リーグチャンピオンシップでは、あと1勝のところまで前後期制覇の徳島を追いつめながら、最終戦で敗れ、悲願の年間優勝を達成することができませんでした。監督の一番の仕事は継投と言われますが、第2戦以降はすべて接戦でピッチャー交代の難しさを思い知らされました。
 初戦を正田樹の好投で制して迎えた第2戦、愛媛は相手エースの入野貴大から6回に1点を先制しました。しかし、得点が入ったことで、先発の小林憲幸が慎重になり過ぎ、四球で走者を溜めてしまいました。迷った結果、下した決断は続投。ところが、小林は小野知久に逆転タイムリーを打たれ、継投が後手に回ったことで、さらに追加点を許す結果となりました。

 愛媛に戻り、第3戦は再び正田の力投で勝利し、徳島のアドバンテージを含め、2勝2敗のタイ。最終第4戦は小林が先発を務め、愛媛は高田泰輔のソロで1点をリードして終盤に突入しました。7回、小林が先頭打者に四球を出したところで、今度は早めにピッチャーを東風平光一にスイッチ。第2戦と同じ轍は踏まないつもりでしたが、今度は東風平が小林義弘に逆転タイムリーを浴びました。続投か継投か……。これはレギュラーシーズンでも頭を悩ませる部分ではありますが、短期決戦ではより重要なカギを握ると改めて痛感しました。

 年間優勝は達成できなかったものの、前期最下位から頂点まであとひとつのところまで戦えた点は、来季にうまくつなげなくてはいけません。僕も監督1年目で肩に力が入り、余裕がありませんでしたから、来季はもっと自然体でチームづくりや采配が振るえるのではないかと思っています。現在はみやざきフェニックス・リーグに参加中の選手もいるため、愛媛に残っている選手は10名程度。その分、マンツーマンで徹底的に練習し、レベルアップを図っているところです。

 独立リーグは選手の入れ替えが多く、既に愛媛では7選手と来季の契約を結ばないことを発表しています。他にも今季限りで引退、退団を希望している選手がおり、チームはまた1からのスタートになると予想されます。

 今後、トライアウトなどを通じた選手補強のポイントはピッチャーです。前期は低迷していたチームが後期に結果を残せたのは、やはり正田やホセ・バレンティンといったピッチャーを補強できたから。特に試合をつくれる先発候補は何人いても不自由しません。球速はそこまでなくても、制球力で勝負できるピッチャーを探したいと考えています。

 また内野手も、このままだと手薄になりそうです。内野はまず守れることが最優先。グラブさばきや足の運びをチェックして、鍛えれば伸びそうな選手を確保するつもりです。少々打てなくても足が速く、機動力が使えると、なお良いですね。

 フェニックス・リーグには11日から4日間、リーグ選抜の監督として指揮を執りました。台風のため、2日間、試合が中止になったのは残念でしたが、横浜DeNAの三嶋一輝、千葉ロッテの唐川侑己と1軍クラスのピッチャーと対戦できたことは非常に良かったです。特に唐川は1軍での実績もあり、レベルが明らかに違いました。とはいえ、アイランドリーグの選手たちが、そのことに感心しているだけではいつまで経っても追いつけません。

 ベンチから選手を見ていると、どうも相手と戦う前から名前負けしていたのが気になりました。確かに唐川は素晴らしいピッチャーです。ただし、自分の力を信じて立ち向かえば、決して打てないことはないはずです。ここで打ってこそ本当のアピールになる。そのくらいの気構えで挑んでほしかったと感じました。その意味では唐川からマルチヒットを放った高田は、来季へ大きな自信を持てたのではないでしょうか。

 昨季まで2軍監督やコーチを務めてきたオリックスは今季2位に躍進しました。チームを離れても、2軍で指導してきた駿太ら若い力が1軍で活躍する姿を見るのはは非常にうれしいものです。特に駿太の成長は目覚ましいものがあります。“上州のイチロー”と呼ばれて高卒でプロ入りしたものの、最初は得意のバッティングでプロの壁にぶち当たりました。

 精神的にも未熟なところがあり、打てないと全力疾走をしなかったり、ヤル気を失ってしまう部分が見受けられました。彼にはプロとしての姿勢の部分から、いろいろと教えたつもりです。今季はスイングが一層、力強くなり、もともと持っていたバッティングセンスが花開き始めました。強肩で外野守備に関しては言うことがありませんから、来季は完全にレギュラーを獲り、チームの中心選手となってほしいと願っています。

 駿太のように最初はプロとして半人前でも、2年、3年と鍛えていくうちに、ものすごい成長曲線を描く選手がいます。愛媛でも、そういった選手と数多く出会い、NPBへ行くサポートができるよう頑張ります。

 チームとしての目標は、もうチャンピオンになることしかありません。今季のスローガンに掲げた「日々新た」の心境で、今後も選手たちとともに上を目指していきます。チャンピオンシップでは愛媛の皆さんから熱い応援をいただきました。本当にありがとうございました。来季も引き続き、よろしくお願いします。


弓岡敬二郎(ゆみおか・けいじろう)プロフィール>:愛媛マンダリンパイレーツ監督
 1958年6月28日、兵庫県出身。東洋大姫路高、新日鐵広畑を経て、81年にドラフト3位で阪急(現オリックス)に入団。1年目からショートのレギュラーとなり、全試合出場を果たすと、84年には初の打率3割を記録してリーグ優勝に貢献。ベストナインとダイヤモンドグラブ賞を獲得する。87年にもゴールデングラブ賞に輝き、91年限りで引退。その後もオリックス一筋で内野守備走塁コーチ、2軍監督、2軍チーフコーチ、スカウトなどを歴任。13年をもって33年間在籍したチームを退団し、愛媛の監督に就任した。現役時代の通算成績は1152試合、807安打、打率.257、37本塁打、273打点、132盗塁、240犠打。

(このコーナーでは四国アイランドリーグplus各球団の監督・コーチが順番にチームの現状、期待の選手などを紹介します)


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