二宮: お久しぶりです。ここ数年はプロレスラーとしてのみならず、自動車のCMでのジャイアンもハマリ役ですね。キャスティングの妙を感じます。
小川: ありがとうございます。実はジャイアンは最初、「声優をやってくれないか」という話しか聞いていなかったんです。ところが現場に行ってみると、のび太役の妻夫木聡君がいて、衣装を着せられて歌まで歌わされる。「なんだ、これは?」と思っていたら、実写の『ドラえもん』という設定でCMになっていました(笑)。

二宮: 本人が知らなかったとはおもしろい(笑)。子どもたちにも「ジャイアン」と呼ばれて人気なのでは?
小川: 生徒も平気で「ジャイアン」と言ってきますよ。親御さんが「先生にそんなこと言うもんじゃない」と焦っていますけどね(笑)。

二宮: 今回は本格そば焼酎「雲海 黒麹」をご用意しました。ソーダ割りのSoba&Sodaで乾杯しましょう。
小川: 普段、焼酎はロックや水割りで飲むことは多いですが、そば焼酎のソーダ割りは初めてですね。あ、これはとても飲みやすい。これは何杯でもいけそうです(笑)。

二宮: 柔道家やプロレスラーはお酒好きが多い。小川さんもそうですか。
小川: 飲もうと思えば、いくらでもいけますよ(笑)。ソーダ割りにすると、すっきりとした後味になっておいしいです。ただ、さすがに最近は体調のことも考えて控えめにしています。

二宮: これまでで一番おいしいと感じたお酒は?
小川: いろいろありますね。地方に行って、その土地でしか飲めない焼酎をいただいた時もおいしかったですし、海外で飲んだお酒も忘れられません。バルセロナ五輪の後、現地で飲んだサングリアも印象に残っていますね。決勝で負けて落ち込んでいた時に、マドリードにいた同級生が「いくぞ」と連れ出してくれて毎晩、飲みましたよ。お酒のおかげで、幾分、気分が紛れましたね。

二宮: 勝利の美酒でも思い出に残るものがあるのでは?
小川: 海外の試合で勝つと、大きなシャンパンをいただいて皆で祝勝会をするんです。この時のお酒はおいしかったですね。逆に日本選手権で優勝した時はつらかった(笑)。優勝カップにお酒を注がれて、それを飲むんです……。

 息子の目標は「父超え」

二宮: 最近は長男の雄勢選手が柔道の全日本ジュニアで優勝するなど話題になっていますね。
小川: そうですね(笑)。でも、まだまだ、これからですよ。

二宮: 小川さんは19歳で世界選手権を制しています。雄勢選手も来年のリオデジャネイロ五輪では20歳ですから、十分、可能性があるのでは?
小川: 現行のルールでは国際舞台で成績を収めて、世界ランキング上位に入っておかないと出場資格を得られません。昨年の講道館杯では初戦敗退ですから、まずは国内で結果を出して世界で戦える力をつける必要がある。ただ、本人は実際にシニアの選手と対戦してみて、手応えをつかんだ部分もあったようです。

二宮: 身長は190センチとお父さん譲りの体格です。5年後の東京五輪に向けても期待が高まります。
小川: 2020年は24歳ですから、当然、そこは狙わないといけないでしょう。成長が遅いので体もまだ大きくなるはずです。ここからどこまで伸びるかは本人次第だと思っています。

二宮: 柔道の普及とともに、とりわけ重量級では海外の強豪選手が次々と出てきて、日本勢が簡単には勝てなくなってきました。その中で親子揃ってのメダル獲得となれば、快挙と言っていいでしょう。
小川: 確かに僕たちの頃から、昔のように1回戦は楽勝という状況ではなくなってきましたね。しかもソ連が分裂して、各国からそれぞれ強い選手が出てきました。ヨーロッパにもいい選手がいますし、今はモンゴルも高地トレーニングで強くなってきています。ブラジルも五輪に向けて強化している。世界のトップクラスは誰が勝ってもおかしくない時代だと感じます。

二宮: 小川直也の息子と騒がれるでしょうから、そのことが雄勢選手にとってプレッシャーにならなければいいのですが……。
小川: 意外と本人は僕を身近な目標に設定して頑張っているみたいですよ。僕も息子には大会で結果を残しても「オレの時はこうだった。もっと先を見ろ」と話をしてきました。僕は19歳、大学2年の時に世界選手権を制しているので、当面はそれを目指しているみたいですね。父親を超えてやろうという気持ちは強そうですよ。

二宮: それは頼もしいですね。
小川: 全日本ジュニアも、まさか勝てるとは思っていませんでした。息子曰く「大きい舞台の方が緊張しない」とか。まだ伸びしろはある子なので、それは大事にしたい。高校までは良くても、大学、社会人になって伸び悩む選手は僕もたくさん見てきました。その点では、むしろ僕たちの方が重圧を感じているかもしれません(苦笑)。

