2014年のプロ野球も、ついに最終章に突入する。11日からはセ・リーグ、パ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)が同時にスタート。25日開幕の日本シリーズまで手に汗握る試合が続きそうだ。スカパー!ではCSを全試合生中継で放送する。球場に足を運べないファンも、日本シリーズ進出をかけた熱戦をリアルタイムで楽しみたい。

 今季はパ・リーグで昨季のAクラスとBクラスが逆転。福岡ソフトバンクが11年以来のリーグ優勝を決め、最後まで優勝を争ったオリックスが2位で6年ぶりにCSに出場する。一方、セ・リーグは巨人が3連覇を達成。2位・阪神、3位・広島と昨季と同じ順位となった。

 CS制度がセ・パともに導入されて今季で8年目。2年目の08年からファイナルステージ(4勝制)で優勝チームに1勝のアドバンテージを与える方式が続いている。このシステムになって以降、2位以下のチームがCSを勝ち抜いて日本シリーズに進出したのは10年の千葉ロッテしかない。1位チームに優位な条件をはねのけ、下剋上の可能性はあるのか。

 微差が大差を生んだオリックス

 パ・リーグではオリックスに注目したい。このチームの強みは投手陣だ。最多勝(16勝)と最優秀防御率(1.98)の2冠に輝いたエースの金子千尋、開幕8連勝でチームに勢いをつけた西勇輝の2枚看板を擁し、クロスゲームに持ち込めば岸田護、馬原孝浩、比嘉幹貴と力のある中継ぎを投入する。セットアッパーの佐藤達也、クローザーの平野佳寿とつなぐリレーは盤石だ。昨年5月28日から、この9月7日まで7回終了時でリードしていた試合は101連勝を記録した。

 微差が大差を生む――。それが森脇浩司監督の野球哲学である。接戦においては、ちょっとしたミスが命取りとなる。この森脇イズムの下、監督2年目の今季、オリックスの守りは劇的に改善された。失策数61は12球団最少である。攻撃においても、わずかなスキを突いて、先の塁を狙う姿勢を徹底させた。盗塁数は監督就任前の12年にはわずか49個(12球団最少)だったが、今季は126個と大幅に増やした。

 現役時代、内野のユーティリティプレーヤーだった森脇監督は、「守備と走塁は、ともに向上していくもの」ととらえている。
「野球の練習では守備と走塁というのはまったく異質なものだととらえられがちです。でも、僕は守備の裏返しが走塁、走塁の裏返しが守備だと思っているんですね。いかに前の塁を奪うかを常々考えてプレーしていれば、守備でも相手にスキを与えないようになる。守備がうまい人は、それを走塁でも応用できるんじゃないでしょうか」
 決して目立たない守備、走塁の底上げもチームの躍進を支えた。まさに微差が大差を生んだのだ。

 福岡ソフトバンクとの最終決戦に敗れ、18年ぶりのリーグ制覇はならなかったものの、両チームの戦力差はほとんどないと言っていい。ただし、首位と勝率わずか3厘差でも2位は2位だ。1勝のアドバンテージはやはり大きい。この意味でも、微差は大差である。

 不利な状況をはねのけてCSを突破するには、金子、西を立てた試合での勝利が必須になる。北海道日本ハムとのファーストステージでも、この2人の先発起用が予想される。ここをしっかり勝ってソフトバンクが待つファイナルステージでも2人で着実に2勝をあげられるか。そうすれば、ブランドン・ディクソン、松葉貴大ら3番手以降の先発陣で4試合のうち2勝するという計算が立つ。

 特に9月以降、0勝3敗、防御率4.98と調子を落としていた西の復調はカギを握るだろう。彼と7月に会った際、今季好調の理由を訊くと、「1球に責任を持って投げるように意識している」と答えた。昨季、不用意な1球で一発を浴びた際、森脇監督から「無責任なボールがあった」と叱られたという。
「100球投げて、100球とも責任を持つ。それはすごく大変なことです。でも、1球が命取りになる。その1球を後悔しても元には戻れない」
 短期決戦は1球で流れが変わる。最終決戦で敗れ、1球、そしてワンプレーの重みを知ったオリックスナインはファイナルステージで1勝の“大差”を埋められるのか。

 もちろん、レギュラーシーズンでは上位2チームから大きく引き離された日本ハムも3位からの大逆転は十分あり得る。こちらのキーマンは二刀流の大谷翔平だろう。今季はチームトップの11勝をあげ、ファーストステージの第1戦先発が濃厚だ。そして第2戦以降はバッターとして期待がかかる。とりわけ、対オリックスは打率.326。投打にオリックスを牛耳れば、余勢を駆っての鷹狩りもみえてくる。

 広島のカギ握るロサリオとヒース

 セ・リーグは優勝した巨人に不安材料がある。最優秀防御率(2.33)のタイトルを手中にし、チームトップの12勝をあげた菅野智之が右ヒジの靱帯を痛め、登録抹消されたのだ。少なくともCSでの登板は絶望的だ。今季FA移籍した大竹寛も右肩の違和感で戦線を離れた。攻撃面でも巨人はチーム打率.257、596得点はともにリーグ5位。昨季までの強力打線が影を潜めている。阪神、広島、いずれが勝ち上がるにしても、攻撃力で手負いの巨人を叩きたい。

