二宮: 大野さんはラグビー日本代表の最年長ですが、チーム一の酒豪と聞いていますよ(笑)。お酒は毎晩?
大野: そうですね。さすがに試合前日は飲みませんが(笑)。飲めと言われれば、何でもいけます。この3月はオフで、毎晩のように飲み会の誘いがありました。

二宮: ラガーマンはお酒に強いイメージがあります。東芝の先輩もよく飲んだでしょう?
大野: 大好きでしたね。先輩に連れて行ってもらって飲んでいるうちに僕もお酒が好きになっていきました。同じロックの釜澤晋さんもお酒は強いので、お世話になりましたね。釜澤さんたち先輩がすごかったのは、お酒は飲んでも次の日は練習をしっかりする。昔は練習後に泥のついたジャージのまま、朝まで飲んだこともあったとか。そういう豪快さはラグビーのプレーにも出てくると思うんですよね。

二宮: 監督だった薫田真広さんも、かなりの酒豪ですよね。
大野: はい。よく連れて行っていただいて、お酒の飲み方から教えていただきました。今でも宴席で目が合うと、グラスを空けて薫田さんにお酒をついでもらう。それくらい頭が上がらないですね(笑)。

二宮: ハハハハ。お酒のみならず、ラグビーで教わったことも大きかったそうですね。
大野: 僕は大学からラグビーも始めて、それも1チーム20人に満たないところでやっていましたから、薫田さんの下でトップクラスの指導を受けたことはありがたかったですね。「ラグビーはフォワード勝負」「どんなにいいバックスを揃えていてフォワードが体を張れずにボールを争奪戦で負けたらチームは機能しない」。その考えは僕がプレーする上でのベースになっています。

 「右手でお酒を飲むな」

二宮: 今回はそば焼酎「雲海」のソーダ割り、Soba&Sodaを用意しました。たくさん召し上がってください。
大野: 焼酎は水割り、お湯割りが好みですが、ソーダ割りも最近は流行っていますね。後味がスッキリして飲みやすくておいしいです。

二宮: 焼酎はどんなものが好みですか。
大野: どちらかというと、クセがあるものが好きですね。水割りやお湯割りにして、香りが漂ってくるくらいがいい。そば焼酎も独特の香りがあって好きですよ。

二宮: どの競技の選手も「勝利の美酒は最高だ」と聞きます。大野さんにとって、一番おいしかったお酒は?
大野: 2011年のパシフィックネーションズカップで初優勝した時はうれしかったですね。しかも、優勝を決めた試合は僕にとって日本代表50キャップ目。当時の監督だったJK(ジョン・カーワン)から「大野、来い」と言われて、優勝トロフィーにシャンパンをまるまる1本注いで飲みました。

二宮: パシフィックネーションズカップはサモア、フィジー、トンガなど環太平洋の強豪国による対抗戦です。日本にとっては屈強な相手を倒したことで進化を示した大会になりました。
大野: 06年に大会が始まった時にはトンガ、フィジー、サモアに惨敗で最下位でした。その時は優勝なんて夢のまた夢でしたね。まさか優勝カップでお酒が飲める日が来るなんて信じられない気持ちでした。

二宮: 野球のようにシャンパンファイトやビールかけはしないのでしょうか。
大野: やっているところもあるようですが、東芝ではしないですね。お酒はかけるよりも飲むのが一番です(笑)。ニュージーランドの選手は優勝したら、お酒ではなく葉巻をみんなで吸いますね。

二宮: 葉巻!?
大野: 特別な葉巻があって、それに火をつけてロッカールームで順番に吸う。以前、東芝にいたオールブラックス(ニュージーランド代表)の選手が日本選手権で優勝した時に持ってきて皆で吸いました。ただ、皆が吸うから、吹い口がべちょべちょになる……(苦笑)。

