二宮: 代表メンバーでの飲み会はあるのでしょうか。
大野: あることはありますが、タイミングがきちんとコントロールされています。選手で勝手に飲みに出歩くのはNG。ヘッドコーチのエディー(・ジョーンズ)さんからも「それをやるとチームの質が下がるから、しっかりしてくれ」と言われています。

二宮: いわゆる飲みニケーションは否定しないと?
大野: はい。ただ、代表の練習は厳しいし、ほとんどオフがないので、自然とセーブするようになりますね。昨年11月にグルジアに遠征した際、久しぶりに丸1日オフのスケジュールがあったんです。エディーさんが前日の夜に「今日は飲んでこい」とバーを予約してくれた。その時の飲み会は若い選手も皆、はじけてましたよ(笑)。「あれ、オマエ、いつもは飲まないじゃん」と言ったら、「明日オフならいきますよ」って。

二宮: エディーさん自身もお酒好きですよね。
大野: 病気を患ってからは控えていますが、大好きです。1度、トークイベントで一緒になった後で飲みに連れて行ってもらったら、最初は僕の方がよく飲んでいたのに、だんだんエディーさんのペースが上がってくる。エディーさんのグラスがどんどん空くんでビックリしました(笑)。

 年齢差もお酒で越える

二宮: 大野さんも、ちょうどグラスが空きました。今回はそば焼酎「雲海」のソーダ割り、Soba&Sodaを楽しんでもらっていますが、次の一杯は?
大野: では、水割りで。そば焼酎は水割りにしても、さっぱりしていて飲みやすい。おいしいですね。

二宮: やはり、団体競技だけにお酒の席でチームメイトと打ちとけ合ったり、団結を深める部分もあるでしょう?
大野: お酒が入ると、選手の性格も本音も出てくる。それは楽しいですね。普段はあまり話さない若手でも、お酒の席ではいろいろ話ができる。それでお互いに理解し合って、チームがひとつになる面はありますね。

二宮: では東芝でも若手を誘って飲みに連れていくこともあると?
大野: 飲みに行くことはありますが、最近の若い選手はそこまで飲まないですね。よくよく考えたら、僕は36歳。僕が入社した時の薫田(真広)さんたちの年齢よりも上になっています。当時を振り返ると薫田さんにいきなり飲みに連れて行ってもらうのは、さすがに緊張して気が引けました。だから若い選手から見れば、僕もそんな風に見られているのかもしれないと思うんです(笑)。だから、この頃は個別に呼び出すんじゃなくて、チームの飲み会の中で若手と交流するようにしています。

二宮: 確かにスポーツ界はタテ社会ですから、10歳以上離れたレジェンドとなると、新人にとっては雲の上の存在に映るかもしれませんね。
大野: そこまでの威圧感は出していないつもりなんですけどね(笑)。これは入社4、5年目の選手から言われたんですが、「最初は大野さんのような大先輩に誘われるのは正直、気が引けた」と。でも、何年もやっていくと、「あの時、何でそう思ったのかわからない」という気持ちになるそうです。これは仕方のない部分もあると感じます。一緒のチームで何年もやっていくうちに年齢を越えて、お酒を交えながら深い話ができるようになっていくものですから。

二宮: 後輩からしてみれば、先に帰るわけにもいかないし、グラスが空いたら、お酒も注がないといけない。最初はそういう意識も働くのでしょうね。
大野: それも4、5年経つと関係なくなりますけどね。今は僕の方が気をつかって、後輩のお酒をつくったりしていますよ(笑)。

 エディーHCのコミュニケーション術

二宮: エディーさんはコミュニケーションを重視するリーダーです。以前は選手同士が食事しながら会話できるように携帯電話の使用を禁止していました。代表でも、その部分の変化は感じますか。
大野: エディーさんは試合後に通訳を介して、良かった点と悪かった点をメールしてくれるんです。選手としては「ちゃんと見てくれているんだな」とうれしいし、励みになりますよね。その分、「きちんとやらなきゃダメだな」とプレッシャーもかかります。キャプテンやリーダー格の選手になると、代表期間中でなくても呼び出して個別ミーティングをする。そのあたりは細かいですね。