 その点では、広島の赤ヘル打線には破壊力がある。ともに打率3割以上をマークした菊池涼介、丸佳浩の上位打線は長打力と機動力を兼ね備える。主砲のブラッド・エルドレッドは不振で2度の2軍落ちを経験したが、9月中旬に復帰してからは打率.295、4本塁打と調子を取り戻してきた。エルドレッドが「ケニー」と慕っていた野村謙二郎監督は今季限りで辞任する。指揮官に恩返しをしたいと、このCSには期するものがあるはずだ。広島もブライアン・バリントンが右尺骨神経炎、抑えのキャム・ミコライオが左股関節唇損傷と故障者が出ており、投手力には不安がある。打線で投手陣をカバーしたい。

 前半戦はホームランを量産したエルドレッドがスランプに陥った背景には、後ろを打つキラ・カアイフエの不調も影響があったとみられる。キラは昨季、途中加入ながら14本塁打を放ち、CS初出場の立役者となった。キラが好調であれば、相手ピッチャーは前のエルドレッドと勝負せざるを得ない。ところが、今季のキラは打率.257、11本塁打と精彩を欠いた。相手は「ボール球を振ってくれれば儲けもの」という気持ちでエルドレッドと相対することができる。エルドレッドが「ボール球を追いかける」ようになればしめたものだ。こうしてエルドレッドは負の連鎖から抜け出せなくなっていったように映る。

 しかし、8月以降昇格したテスト生上がりのライネル・ロサリオが限られた出場機会ながら打率.342、14本塁打と結果を残し、中軸に定着した。好調のロサリオが、エルドレッドの後ろに座ったのも主砲の復調と無縁ではあるまい。ロサリオは対阪神の成績が打率.333。対巨人に至っては打率.400と打ちまくっている。CSでもドミニカの5番打者が活躍すれば、相乗効果でエルドレッドのバットも爆発する確率が高くなる。

 打のポイントとなるのがロサリオなら、投のカギを握るのはデュアンテ・ヒースだ。7月末にチームに加わった助っ人右腕は150キロ超の速球とスライダーを武器に7試合で3勝をあげた。広島OBの北別府学は「ヒザ元のボールがぐっと伸びる。球筋もコントロールもいい」と評価していた。CSで激突する巨人と阪神には1試合ずつの登板のみで、バッターにとってはデータが少ない。エースの前田健太に次ぐ2番手として好投をみせればおもしろくなる。

 2位の阪神は過去CSに4度出場しながら、いずれもファーストステージ敗退。しかも、08年の第2戦で勝って以来、5連敗中だ。昨年も2位で甲子園に広島を迎えながら、レフトスタンドを赤く染めた相手の勢いに飲み込まれた。

 負の歴史を断ち切ってファーストステージを突破し、ファイナルステージで宿敵・巨人を打ち破るには、こちらも助っ人外国人の頑張りが欠かせない。広島戦に打率.341、4本塁打と強いマット・マートン、巨人戦で打率.307、6本塁打と当たっているマウロ・ゴメスが打線を牽引できるかどうか。

 投手では今季の最多勝(13勝)に輝いたランディ・メッセンジャーは巨人相手に4勝(1敗)をあげている。巨人とは最終的に7ゲーム差をつけられたが、直接対決は阪神の11勝13敗と、ほぼ互角。リードを奪ってセーブ王(39S)の呉昇桓につなぐパターンを数多くつくりたい。

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【クライマックスシリーズ日程】 ( )内は中継局(クリックすると各局のサイトに飛びます)、時間は試合開始時刻

◇パ・リーグ第1ステージ(FOXスポーツ&エンターテイメント
 オリックス × 北海道日本ハム 京セラドーム大阪
第1戦 10月11日(土) 14時
第2戦 10月12日(日) 14時
第3戦 10月13日(月) 14時

◇パ・リーグ第2ステージ(FOXスポーツ&エンターテイメント
 福岡ソフトバンク × 第1ステージ勝者 ヤフオクドーム
第1戦 10月15日(水) 18時
第2戦 10月16日(木) 18時
第3戦 10月17日(金) 18時
第4戦 10月18日(土) 13時
第5戦 10月19日(日) 13時
第6戦 10月20日(月) 18時

◇セ・リーグ第1ステージ(11日、13日はGAORA 12日はスカイ・A sports+
 阪神 × 広島 甲子園 
第1戦 10月11日(土) 14時
第2戦 10月12日(日) 14時 
第3戦 10月13日(月) 14時

◇セ・リーグ第2ステージ(日テレG+
 巨人 × 第1ステージ勝者 東京ドーム
第1戦 10月15日(水) 18時 
第2戦 10月16日(木) 18時
第3戦 10月17日(金) 18時
第4戦 10月18日(土) 18時
第5戦 10月19日(日) 18時 
第6戦 10月20日(月) 18時

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