブを決める「UEFAチャンピオンズリーグ」(CL)がいよいよ開幕する。8月29日にグループステージの組み合わせ抽選が行われ、いわゆる“死の組”から本命不在のグループまで、さまざまな組み分けとなった。果たして32クラブの中から、ビッグイヤー(優勝トロフィー)を手にするのはどこか。

 最大の激戦区はE組

 グループステージ最大の激戦区はE組だろう。同組にはブンデスリーガ優勝のバイエルン・ミュンヘン(ドイツ)、プレミアリーグ王者のマンチェスター・シティ(英国)、ロシア・スーパーリーグを制したCSKAモスクワ(ロシア)、セリエA2位のASローマ(イタリア)が顔を揃えたのだ。

 その中で首位通過の最右翼はバイエルンと見る。昨季は準決勝でレアル・マドリードに2戦合計0−5で粉砕された。今季は2季ぶり、6度目の欧州制覇を目指している。

 バイエルンの主将DFフィリップ・ラームは組み合わせの決定を受けて<簡単なグループではない。非常に良いチームが3つも揃っている。わけてもマンチェスター・シティーは、英国チャンピオンだ。特にアウェイでは難題を乗り越えていかねばならないだろう>(クラブ公式サイト)と語っている。確かに、アウェイで勝ち点を取りこぼせば厚い戦力層を誇るバイエルンといえども苦しい戦いを強いられることになるだろう。そうならないためにも、ホームで迎えるマンCとの初戦は、是が非でも勝ち点3を確保したいところだ。

 バイエルンに勝るとも劣らない戦力を誇るのがマンCだ。コートジボワール代表MFヤヤ・トゥーレ、スペイン代表MFダビド・シルバ、アルゼンチン代表FWセルヒオ・アグエロ、ベルギー代表DFヴァンサン・コンパニら各国の代表選手が揃った。今季はここにフランス代表DFバカリ・サーニャなどの即戦力が加わった。

<シティに繋がっているすべての人達の目標は、昨シーズンからの向上だ。シーズン終了後、シーズンの出来をアナライズし、更なる向上を得るのが普通である。我々はとても優秀な選手達を獲得する事ができたし、チャンピオンズリーグでの成績をさらに向上させる事を目標にしている>(クラブ公式サイト)
 かつて浦和レッズでプレーし、現在はマンCのスポーツ・ディレクターを務めるチキ・ペギリスタインはこのように上位進出への意欲を述べた。“シチズンズ”(マンCの愛称)が狙うはこれまでの最高成績であるベスト16以上だ。

 クラブ史上初の欧州制覇を目指すローマも、虎視眈々と“死の組”突破を狙っている。中心選手は“生ける伝説”であるFWフランチェスコ・トッティ。37歳のキャプテンは今季も主力としてチームを牽引している。精神的支柱であるトッティがゴールに絡めば、周囲の勢いも増す。フル出場は厳しいだろうが、限られた時間内で結果を出す勝負強さに注目したい。また、元イングランド代表DFアシュリー・コール、バルセロナ等で活躍したマリ代表MFセイドゥ・ケイタら経験豊富な選手の加入も心強い。初戦はホームでCSKAモスクワと戦う。戦力では上回っているだけに、グループステージ突破へ勝ち点3獲得は必須だ。

 CSKAモスクワはE組の他のクラブに比べて戦力で劣ることは否めない。しかし、3強にもつけ入るスキはある。それはチームの完成度の高さだ。レオニド・スルツキ監督は今季で就任6季目を迎えている。また在籍13年目のDFアレクセイ・ベレズツキー、同10年目のDFセルゲイ・イグナシェヴィッチを中心とした守備陣は強固で、簡単には崩されない。堅守でボールを奪った後は圧倒的なスピードを持つFWセイドゥ・ドゥンビアを走らせる。カウンターサッカーがうまくはまれば、バイエルンやマンCといった強豪から勝ち点を奪うことも十分に可能だろう。

 香川は輝きを取り戻せるか

 日本人選手のプレーも見逃せない。今季、CLに出場するクラブに所属しているのはMF香川真司(ドルトムント)、DF内田篤人(シャルケ)、FW柿谷曜一朗(バーゼル)、FW田中順也(スポルティング)の4人。欧州最高峰の舞台で彼らはどのような輝きを見せてくれるのか。

 香川は移籍期限ギリギリにマンチェスター・ユナイテッド(英国)からドルトムント(ドイツ)へと移籍した。言うまでもなくドルトムントは香川が欧州でのキャリアをスタートさせたクラブだ。ブンデスリーガ連覇に貢献した香川は、チーム、サポーターから絶大な支持を得ていた。それは彼がマンUに移籍した後も変わらなかった。香川はマンU移籍2年目の12−13シーズンにデビッド・モイーズ監督の下で出場機会が激減した。この状況を悲観したドルトムントサポーターがtwitterで「#free shinji」(真司を解放せよ)なるキャンペーンを敢行し、大きな反響を呼んだ。今季もルイス・ファン・ハール監督の構想から外れた香川は、ついに古巣復帰を決意した。

