2月2日から、開幕に向けた合同トレーニングがスタートしました。この時期のテーマは体づくりと個々の技術向上。特に新人選手は覚えることが山積みでしょうが、いいところを伸ばしてチームの戦力になってほしいと期待しています。
 現時点でピッチャーでは3名の入団が内定しています。トライアウトを経てドラフト1位で指名した松本直晃(東海大付翔洋高−環太平洋大−医療法人養和会(軟式))は、1年でのNPB行きも狙える有望株です。彼はNPBで活躍している選手に例えるなら、巨人の菅野智之。右のオーソドックススタイルでコントロールがよく、変化球を低めに決められます。

 実は、この松本は環太平洋大時代、元香川の又吉克樹(中日)と同期でした。大学時代は又吉がいたため、ピッチャーからショートに転向したそうです。大学卒業後、再びピッチャーに戻って、軟式野球のチームでプレーしていました。硬式ボールでのピッチングは慣れない中で、ストレートの球速はMAX147キロを記録しました。フォームもきれいでセンスがあります。フィジカルを強くすれば、150キロ超えも可能でしょう。

 又吉に刺激を受けたのか、「NPBに行きたい」との意欲が強く、こちらのアドバイスをすぐ実践し、分からないところはすぐに質問をしてきます。この調子で故障なく伸びてくれれば、チームの柱になるかもしれません。

 ドラフト3位で指名した原田宥希(大体大波商高−滋賀・高島ベースボールクラブ)は、サイドスローの右腕です。こちらは、まさに又吉に似たタイプ。180センチ、70キロと線は細いものの、下半身にバネがあり、肩や背中の筋肉はいいものを持っています。ストレートはMAX145キロ。関西でのトライアウトを受験し、キャッチボールの時から目立っていました。

 ただ、現時点で又吉と比較するのは酷かもしれませんが、まだ体の使い方はギクシャクしており、下半身のバネをうまく使えていません。下半身が一度沈み込み、そこから浮き上がるような投げ方を体得できれば、第2の又吉になることも夢ではありません。オープン戦から彼には登板機会を与えて経験を積ませる考えです。

 また練習生で採用した山田恭大(上宮高−名古屋商科大−エディオン愛工大OB BRITZ)は昨季、在籍していた山田恭平の弟です。コントロールが良く、伸びしろがあると判断しました。ともにトレーニングをする過程で、ウリとなるものを見つけてくれれば、シーズン中の選手登録がみえてきます。

 今季は新しいシーズンの形式になり、前後期の日程が従来より過密になることが予想されます。寺田哲也(東京ヤクルト)、篠原慎平(巨人)がNPBに巣立ち、まずは2人の穴を埋められる存在をつくらなくてはなりません。外国人も先発を務めたルーカス・アーバインが抜け、新しいメンバーを何人か受け入れる方針です。

 新戦力は未知数のため、やはり頑張ってほしいのは既存のピッチャーたちです。中でも軸になってほしいのは3年目の竹田隼人です。入団前に手術したヒジも回復し、故障が再発しないための強化もできました。もともと球の伸びに素晴らしいものがあるだけに、今年はNPBへチャレンジする1年です。昨季は4試合の登板でしたから、まずは1年通じて投げる力をみせることが大切でしょう。

 その上で、カギとなるのは速球とのコンビネーションになるフォークボールです。現状、彼のフォークボールは抜けることが多く、落ちが早くて見極められやすい欠点があります。手首を固定し、バッターの手元でストンと落とすコツをつかめば、もっと空振りが奪えるでしょう。

 又吉、篠原とは同学年で、先を越されたことは大いに刺激となったはずです。実際、今年、最初に会った時から目の色が変わっていました。先発か、はたまた抑えか、いずれにしてもチームの中心として今季は投げてほしいと望んでいます。

 同じく3年目の田村雅樹は2年間、フル回転で120試合に登板し、武器のスピードに加え、投球術を身につけました。しかし、さらに上を狙うにはボールの力プラス制球力が求められます。大事な場面で四隅にきっちりと集められるか。ここがクリアできれば、スカウトの評価も高まるはずです。

 チーム編成上、おそらくピッチャーは7、8人で回すことになるでしょう。先発ピッチャーにはなるべく長いイニングを投げて試合をつくる。リリーフは任された役割をきっちり果たす。これらを念頭に置き、各選手が持ち味をアピールできる場所を考えていきます。

 もちろん今季も個々の選手のドラフト指名、そしてチームとしての優勝が目標です。野手もスイッチヒッターの岡村瑞希(東海大付熊本星翔高−クラーク記念国際高)や、レギュラーキャッチャー候補の久森駿(地球環境高−日本プロスポーツ専門学校)ら、楽しみな新人が入りました。

 西田真二監督の下、育成と勝利を両立できるよう、今年も選手とともにレベルアップしていきたいと思います。引き続き、応援よろしくお願いします。


伊藤秀範(いとう・ひでのり)プロフィール>:香川オリーブガイナーズコーチ
 1982年8月22日、神奈川県出身。駒場学園高、ホンダを経て、05年、初年度のアイランドリーグ・香川に入団。140キロ台のストレートにスライダーなどの多彩な変化球を交えた投球を武器に、同年、12勝をマークして最多勝に輝く。翌年も11勝をあげてリーグを代表する右腕として活躍し、06年の育成ドラフトで東京ヤクルトから指名を受ける。ルーキーイヤーの07年には開幕前に支配下登録されると開幕1軍入りも果たした。08年限りで退団し、翌年はBCリーグの新潟アルビレックスBCで12勝をマーク。10年からは香川に復帰し、11年後期より、現役を引退して投手コーチに就任した。NPBでの通算成績は5試合、0勝1敗、防御率12.86。

(このコーナーでは四国アイランドリーグplus各球団の監督・コーチが順番にチームの現状、期待の選手などを紹介します)


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