二宮: 里崎さんは日本一やWBC優勝で何度もビールかけやシャンパンファイトを経験しています。やはり、勝利の美酒は格別ですか。
里崎: 日本一や世界一になって、お酒を浴びるのが、こんなにうれしいものかと感じました。これを経験できずに引退するプロ野球選手は本当に寂しいでしょうね。

二宮: 特にロッテは優勝できない時代が長く続きましたから、そういう先輩がいっぱいいたでしょうね。
里崎: あの素晴らしさは経験したものしかわからないんです。全身でお酒を浴びて、飲んでいないのにほろ酔い気分になる。これが気持ちいい。

二宮: 日本のビールかけはホテルの敷地を貸し切って行うケースがほとんどですが、メジャーリーグは球場のロッカーでシャンパンをかけ合います。WBCの時はそうでしたよね。
里崎: はい。一瞬でシャンパンがなくなりました。あの時もすごかったですね。

 負けて学ぶことはひとつだけ

二宮: 大舞台を勝ち抜くと、一回り成長するとよく言われます。それは里崎さんも実感しますか?
里崎: 勝ったことがない人は勝ち方を知らないわけだから、何を言っても説得力に欠けてしまう。切羽詰まった瀬戸際で何が大事か。これはそういった場面をくぐり抜けて、成功を収めた人間にしか理解できない。よく「敗戦から、いろいろ学ぶこともある」と言う人がいますが、僕は「負けて学ぶことはひとつしかない」と考えています。

二宮: そのひとつとは?
里崎: 「そのやり方では勝てない」ということです。その方法がダメだとわかっただけで、次に勝つための答えが見つかるわけではない。むしろ、いろいろ学べるのは勝った人間ですよ。成功体験をすると、そこまでのプロセスやメンタルなど勝つための方法をつかめるわけですから。

二宮: 確かに勝った人間にしかわからないものがある。コーチとしての指導や、ネット裏の解説にも重みが出ます。落合博満監督時代の中日が、元西武の森繁和さんや辻発彦さんなど優勝経験のある人材をコーチとして呼んだのは、その典型でしょうね。
里崎: 正直言って、僕なんて個人成績だけ見たら、たいしたことない選手です。出場試合は1089試合、ヒット数も1000本に達していません。でも、ありがたいことに日本一2回と世界一1回と、デカイ花火を何度か打ち上げている。北京五輪にも出させていただきました。ひょうたん型の野球人生なんです(笑)。そのおかげで、引退後も仕事をいただけているんだと思っています。

二宮: 今季、勝ち方を知っている里崎さんの解説がテレビ、ラジオで聞けるのは楽しみです。マイクの前で、どんな解説を心がけたいと?
里崎: できるだけ結果論にならないようにしたいですね。結果だけで「今のリードはどうのこうの」という話はしたくない。見ているファン、聴いているファンに考えてもらえる解説ができればと思っています。たとえば、前のボールでバッターがファウルをしたとします。「このファウルの感じだと、次はインコースの真っすぐで勝負するか、アウトコースに落とすか。二者拓一になるでしょう」と。その上で「僕だったらインコースの真っすぐで行きますけど、このバッテリーはどう考えているでしょうか」と話す。こうすればファンに「オレは里崎と一緒だな」「いや、僕は違う」と選択肢が与えられる。

二宮: ファンもゲームに参加している気分になれますよね。
里崎: 「キャッチャーはこんなことを考えて、日々リードしているのか」と伝われば、僕が解説している意義が出てくる。もちろん、結果の分析も必要なので、そこは結果論になってしまうでしょうが、なるべく、いろんな見方を提供できればと思っています。

二宮: 今回はそば焼酎「雲海」のソーダ割り、Soba&Sodaを召し上がっていただいています。飲みやすいから野球観戦のおともにもいいでしょうね。
里崎: 夏場の暑い時期になると、スッキリしたいので僕も家に帰ってビールを1杯飲んだりしていました。気温が上がってくると、爽快感のあるものが飲みたくなる。これからの季節にはいいでしょうね。

 ロッテ、ゴールデンイヤーの条件

二宮: 開幕も近づいてきました。順位予想を。
里崎: パ・リーグは1位から福岡ソフトバンク、オリックス、千葉ロッテ、埼玉西武、北海道日本ハム、東北楽天の順です。

二宮: ソフトバンク連覇というわけですね。
里崎: このチームは勝ち方も知っていて、何より層が厚い。オリックスも大補強をしていて、昨年同様、この2チームの優勝争いになるとみています。ただ、オリックスの場合、新しく加わった選手たちがうまく機能するかは未知数です。得てして個人をアピールしようとし過ぎて、チームのまとまりを欠く結果にもなりやすい。

