二宮: 現役生活お疲れ様でした。少しはお酒が楽しめる時間も増えたのでは?
里崎: そうですね。年末などは呼ばれることも多くて毎日のように飲んでいました。

二宮: どんなお酒が好みでしょう。
里崎: 僕はなんでもいけますよ。おいしい食事とおいしいお酒があるのが一番です。まずはしっかりごはんを食べて、じっくり時間をかけてお酒を味わうのが好きですね。

二宮: 自宅で晩酌をすることは?
里崎: あまり家では飲みませんね。飲む時には食事の後で映画でも観ながら、ゆっくり楽しみます。

二宮: それがリラックスタイムになると?
里崎: 家にいても、どうしても「明日はどうリードしようか」とか野球のことばかり考え始める。調子のいい時はまだしも、良くない時は余計に考えるので疲れてしまう。それで悪循環に陥るんです。だから、そういう時間を設けることで何もかも忘れられる。

二宮: でも悔しい負け方をすると、なかなか切り替えられない時もあるでしょう。
里崎: それはなかったですね。これはボビー・バレンタイン(元監督)のいい影響を受けていると思います。僕もチームも「明日、明日!」という雰囲気でしたから。

二宮: 今日はそんな里崎さんに、そば焼酎「雲海」を用意しました。ソーダ割りのSoba&Sodaで乾杯しましょう。
里崎: そば焼酎は初めてですね。あっ、これは飲みやすい。スッキリしていて、とてもおいしいです。

 日本ハムの札幌ドーム仕様ブルペン

二宮: 今季から解説者としての生活が始まります。2月のキャンプでは各球団を巡って何か発見はありましたか。
里崎: ロッテ以外のチームがどんな練習をしているのか、とても楽しみにしていました。ただ、実際に行ってみると、メニュー自体はどこも大差ない。アップして、キャッチボール、投内連係、ノック、バッティング、そして個別練習……。どのチームも同じことをやっているということは、結局は戦力の充実したところが勝つ。弱いところは同じことをやっていてはダメなんじゃないかなとも感じました。

二宮: 強いて、その中で目に留まったのは?
里崎: 日本ハムのブルペンはおもしろかったですね。明らかに色が違うブルペンがあるので聞いたら、札幌ドーム仕様と、他の地方球場用のものをつくっている。確かに日本ハムは札幌ドームだけでなく、函館とか帯広とか道内でホームゲームをすることもありますから、マウンドの固さや、土質、傾斜などにキャンプの頃から慣れておくのは理に適っていますね。

二宮: ビジターの球場に合わせたものは?
里崎: それはさすがになかったですね。たとえば福岡ヤフオクドームとか、成績が悪いスタジアムのマウンドに似せたものをつくるのは、ひとつの方法だなと感じました。リサーチしなくてはいけないので、実際につくるのは大変かもしれませんが。

二宮: 日本ハム以外もホーム球場に合わせたブルペンをつくっているのでしょうか。
里崎: それはひとつ疑問に思いましたね。果たしてロッテでいえば、QVCマリン仕様のブルペンになっているのか。もし、そうなっていなければホーム球場に合わせた方が同じピッチング練習でも質は格段に上がるでしょう。

二宮: 本職のキャッチャーの練習を見ていて感じた点はありますか。
里崎: 巨人は小林誠司、西武は森友哉と正捕手候補がいますから、彼らを育てなくてはいけないという空気を感じました。あと中日は谷繁元信さんが選手兼任監督で、若いキャッチャーに要求しているレベルが高い。

二宮: 具体的には?
里崎: キャッチャーは捕球する際にタイミングをとるため、一旦構えたミットを下げることが多いんです。でも、谷繁さんは「構えたらミットを落とさずに捕れ」と。確かにこうするとピッチャーには的がずれないので投げやすい。ただ、これは僕もできない高度な技術です。ミットを動かさずにどうやってタイミングをとるのか。静の状態から予備動作もなしに捕るのは難しい。谷繁さんにとっては高校時代からやっていることなので当たり前なのでしょうが、若いキャッチャーは大変だろうなと感じます。

二宮: それがキャッチャーの基準となると、なかなか監督を超える選手は出てこないでしょうね。
里崎: ピッチャーにしても谷繁さんの捕球に慣れていると、他のキャッチャーだと投げにくいという違和感を抱く可能性がある。まだ結果が出ていれば、その選手のやり方も認められるでしょうが、現状では監督の要求するレベルに少しでも近づくしかない。