二宮: それは前任者のジョン・カーワン(JK)さんの時にはなかった点ですか。
大野: JKはオンとオフをハッキリさせる指導者だったので、練習や試合ではあれこれ言われても、代表から離れると連絡を取り合うことはありませんでした。JKとエディーさんを比較すると、目指すラグビーの方向性は大きく変わらないんです。FWであれば同じタイミングで走り出して相手のDFを攪乱する。ただ、その精度を高めるために、いかに徹底してやるか。エディーさんがヘッドコーチになって、一番変わったのは、ここだと思います。

二宮: エディーさんが呼び寄せたマルク・ダルマゾコーチの指導でスクラムも劇的に進化しました。
大野: これは指導に加えて、ルール改正がプラスに働きました。それまでは離れた位置からぶつかっていたので、どうしても体格で勝る外国人の重量に当たり負けてしまっていたんです。ただ、今は互いにジャージをつかんで至近距離から組む。これだと日本人の下半身の強さも生きてくる。

二宮: 日本人はパワーがないと言われますが、重量挙げでも五輪メダリストが出ています。下半身の力と、それを最大限生かすテクニックが合わされば、世界とも戦えると?
大野: 昨年のイタリア戦では、全く押し負けなかったですからね。過去の対戦ではスクラムで完全に圧倒されていた。普通にやって、普通に勝ったので、ひとり感動していましたよ。でも、11月のグルジア戦ではスクラムでやられて、自信が粉々に打ち砕かれてしまいましたが……(苦笑)。本番1年前に、もう一度、気を引き締めてブラッシュアップする必要性を感じさせてくれましたね。

二宮: グルジアは柔道や格闘技なども強い。コンタクトプレーだけなら世界屈指でしょうね。
大野: それまで対戦したFWとはレベルが違いました。個人的には2004年にヨーロッパ遠征した際のスコットランドのFWの強さも印象に残っています。モールで持って来られたら止めようがなかったんです。スクラム、モールでやられてしまうと、チーム全体の心理に影響してくる。そのスコットランド戦は8−100の完敗でした。

二宮: BKは華麗なステップでトライをあげて目立つ機会が多い一方で、FWはどうしても縁の下の力持ちの存在になりがちです。ただ、実際に試合で勝つためにはFWの頑張りも欠かせませんよね。スポットライトを浴びなくても苦しい思いをして耐えしのぐ。マゾヒスト的な性格でないと、務まらないポジションかもしれません。
大野: 確かに、よくFWの選手は頭がSで、体がMだと言われますね(笑)。もうキックオフしたら、一心不乱に行くだけ。勝てるチームはFWとBKがいい意味で張り合っているように感じます。FWが「これだけやっているんだから、オマエらもやれよ」とBKに要求するし、その逆もある。単なる仲良しクラブより、お互いに満足しない環境の方がチーム力は上がっていくかもしれません。昔の東芝がそうでしたから。

 初戦の南アに100%をぶつける

二宮: もう1杯いかがですか。今度は長期貯蔵の本格そば焼酎「那由多(なゆた)の刻(とき)」を。
大野: これも焼酎ですか!? 初めて飲みました。焼酎というより洋酒みたいな味わいですね。 

二宮: そうなんです。さて、イングランドW杯まで残り5カ月。エディージャパンの進化は誰もが認めるところです。期待値も今までにないところまで高まっていると感じます。
大野: 確かにウェールズに勝ったり、世界ランキングでトップ10入りを果たしたり、テストマッチ11連勝を収めたり、この4年間で強くなっている実感はありますね。

二宮: 予選プールの初戦は南アフリカです。W杯2度優勝の強豪。日本が対戦するのは初めてになります。
大野: エディーさんは、ここに100%照準を合わせていますね。すべてを出し切って、どこまで通用するか。僕たちも楽しみです。

