またしても掛け声倒れに終わるのか、それとも今度こそ成果をあげることができるのか。「3時間以内(9回)」を目標に掲げるNPBの熊崎勝彦コミッショナーが、キャンプ視察先の宮崎で試合時間短縮の必要性を熱弁した。
「6時に試合が始まり、9時くらいには終わって家に帰れるのが理想。野球は終盤の7、8、9回がおもしろい。それを見ずして(家路につく)ファンは気の毒。9時までに終われば地上波の放送枠にも収まる。(試合時間短縮を)私は本気で取り組む」
 賛成である。しかし、時短を実現するのは容易ではない。NPBは09年の開幕前にも「試合時間3時間以内(9回)」を目標に掲げた。若干の成果は表れたが、長続きしなかった。昨季の公式戦の平均試合時間は3時間17分。東日本大震災で電力不足が懸念された11年、試合時間は3時間6分にまで短縮されたが、翌12年から再び延び始めた。

 ニフティが12年に行った「プロ野球人気低迷の理由」を問うたアンケートによると、「他のスポーツの浸透」に次いで多かったのが「試合時間の長さ」で全体の3割を占めた。「球界目線ではなくファン目線の改革を進めなければならない」との熊崎の指摘に異論はない。問題は球界全体で危機感を共有できるかどうかだ。

 これは以前にも述べたが、「プロ野球史上最高の名勝負」と呼ばれる59年6月25日、後楽園球場で行われた史上初の天覧試合、巨人−阪神戦の試合時間は、わずか2時間10分である。スコアはシーソーゲームの末の5対4。長嶋茂雄が村山実から放ったサヨナラホームランばかりが取り沙汰されるが、ON初のアベックホームランあり、後に島倉千代子と結婚する藤本勝巳の勝ち越し2ランありと、内容はてんこ盛りだった。

 野球は時間制限のないスポーツである。たとえ長くてもファンが堪能できる内容なら、とやかく言うべきではないのだろう。しかし先の調査が示すように、回答者の3割が不満を持っている現状を放置したままでは怠慢のそしりを免れない。

 まして球界には、追加競技として2020年東京五輪での野球復活の期待が高まっている。時短が実現できなければ、仮に決まったとしても「7回制で実施」という声にあらがえなくなる。その意味で今季は正念場のシーズンと言えよう。

<この原稿は15年2月11日付『スポーツニッポン』に掲載されています>
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