 メダリストと知らなかった

二宮: 雄勢選手が柔道を始めたのは、やはり小川さんの影響が大きかったのでしょうか。
小川: いえいえ。実は柔道とは無縁の環境で育ったんです。長男は僕がアトランタ五輪で負けて引退を表明した日に生まれました。物心ついた時にはプロレスをやっていて、柔道家だったことすら知らなかったんです。

二宮: えぇ!? それは驚きです。何かスポーツはやっていたのですか。
小川: クラシックバレエをしていました。体の柔軟性も高まるし、その道を進むのもいいかなと思っていました。すると、ある時、僕がプロフィール欄の特技に「柔道」と書いてあるのを見て興味を持ったみたいです。その頃、一度、僕の母校での練習についてきたことがあって、後輩たちが「やってみろ」と道着を着せて相手をしてくれた。それでバンバン投げ飛ばしたのがおもしろかったらしく、本人から「柔道をやりたい」と言ってきました。

二宮: さすがに五輪メダリストだから、お父さんのウワサは息子さんの耳にも入ってくるでしょう。
小川: そうでもなかったんです。その頃はプロレスラーとしてメディアに出ていましたから、過去の経歴があまり表に出てこなかった。でも、息子が興味を持って柔道の本を学校で借りてきたら、それが古賀稔彦の本だったんです。その中で全日本選手権で僕が古賀に勝ったことも出ていた。「なんだ、お父さん、やっていたじゃん」って。それで初めて僕が柔道のトップ選手だったことを知ったみたいです(笑)。

二宮: アハハハ。それはおもしろい。ということは小川さん自身も、積極的に柔道をやらせたいという気持ちではなかったと?
小川: そうですね。同じ道に進めば、いろいろと比較されますから。現役時代、僕も苦労したことを息子に味合わせたいとは思わなかった。だから、柔道を教え始めた時にも強くする気はさらさらなかったんです。受け身や礼儀作法、精神面を学んで、その後の人生に生かしてくれれば、という気持ちでした。

二宮: 小川道場を茅ヶ崎市に立ち上げたのは息子さんが柔道を始めたことがきっかけだったとか。
小川: 当時はハッスルが人気で、家に帰る暇もないくらい忙しい時期でした。最初は、どこかの道場に預けるつもりだったです。でも、実際にいくつか回ってみると、僕が思い描いている道場のイメージとはちょっと違う。小学生に対して勝利至上主義が強すぎると感じたんです。僕らがトップレベルでやっていた練習のマネごとをしている。どうせやるなら、長く柔道ができるように基礎をしっかり指導しつつ、伸び伸びとやらせたいと感じたんです。

二宮: 小川さんも柔道を始めたのは、高校からでした。小さい頃から詰め込み式でやるのは良くないと?
小川: 人それぞれでしょうが、僕自身は小中といろんな競技を経験して良かったと思っています。たぶん、息子も同じタイプだろうとみていました。それまでは自分の仕事ばかりで、ろくに親子関係も築いてこなかった。仕事を減らしてでも、子どもとの関係をつくる機会だと考えて、道場を立ち上げました。それが長男が小学4年になった春でしたね。

 古賀に理詰めで一本勝ち

二宮: 小川さんは小さい頃は野球もやっていたとか。
小川: はい。打つのは大好きでした。外国人バッターのマネをして結構、打球を飛ばしていたんですが、当時はダウンスイングが良いとされていた時代で、指導者にめちゃくちゃ怒られましたね(苦笑)。「バットは短く持って、上から叩け」と……。結局、レギュラーにはなれなくて、ずっと代打でした。

二宮: 野球界はもったいないことをしましたね。もし、小川さんの体格と能力を生かしていたら、プロでスラッガーとして成功していたかもしれない。
小川: 柔道だって、最初からやりたかったわけではないんです。最初はラグビーがやりたかった。ちょうどテレビで『スクールウォーズ』が人気だった時代です。でも、たまたま高校入試の面接で面接官が柔道部の先生だった。「やってみないか」と言われて、「イヤです」と答えたら合格できない。それで「いいですよ」と返事をしたら、その先生が家まで来て誘ってくれた。これが柔道を始めるきっかけだったんです。

二宮: 同学年には古賀さんがいました。彼との出会いは?
小川: 古賀は世田谷学園で当時からスーパースターでした。「どんなヤツだろう」と実際に会ってみると、そんなに大きくない。「どこがすごいんだ?」と実際に試合を見ていると、先輩たちがいとも簡単に投げられてしまう。あんな小柄な人間に負けるわけにはいかない。柔道に本腰を入れたのは彼がいたからこそなんです。