二宮: 今季はヤフオクドームの外野フェンスが前にせり出して、ホームラン数の増加が見込まれます。これはソフトバンクにとって有利に働くでしょうか。
里崎: 大きいと思います。ソフトバンクのバッターは中距離砲が多い。李大浩と柳田悠岐を除けば、内川聖一、松田宣浩、長谷川勇也、中村晃……。彼らの打球で、それまでフェンス直撃だったのがホームランになり、フェンス手前でアウトだったのが二塁打、三塁打になれば、打率もホームランもアップするはずです。細川亨や今宮健太あたりもホームランが増えるでしょう。そう考えると得点力はかなり上がるとみていい。

二宮: 古巣のロッテは3位に食い込むと?
里崎: 何と言っても今年は5年に1度のゴールデンイヤーですからね(笑)。とにかく3位に滑りこんで、ポストシーズンで一波乱起こしてほしい。カギを握るのは涌井秀章、石川歩、唐川侑己の先発3人衆。昨季は石川がギリギリ10勝した以外は涌井が8勝(12敗)、唐川が4勝(9敗)でした。3人が最低でも2ケタ勝利をあげることがAクラス入りの条件です。昨季新人王の石川にしても、今季は先発の柱として3連戦の頭に投げるようですから、その分、相手ピッチャーも良くなる。そこでいかに勝ち星を伸ばすか、真価が問われるでしょう。

二宮: 唐川投手はここ数年、伸び悩んでいるように映ります。
里崎: その通りで、成長の足跡がなかなか見えませんね。良くなっているという目に見えるポイントがほしい。「唐川といえばこれっ」という武器がほしいですね。体にしても、もうひとまわり大きくなってもいいと思う。太る必要はないですが、西岡剛(阪神)や岡田幸文(千葉ロッテ)みたいにパーツごとにでかくなってもらいたい。

二宮: 確かに里崎さんも、プロ入り当時は細かったですよね。
里崎: 僕の場合はパーツではなく、全体的に太りましたけどね(笑)。

 巨人、4連覇のカギ握る捕手

二宮: セ・リーグはどうでしょう?
里崎: 最初は広島1位と予想していましたが、ブラッド・エルドレッドの故障や、ライネル・ロサリオの出遅れが心配ですね。彼らが早期に戻ってきて活躍すれば、優勝の1番手でしょう。

二宮: 2位以下は?
里崎: 阪神、巨人、東京ヤクルト、中日、横浜DeNAの順です。これは去年からの上積みをみて並べました。巨人はキャッチャー次第で4連覇の可能性もある。

二宮: 現時点では若手の小林誠司選手とベテランの相川亮二選手の併用になりそうですね。
里崎: 将来を考えれば小林がレギュラーになったほうがいいのでしょうが、打力が弱いままだと苦しくなる。8番キャッチャー、9番ピッチャーの打順でほとんどアウトになりますからね。ましてや阿部慎之助がファーストに回って、ホセ・ロペス(DeNA)がいなくなり、亀井善行ら打てる選手を使うこともできない。キャッチャーが打てないと必然的に攻撃力はダウンするんです。

二宮: 背に腹は替えられなくなって、シーズン中、阿部選手をキャッチャーに戻すこともあるのでは?
里崎: 可能性はゼロではないでしょうね。万が一、相川にアクシデントが起こった場合、小林、実松一成、加藤健といったメンバーでは心もとない。緊急事態でキャッチャーに復帰することもあるかもしれません。

二宮: 阪神は大きな補強はありませんが、投打にバランスがとれています。
里崎: 何よりオフに抜けるとみられていた鳥谷敬の残留が大きいですね。彼がいなければBクラス転落もあった。そのくらい攻守に欠かせない選手です。

二宮: 中日は、どの評論家に聞いても下馬評が低い……。
里崎: やはり若手が出てこないですね。エースの吉見一起もキャンプではいいボールを放っていましたが、ケガ明けで1年間、投げ切ることができるのか。ブルペンも抑えの岩瀬仁紀さんが離脱し、又吉克樹、福谷浩司、祖父江大輔ら去年活躍しただけの選手に任さざるを得ません。きちんと勝ちパターンができあがるのかが未知数です。そう考えると、去年より戦力がマイナスになる状況も考えられます。