二宮: 勝利を祝う儀式も国や地域によって、いろいろ違うんですね。
大野: お酒にまつわるマナーといえば、ニュージーランドやオーストラリアの選手は「右手でお酒を飲むな」と言うんです。ラグビーでは試合後にアフターマッチファンクションといって、両チームの選手がちょっとした食事や飲み物を囲みながら親睦を深める場が設けられます。そこで選手同士で握手をして会話する際、向こうの人たちは左手は“不浄”という考え方が強いので、必ず右手で握手するんです。

二宮: つまり右手でグラスを持っていると、左手を差し出すことになってしまうと?
大野: それもありますし、グラスを置いて右手を出しても冷えたお酒を注がれていると手が冷たくなってしまう。それで握手するのは相手に失礼だというわけです。彼らの表現では、“バッファローのひづめ”みたいだと。もし右手でグラスを持っているのが見つかったら、一度、お酒を飲み干して、左手に持ち替えないといけないんです。だから、ラグビー部の飲み会に行くと、皆、自然と左でグラスを持つようになっていますね(笑)。

 星だらけの代表キャップ

二宮: へぇー。それはおもしろい。大野さんは大学からラグビーに取り組んで、東芝ではトップリーグや日本選手権優勝を経験し、今や日本代表キャップは歴代最多の87。こんなにラグビー人生を送れると想像していましたか。
大野: まったく思ってもみないことですね。代表にすら入れると考えていませんでしたから。今のところ、僕がキャップ数1位ですが、代表の中には畠山健介が既に29歳で60キャップに達しています。21歳の藤田慶和も18キャップです。今後、日本代表が強くなればテストマッチも増えてくる。僕を超える選手はどんどん現れてくると思いますよ。

二宮: 代表の出場試合数をキャップと呼ぶようになったのは、その昔、イングランドで同じチームの選手が同じ帽子を被って戦っていたことが由来だそうです。後に出場の名誉として帽子が与えられる慣習が生まれましたが、今も何か記念品があるのでしょうか。
大野: 今でも初キャップを獲得すると帽子をもらえます。日本選手権の決勝前に授与式があるんです。

二宮: どんな帽子をもらえるんでしょう?
大野: デザインは世界共通で、色だけ国や地域によって違います。オールブラックスなら黒、スコットランドなら藍色と白。日本は日の丸から赤と白の配色なので、見た目は運動会の体操帽みたいですね。

二宮: 帽子はキャップを得るたびにもらえるのでしょうか。
大野: いや、帽子は1個だけです。その後はキャップごとに星型のワッペンが送られてくる。それを帽子につけていくんです。5キャップごとに、その星は大きくなります。

二宮: じゃあ、大野さんのキャップは星だらけというわけですね。
大野: そうなりますね(笑)。記念になるので、これからも大事にとっておきたいと思っています。

二宮: W杯に向けて4月からは代表合宿がスタートしています。合宿地は今回、飲んでいるそば焼酎「雲海」がつくられている宮崎です。
大野: W杯まで試合がいくつか組まれていますが、基本的には宮崎が練習拠点になります。また現地で焼酎を飲めるのは楽しみですね。

二宮: ロックのポジションには、元オーストラリア代表のダニエル・ヒーナンが代表入りの資格を得て入ってくる予定です。本番前に強力なライバルが現れましたね。
大野: ヒーナンは素晴らしい選手なので、一緒にプレーできるのは楽しみです。いい選手が来て、代表がレベルアップするのであれば歓迎です。

 世界との差は技術と視野の広さ

二宮: ヘッドコーチのエディー・ジョーンズさんから与えられている課題は?
大野: 体重を増やすことですね。もちろん、単に太るだけでなく筋肉量を増やす。エディーさんがヘッドコーチになって、代表のトレーニングも合宿中の栄養管理も、かなり力を入れて大きく変わりました。年齢とともに食事量は減ってきているので、意識して食べないといけないと思っています。