二宮: 古賀さんとの直接対決が実現したのは、先程、話題に出た1990年の全日本選手権の決勝です。小川さんは前年度の覇者で階級も上。周囲も小柄な古賀さんを応援するムードになっていましたから、やりにくかったでしょう。
小川: 古賀は大きい相手に対して、無理に投げようとせず、判定で勝つ作戦でした。だから判定に持ち込まれたらマズイ。それまでの古賀の対戦相手は「いつでも投げられるだろう」と強引に行って、時間だけが過ぎて負けていました。当時の重量級は技はあっても戦術がなかった。それが古賀を決勝まで行かせた一因でしょう。ならば僕は理詰めで古賀を倒そうと考えたんです。

二宮: 具体的にはどんな戦い方をしようと思ったのですか。
小川: 僕は準決勝までポンポンと勝ち上がってきて、古賀はいっぱいいっぱいで疲れている。だから、時間をうまく使いながら、相手を消耗させる作戦でしたね。体だけでなく、精神的にもきつい状態に追い込めば勝てると考えました。負けられないプレッシャーは大きかったですが、会場の日本武道館が超満員になって盛り上がった。僕の柔道人生でも忘れられない試合と言えるでしょう。

二宮: 結果は足車で一本勝ち。早いもので、あれから15年が経ち、今や古賀さんの長男・颯人選手も東京五輪を狙える有望株です。二世が日本を引っ張る存在になると、また柔道に対する注目度が高まるのではないでしょうか。小川さんにとっても柔道が親子を結びつける役割を果たしたわけですね。
小川: 息子の方から柔道という共通項をつくってくれてチャンスをもらったと感じましたね。おかげさまで仕事はたくさんいただいていましたけど、どこまでやってもキリがない。どこかで線引きをしなくてはいけない時期だったんだと今は思っています。仕事の関係先からは、いろいろ言われましたが(苦笑)、柔道のおかげで家族の絆を取り戻せたと僕はとらえています。

二宮: では、親子で会話をすることも増えたと?
小川: 息子と話をする中で、興味を持つことも増えましたね。ウチは試合で勝ったら、欲しいものを買ってあげるルールなんです。全日本ジュニアで優勝した時にはヘッドフォンをおねだりされました。最近はスマートフォンに入れた音楽をヘッドフォンで聞くのが流行っているようですね。実際に見たら、いろんな種類があって意外と値段も高い(笑)。その前に買ったロードバイクは僕自身もハマって乗るようになりました。健康にもいいし、こうやって新しいものに触れられるのも息子のおかげだと感謝しています。

(後編につづく)

小川直也(おがわ・なおや)
1968年3月31日、東京都生まれ。八王子高入学後に柔道を始め、明治大1年時に全日本学生を優勝。翌年の世界選手権無差別級で19歳にして初出場初優勝を果たす。89年には全日本選手権を初制覇(以降5連覇)すると、世界選手権では95キロ超級と無差別級で2階級を制覇。91年の世界選手権でも無差別級を制し、3連覇を達成した。92年のバルセロナ五輪では95キロ超級銀メダル。96年の全日本選手権で7度目の優勝を収め、アトランタ五輪に出場。その後、プロレスラーに転身。橋本真也との抗争が話題となり、「暴走王」の異名をとる。PRIDEなどの総合格闘技のリングでも戦い、04年からは「ハッスル」に登場。ハッスルポーズで人気を集める。07年から「IGF」でプロレスラーとして活躍する傍ら、10年より筑波大学大学院でコーチング学を学ぶ(13年3月修了)。また06年には小川道場を開設し、柔道の指導も行っている。
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 今回、小川直也さんが楽しんだお酒は、本格そば焼酎「雲海」の黒麹仕込み「そば雲海 黒麹」。伝統の黒麹、宮崎最北・五ヶ瀬の豊かな自然が育んだ清冽な水で造り上げています。爽やかさの中に、すっきりと落ち着いた香り、そしてまろやかでコクのある味わいが特徴。ソーダで割ると、華やかでスパイシーな香りと心地よい酸味が広がります。
提供/雲海酒造株式会社

<対談協力>
羅豚 ギンザ・グラッセ
東京都中央区銀座3−2−15 ギンザ・グラッセ10F(地下鉄銀座駅 徒歩1分 JR有楽町駅 徒歩2分)
TEL:050-5789-7507
営業時間:
月〜金
ランチ11:00〜15:00 ディナー17:00〜23:30(L.O.22:30)
土・日・祝
ランチ11:00〜16:00 ディナー16:00〜23:00(L.O.22:00)

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◎クイズ◎
 今回、小川直也さんと楽しんだお酒の名前は?

 お酒は20歳になってから。
 お酒は楽しく適量を。
 飲酒運転は絶対にやめましょう。
 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成:石田洋之)


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