二宮: 谷繁元信兼任監督や、和田一浩選手、荒木雅博選手といったベテランの主力も、さすがにフルでは活躍できなくなる年齢ですからね。
里崎: ヘタすると、谷繁さんの出場試合記録や、和田さんの2000本安打、山本昌さんの50歳最年長勝利といった個人記録だけに注目が集まるシーズンになりかねない。それだとチーム成績は上がっていかないと思います。

二宮: 2年連続最下位のヤクルトは成瀬善久投手、大引啓次選手を補強して戦力はアップしています。
里崎: 昨季はケガで離脱した小川泰弘が1年投げれば、10勝以上は勝てますから、その分の上積みもあります。成瀬にしても、ヤクルトにいる他のピッチャーに比べればレベルが高い。新外国人のローガン・オンドルセクがどこまで通用するかで、終盤の安定感が変わってきます。

二宮: ロッテ時代の後輩、成瀬投手は新天地で復活するでしょうか。
里崎: う〜ん。今のままでは賞味期限切れになってしまう恐れがあります。ここ数年の彼を見ていると、明らかに下降線です。これをせめて元のラインに戻すには、違うアプローチが必要になるでしょう。将棋の羽生善治さんが本の中でこんなことを書いていました。「スランプは2年続いたらスランプではない。それが今の実力だ」と。今の成瀬に、この言葉がピッタリ当てはまります。2年間1ケタ止まりだったのを単なる不調ととらえるか、真摯に「力が落ちた」と受け止めて取り組めるか。それが今後の野球人生を左右すると思います。

二宮: 以前、里崎さんに話を伺った時には、ホームランの出やすい神宮をホーム球場にすることも不安材料にあげていましたよね。
里崎: しかもセ・リーグはパ・リーグと違って、ビハインドの展開になれば早めに代打を出される。必然的に勝ち星は伸びなくなります。しかもヤクルトはブルペンに不安がある。成瀬も3連戦の頭に投げるローテーションのようですから、相手もいいピッチャーが投げてくる。仮に10勝できても10敗する成績になってしまうのではないでしょうか。

二宮: 果たして予想は、どの程度当たるか。またオフにはそば焼酎「雲海」のSoba&Sodaを飲みながら、シーズンを振り返りましょうか。
里崎: わかりました。そば焼酎は初めてでしたが、本当に飲みやすかったですね。スッキリとしていて、香りも爽やかなタイプは好みです。何杯もいただいてしまいました(笑)。

(おわり)

里崎智也(さとざき・ともや)
1976年5月20日、徳島県出身。鳴門工業高を卒業後、帝京大学に進学。98年のドラフト2位で千葉ロッテに入団。故障もあり、プロ入り当初は目立った働きができなかったが、03年に規定打席未満ながら打率.319の成績を残し、1軍に定着。05年にはプレーオフ最終戦で逆転タイムリーを放つなど日本一に貢献。06年のWBC第1回大会では正捕手として活躍し、日本代表は世界一に輝いた。10年には、レギュラーシーズン3位ながら、「下剋上」を宣言。チームはクライマックスシリーズ、日本シリーズを制した。14年限りで現役を引退。現役生活16年間の通算成績は1089試合、108本塁打、458打点、打率.256。ベストナイン、ゴールデングラブ賞をともに2度受賞。この3月に自身初の著書『非常識のすすめ』(角川出版)を刊行。


 今回、里崎さんと楽しんだお酒は本格そば焼酎「雲海」。厳選されたそばと、宮崎最北・五ヶ瀬の豊かな自然が育んだ清冽な水で丁寧に造りあげた深い味わい、すっきりとした甘さと爽やかな香りが特徴の本格そば焼酎です。ソーダで割ることで華やかな甘い香りが際立ちます。
提供/雲海酒造株式会社

<対談協力>
折おり
東京都港区赤坂2−14−5 Daiwa赤坂ビル1F(地下鉄赤坂駅徒歩1分、地下鉄溜池山王駅徒歩5分)
TEL:03-6459-1888
営業時間:16:30〜翌5:00
日・祝日定休

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 里崎智也さんの直筆サインボールを本格そば焼酎「雲海」(900ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はより、本文の最初に「里崎智也さんのサイン希望」と明記の上、下記クイズの答え、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストなどがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選発表は発送をもってかえさせていただきます。締切は4月9日(木)までです。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。
◎クイズ◎
 今回、里崎智也さんと楽しんだお酒の名前は?

 お酒は20歳になってから。
 お酒は楽しく適量を。
 飲酒運転は絶対にやめましょう。
 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成・写真:石田洋之)


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