二宮: 大野さんも日本人では192センチ、105キロと立派な体格ですが、世界と戦うには、もっとサイズを大きくしないと当たり負けしてしまうと?
大野: 正直、フィジカルの強さ自体は日本人も引けはとらない段階まできています。世界との差はコンタクトしながら、正確にパスを出したり、受けたりする技術力。オールブラックスとやった時もタックルは決まるのにボールをつなげられる。パナソニックにいたソニー・ビル・ウィリアムズなんか、タックルを受けても片手でどんどんパスを出すんです。どれだけ手が大きいんだろうと思って、イベントで一緒になった時に比べてみたら、僕とほとんど変わらない。要するにサイズではなく、テクニックや視野の広さがレベルの違いにつながっているんだと痛感しました。

二宮: それだけ小さい頃から培われたラグビー観が優れているということでしょうか。
大野: オールブラックスの選手を見ていると、ボールの扱いがものすごくうまい。しかも倒されながらでも、しっかり周囲を見ている。これは同僚のリーチマイケルから聞いた話ですけど、ニュージーランドではラグビーがうまい選手ほど、お酒が強いそうです。確かに東芝にいるリチャード・カフイもお酒は大好き。おそらく、それだけ内臓が強く、体もタフということなんでしょう。アスリートは食べることも仕事のうちですから、消化吸収が早い方が力がつくのかもしれません。

二宮: なるほど。言われてみれば、どの競技でも一流選手は、よく食べますね。お酒好きも多い。宮崎合宿のスケジュールを見ると、朝6時からウエイトトレーニングが始まります。長い日には、夕方6時まで練習がある。かなりハードですね。
大野: アハハハ。でも、エディーさんが代表に来てからは、これが当たり前です。1日のスケジュールは徹底的に管理されています。5時頃に起きて6時からウエイト。その後、朝食を摂って、一寝入りする。また9時30分くらいに起きて準備をして10時30分から午前の練習がスタートします。昼食を食べた後は昼寝をして午後の練習です。1日に何回も寝起きするので、時間の感覚が分からなくなる時があります(苦笑)。

二宮: 疲労を回復させ、体をつくるために睡眠時間もしっかり確保していると?
大野: はい。ただ、今回の合宿は6時スタートなので、比較的ゆっくりですね。4時30分起きで5時から練習開始の時もありましたから。

二宮: 若手と同じメニューをこなし、長く第一線でプレーする上で大切なことは?
大野: 飲みたいものを飲み、食べたいものを食べる。ストレスなくラグビーに集中するのが一番いいと思っているんです。おいしいお酒は明日への活力になる。1日を終えて、お酒を楽しむためにも、ラグビーで100%を出し切ることが大事だと考えています。

(後編につづく)

大野均(おおの・ひとし)
1978年5月6日、福島県生まれ。東芝ブレイブルーパス所属。清陵情報高までは野球部。日大工学部に入ってラグビーを始め、01年、東芝に入社。体格を生かしたフィジカルの強さとスピードを武器にロックのポジションで活躍し、トップリーグでは9度のベスト15に輝く。日本代表では04年5月にデビュー。07年、11年と2度のW杯に出場。その後もコンスタントにテストマッチ出場を続け、14年5月に日本代表の歴代最多キャップ数を更新。現在は87キャップ。36歳と代表最年長ながら体を張ったプレーぶりでチームを牽引している。著書に『ラグビーに生きる』。 


 今回、大野選手と楽しんだお酒は本格そば焼酎「雲海」。厳選されたそばと、宮崎最北・五ヶ瀬の豊かな自然が育んだ清冽な水で丁寧に造りあげた深い味わい、すっきりとした甘さと爽やかな香りが特徴の本格そば焼酎です。ソーダで割ることで華やかな甘い香りが際立ちます。
提供/雲海酒造株式会社

☆プレゼント☆
 大野均選手の直筆サイン色紙を本格そば焼酎「雲海」(900ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はより、本文の最初に「大野均選手のサイン希望」と明記の上、下記クイズの答え、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストなどがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選発表は発送をもってかえさせていただきます。締切は5月14日(木)までです。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。
◎クイズ◎
 今回、大野均選手と楽しんだお酒の名前は?

 お酒は20歳になってから。
 お酒は楽しく適量を。
 飲酒運転は絶対にやめましょう。
 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成・写真:石田洋之)


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