二宮: 南ア戦から次のスコットランド戦は中3日しかありません。これはなかなか厳しい日程です。
大野: 前回のW杯でJKはニュージーランド戦に主力を温存して、他で勝てる試合を確実にモノにする戦略でした。でもエディーさんは、その作戦はとらないと思います。南ア戦のパフォーマンスを踏まえつつ、常にベストメンバーで戦うことになるでしょう。2度W杯を経験して感じたのは、「短期決戦ではレビューしてはいけない」。たとえ負けることがあってもネガティブにならず、次の試合に向けてプレビューする。切り替えが大事になってくると思います。

二宮: 3戦目はサモア、4戦目は米国です。日本はW杯で過去1勝しかあげていませんが、エディーさんはベスト8入りを目標に掲げています。この2カ国には勝利が最低条件になります。
大野: サモアの選手は身体能力が高い。あのあたりに遠征に行くと、子どもたちが草履で鋭角なステップを踏んでラグビーをしている。それを見た時に、「これは持って生まれたものが違うな」と感じましたね(苦笑)。ただ、ラグビーは身体能力が高いからといって勝てる競技ではない。試合運びに国民性なども見えてくるところがW杯の面白さではないでしょうか。

二宮: そして4年後は日本にW杯がやってきます。選手にとっては大きなモチベーションとなるはずです。
大野: そうですね(笑)。選手として使っていただける間は現役で頑張りたい。今はその思いで、日々、取り組んでいます。

二宮: 代表では大野さんが最年長ですが、日本国内を見渡すと、釜石シーウェイブスでは伊藤剛臣選手が43歳で現役を続けています。
大野: 実は剛臣さんは僕が初めて代表入りした時は同部屋だったんです。一番、思い出深いのがフランス遠征。移動に24時間かかって、僕はもうクタクタでした。やっとベッドで寝られると思ったら、剛臣さんは出かける準備をしている。言われた言葉が「おい、飲みに行くぞ。オマエも着替えろ」(笑)。

二宮: 文字どおりのタフネスですね。
大野: 今も試合に出てフル出場していますから、本当にすごい。昨年、釜石のスタッフに話を聞いたら、「今までで一番、パフォーマンスがいい」とか。

二宮: いやあ、今回は大野さんとかなり飲んでしまいました(笑)。またW杯が終わったら、改めて。そば焼酎「雲海」や、「那由多(なゆた)の刻(とき)」を用意してお待ちしています。
大野: そば焼酎をいろいろ楽しめて良かったです。ぜひ、いい結果をお土産に、ご一緒できればと思います。

(おわり)

大野均(おおの・ひとし)
1978年5月6日、福島県生まれ。東芝ブレイブルーパス所属。清陵情報高までは野球部。日大工学部に入ってラグビーを始め、01年、東芝に入社。体格を生かしたフィジカルの強さとスピードを武器にロックのポジションで活躍し、トップリーグでは9度のベスト15に輝く。日本代表では04年5月にデビュー。07年、11年と2度のW杯に出場。その後もコンスタントにテストマッチ出場を続け、14年5月に日本代表の歴代最多キャップ数を更新。現在は87キャップ。36歳と代表最年長ながら体を張ったプレーぶりでチームを牽引している。著書に『ラグビーに生きる』。 


 今回、大野選手と楽しんだお酒は本格そば焼酎「雲海」。厳選されたそばと、宮崎最北・五ヶ瀬の豊かな自然が育んだ清冽な水で丁寧に造りあげた深い味わい、すっきりとした甘さと爽やかな香りが特徴の本格そば焼酎です。ソーダで割ることで華やかな甘い香りが際立ちます。
提供/雲海酒造株式会社

☆プレゼント☆
 大野均選手の直筆サイン色紙を本格そば焼酎「雲海」(900ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はより、本文の最初に「大野均選手のサイン希望」と明記の上、下記クイズの答え、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストなどがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選発表は発送をもってかえさせていただきます。締切は5月14日(木)までです。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。
◎クイズ◎
 今回、大野均選手と楽しんだお酒の名前は?

 お酒は20歳になってから。
 お酒は楽しく適量を。
 飲酒運転は絶対にやめましょう。
 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成・写真:石田洋之)


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