「自分の未来に向かってドルトムントでまたチャレンジします!」
 移籍決定を受けて香川は自身のtwitterでこう書いた。幸い、チームの陣容はそれほど大きく変わっていない。ユルゲン・クロップ監督、ドイツ代表DFマッツ・フンメルス、同MFケヴィン・グロスクロイツらは香川のプレーを理解している。チームにフィットするのに時間はかからないだろう。香川に必要なのは試合に出ることだ。出場機会を得られれば、味方を生かし、自らもゴール奪う彼本来の輝きはきっと戻ってくるはずだ。

 ドルトムントはグループステージでアーセナル(英国)、ガラタサライ(トルコ)、RSCアンデルルヒト(ベルギー)と同じD組に入った。他クラブの戦力を見れば、グループステージ突破はそう難しくはないはずだ。ドルトムントは一昨季にファイナルまで進んだものの、宿敵バイエルンに敗れて涙を呑んだ。香川にはチームの中心としてファイナル進出の原動力となり、その先にある日本人初のCL制覇を目指してほしい。

 日本人所属クラブ同士が激突

 G組では日本人対決が実現しそうだ。内田のいるシャルケ(ドイツ)と今季から田中が移籍したスポルティング(ポルトガル)が、チェルシー(英国)、マリボル(スロベニア)と同じG組に入ったのだ。G組はチェルシーが頭ひとつ抜けており、残る1枠をシャルケとスポルティングが争う構図だ。

 内田は右ヒザの炎症が悪化し、戦列を離れていたが、5日の練習試合で実戦に復帰した。まだ痛みはあるようだが、内田を起用できる目途が立てばチームはすぐにでも彼を必要とするだろう。というのも、シャルケはケガ人が続出しているからだ。攻守にバランスのとれた内田が復帰すれば、チームの戦力値は大きく上がる。また彼はクラブ初のCLベスト4(11−12シーズン)も経験しており、精神面でもチームに貢献できる存在だ。シャルケが再びCLの上位に進出するためには内田の復調がカギとなる。

 スポルティングの田中は、今夏に柏レイソルから移籍した。強烈で精度の高いシュートが魅力のレフティーで、新生日本代表にも選出されている。入団直後には田中に約83億円の移籍違約金が設定され、海外メディアの注目を集めた。余談だがイタリアのスポーツ紙「ガゼッタ・デロ・スポルト」は「無名の選手にすごく巨額の条件が付けられた。でもこの田中って誰?」と報じたという。スポルティングでの序列は控えだが、左利きのアタッカーは貴重だ。練習試合などで地道に結果を残していけば早期のレギュラー確保も見えてくる。そしてCLで活躍すれば、田中の名は瞬く間に世界に轟く。得意の左足でスターへの道を切り拓けるか。

 柿谷が所属するFCバーゼル(スイス)はB組に入り、連覇を狙うレアル・マドリード(スペイン)、リバプール(英国)、ルドゴレツ(ブルガリア)と戦うことになった。レアルはスペイン代表DFセルヒオ・ラモス、リバプールはクロアチア代表DFデヤン・ロブレンが守備を統率している。柿谷とってレアル、リバプールの守備陣から点を奪うのは容易ではない。しかし、彼らとの対戦は世界水準を知る上での指標となることは間違いない。またクリスティアーノ・ロナウドといった世界屈指のアタッカーのプレーも間近で感じられる。CLの経験は“天才”と称された柿谷をもう一皮も二皮もむけさせるきっかけになるかもしれない。

 昨季のリーグ上位クラブが顔を合わせる贅沢なマッチメイクと豪華絢爛なスター選手たちの競演。スカパー!ではそんな至高のCL全125試合を放送する。リアルタイムで生の熱狂を、録画放送でじっくりとゲームのディテールを堪能したい。

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【2014−15欧州チャンピオンズリーグ グループリーグ第1節】
※放送スケジュールは変更の可能性があります。詳しくは上記バナーより、公式サイトまで

9月16日(火) 27:45キックオフ
◇グループA
オリンピアコス・ピラエウス(ギリシャ) × アトレティコ・マドリード(スペイン)
ユヴェントス(イタリア) × マルメFF(スウェーデン)

◇グループB
リバプール(英国) × ルドゴレツ(ブルガリア)
レアル・マドリード(スペイン) × FCバーゼル(スイス)

◇グループC
ASモナコ(フランス) × バイヤー・レヴァークーゼン(ドイツ)
ベンフィカ(ポルトガル) × ゼニト・サンクトペテルブルク(ロシア)

◇グループD
ガラタサライ(トルコ) × RSCアンデルルヒト(ベルギー)
ドルトムント(ドイツ) × アーセナル(英国)

9月17日(水) 27:45キックオフ
◇グループE
ASローマ(イタリア) × CSKAモスクワ(ロシア)
バイエルン・ミュンヘン(ドイツ) × マンチェスター・シティ(英国)

◇グループF
FCバルセロナ(スペイン) × アポエル・ニコシア(キプロス)
アヤックス(オランダ) × パリ・サンジェルマン(フランス)

◇グループG
チェルシー(英国) × シャルケ(ドイツ)
マリボル(スロベニア) × スポルティング(ポルトガル)

◇グループH
ポルト(ポルトガル) × BATEボリソフ(ベラルーシ)
アスレティック・ビルバオ(スペイン) × シャフタール・ドネツク(ウクライナ)

(試合開始時刻は日本時間、左チームがホーム 各グループ上位2クラブがベスト16ステージ進出)

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