 正捕手獲りに必要なのは「打力」

二宮: 古巣のロッテはいかがですか。ポスト里崎が、今季の大きなテーマになります。
里崎: うーん……。厳しい言い方をすれば、どの選手も、いい意味でのガツガツ感が足りない。チーム内の競争を勝ち抜かなければ相手は倒せません。今は一世一代の大チャンスのはず。キャッチャーはポジションを奪ってしまえば、ケガをしない限り、10年は安泰です。いがみ合ってやる必要はなくても、仲良しこよしではいけないと思います。

二宮: 正捕手争いの決め手になるものは何でしょう。
里崎: 最終的には打てるかどうか。キャッチャーとして最低限のキャッチング、スローイングができて、6番、7番に座れる打力があれば、終盤の競った展開になっても代打を出されない。いくらキャッチャーとしての能力があっても、打てなければ負けていると代打を出されます。それでは1試合を全うする責任感が生まれない。負けた尻拭いをしなくて済むのはキャッチャーとしては非常にラクです。負けていても最後まで試合に出て逆転につなげる、もしくは次の試合へのエサをまいたり、探りを入れるといった駆け引きができません。

二宮: そのためにも打力が求められると?
里崎: 1試合出るかわからない、明日マスクをかぶるかわからないキャッチャーでは、目の前のことしか考えられなくなります。3連戦とか、シーズンを踏まえた蓄積ができない。それではレギュラーにはなれないんです。

二宮: 里崎さんには橋本将さんというライバルがいました。彼も打力のあるキャッチャーでしたから、他の部分でも上回る必要がある。競争をする上で意識していたことは?
里崎: 彼を反面教師にすることですね。ライバルといっても全否定したり、嫌ってはいけないんです。いいところはリスペクトし、自分のものにする。その上で悪いところはマネをしない。そうすれば、自分の方がプラスアルファのものを出せる。そう考えていました。

二宮: ライバル同士、同じチームであっても「失敗しろ」と心の中では思っていたという話もよく聞きます。そういう思いは実際にありませんでしたか。
里崎: それはないですね。「失敗しろ」と思っている時点で、相手に対して負けを認めていることになると思うんです。自分が劣っていると感じるからこそ「成功してほしくない」と願う。でも、僕には自分の方が勝っているという自信がありました。むしろ、どんどん頑張ってチームを盛り上げてくれと感じていましたね。その代わり、彼が2本ヒットを打てば、僕は3本打つ。3本打てば、4本打ってやる。その気持ちは強く持っていました。

 まず12球団120選手の情報を記憶せよ

二宮: 12球団の若手キャッチャーで今後が楽しみだと感じている選手は?
里崎: 広島の會澤翼ですね。現時点での実力でいえば、期待値は一番です。肩がいい、スローイングも正確。しかも打力があります。

二宮: 西武の森もバッティングが良く将来性を期待されていますが、肝心の打撃が不調で2軍に降格してしまいました。
里崎: 彼の伸びしろは無限大ですが、まだ、どうなるかわからない部分がある。そう考えると今年ブレイクしそうなのは會澤でしょう。広島のピッチャー陣はいいですから、勝っていけば「リードもいい」と評価されるはず。リードの良し悪しは最終的には結果論ですから。

二宮: 確かに、勝ってリードを批判されるキャッチャーはそうそういませんからね。
里崎: 嶋基宏(東北楽天)がいい例でしょう。一昨年、日本一になった時には「嶋のリードは成長した」とよく言われました。ところが、昨季、最下位になったら、そんな声は全く聞こえなくなりました。「嶋のリードについてこられないピッチャー陣が問題」と擁護する指摘も僕が知る限りなく、スタメン落ちすることも多かったですよね。これはまさしくリードのものさしを、チームの勝ち負けで測っている証拠と言えるでしょう。嶋というキャッチャーの本質よりも、勝ったからいい、負けたからダメと結果で批評しているだけなんです。

二宮: 若いバッテリーにはベンチが不安になって指示を1球1球出すこともあります。
里崎: その時はいいかもしれませんが、長い目でみれば逆効果でしょう。何の責任も持たないし、考えることをしなくなる。「ベンチをチラチラ見るキャッチャーは大成しない」というのが僕の考えです。僕なんかベンチから指示が出ても、わざと聞こえないフリをしていましたからね。「いやぁ、歓声が大きくて聞こえませんでした」って(笑)。

二宮: とはいえ、若いキャッチャーから「リードを教えてください」「どうやって勉強するんですか」と聞かれることもあるでしょう?
里崎: それはよく聞かれる質問ですね。僕はまず、こう答えます。「じゃあ、パ・リーグの対戦相手のレギュラーと控えメンバーを合わせて各チーム最低15人、5チームで75人の特徴や傾向をいつ何時でも言えるか?」と。朝起きたばかりの寝ぼけている時でも、お酒を飲んで酔っ払っている時でも、「内川」「銀次」と聞かれて、パッと答えられないといけない。ましてや今は交流戦がありますから、セ・リーグも各球団の主力バッター5、6人は覚えておいてほしい。つまりトータルで120人〜130くらいのバッターについて「こういう傾向で、チャンスになるとこうなる」「打球方向はこっちが多い」といった情報を常に頭の中に入れておく。100%記憶するのは無理でも、8割方は言えるようになって始めてリードの話ができるんです。

二宮: まずは基本情報が共有できていないと会話が成立しないというわけですね。
里崎: その通りです。空想のバッターについて漠然と話をしたところで何の意味もありません。ピッチャーが右なのか左なのか、もっと言えばロッテであれば同じ右でも唐川侑己が先発の時と、石川歩が投げる時とではリードは変わってくる。それらを全部踏まえないと、じゃあ、具体的に内川をこう攻めよう、というやりとりができませんから。若いキャッチャーに質問されても、この部分の勉強ができていないことが多い。これはリード以前の問題です。「それだったら、僕は話することないよ」となっちゃいますよね……。

二宮: 話しこんでいるうちにグラスが空きました。そば焼酎「雲海」のSoba&Soda、もう1杯いかがですか。
里崎: じゃあ、いただきます。焼酎はソーダ割りで飲むことも多いですが、これは一番飲みやすいかもしれません。

(後編につづく)

里崎智也(さとざき・ともや)
1976年5月20日、徳島県出身。鳴門工業高を卒業後、帝京大学に進学。98年のドラフト2位で千葉ロッテに入団。故障もあり、プロ入り当初は目立った働きができなかったが、03年に規定打席未満ながら打率.319の成績を残し、1軍に定着。05年にはプレーオフ最終戦で逆転タイムリーを放つなど日本一に貢献。06年のWBC第1回大会では正捕手として活躍し、日本代表は世界一に輝いた。10年には、レギュラーシーズン3位ながら、「下剋上」を宣言。チームはクライマックスシリーズ、日本シリーズを制した。14年限りで現役を引退。現役生活16年間の通算成績は1089試合、108本塁打、458打点、打率.256。ベストナイン、ゴールデングラブ賞をともに2度受賞。この3月に自身初の著書『非常識のすすめ』(角川出版)を刊行。


 今回、里崎さんと楽しんだお酒は本格そば焼酎「雲海」。厳選されたそばと、宮崎最北・五ヶ瀬の豊かな自然が育んだ清冽な水で丁寧に造りあげた深い味わい、すっきりとした甘さと爽やかな香りが特徴の本格そば焼酎です。ソーダで割ることで華やかな甘い香りが際立ちます。
提供/雲海酒造株式会社

<対談協力>
折おり
東京都港区赤坂2−14−5 Daiwa赤坂ビル1F(地下鉄赤坂駅徒歩1分、地下鉄溜池山王駅徒歩5分)
TEL:03-6459-1888
営業時間:16:30〜翌5:00
日・祝日定休

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 里崎智也さんの直筆サインボールを本格そば焼酎「雲海」(900ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はより、本文の最初に「里崎智也さんのサイン希望」と明記の上、下記クイズの答え、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストなどがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選発表は発送をもってかえさせていただきます。締切は4月9日(木)までです。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。
◎クイズ◎
 今回、里崎智也さんと楽しんだお酒の名前は?

 お酒は20歳になってから。
 お酒は楽しく適量を。
 飲酒運転は絶対にやめましょう。
 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成・写真:石田洋之)


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