いよいよ世紀の一戦は目前――。全世界待望のフロイド・メイウェザー対マニー・パッキャオ戦が5月2日に迫り、ラスベガスは未曾有の熱気に包まれている。両者のファイトマネーにして100億円以上が確実な空前絶後の一戦は、どんな展開になり、どちらが勝ち残るのか。筆者が独自の予想を展開した先月のコラムに続き、今回は現地の声を集めてみた。
(写真:全世界が震える一戦のゴングは間もなく)
 バーナード・ホプキンス(49歳の史上最年長世界王座奪取記録保持者)
「パッキャオのスタイルはメイウェザーが対戦した過去のどの相手とも違うだけに、さまざまな流れが考えられる。しかし、現時点での両選手には、どちらも年齢を重ねたがゆえのポジティブとネガティブがあって、相手のネガティブな部分をうまくついた方が有利になる。1〜6ラウンドくらいまでの主導権の握り合いが勝負。前半戦が終わるころには、どちらが勝つかはっきりと見えてくるファイトになるだろう。KOのチャンスがあるとすればパッキャオ。いずれにしても、これだけのビッグイベントになったのだから、リマッチの声が出るくらいに良い試合になってほしい」

 ウラディミール・クリチコ(WBA、IBF、WBO世界ヘビー級王者)
 メイウェザー有利
「メイウェザーの試合はパッキャオのファイトほどに印象的ではないかもしれないが、それでもメイウェザーのボクシングは効果的ではある。サイズとテクニックの面で、メイウェザーにややアドバンテージがあると考えている。50−50が互角とすれば、51−49のわずかな差でメイウェザーだ。あくまでボクシングの予想であり、個人的な好き嫌いは別の話ではあるけれど」
(写真:両者のサイズの違いも重要な要素になるか Photo By Stephanie Trapp/Mayweather Prom)

 オスカー・デラホーヤ(元6階級制覇王者/メイウェザー(1−2の判定負け)、パッキャオ(8Rストップ負け)の両方と対戦経験あり) 
 パッキャオ有利
「最初に試合が決まったときはメイウェザー有利と思ったが、練習のフィルムを見て、パッキャオの目に以前の炎が戻っているのが見えた。あのパッキャオがリングに立てば、メイウェザーはトラブルに陥るだろう。理論的にはメイウェザーだが、心情的にはパッキャオを推したい。
 パッキャオは打ち合いを好むが、メイウェザーは快適に感じられる距離に止まり、不必要なエネルギーを消費しようとはしない。メイウェザーが何をしようとするかは予想がつき、彼はゲームプランを変えようとはしない。パッキャオには不確定要素がまだあり、私たちを驚かせてくれるかもしれない。もっとも、メイウェザーは素晴らしいアスリートだから、別次元にまで到達できる。彼が今回のチャレンジにモチベーションをかきたてられているのも事実だろう」※コメントはESPN.comより引用

 ジョージ・ウィリス(ニューヨーク・ポスト紙)
 メイウェザーの判定勝ち
「メイウェザーの方がディフェンス面で優れていて、ファイト中にパッキャオより多くのアジャストメントを施すことができる。パッキャオの方が好スタートを切り、序盤は優勢かもしれないが、うまく適応したメイウェザーが判定勝利を飾ると思う。
メイウェザー対ファン・マヌエル・マルケス戦(2009年9月)のようにワンサイドになる可能性もあるが、良い試合になって欲しいと願っているよ。メイウェザーのKO勝利の可能性を指摘する人も多いが、私はそうなるとは思わない。マルケスのパッキャオ戦でのKO劇(2012年12月)は、マルケス自身がストップ負け寸前に追い込まれた絶望感の中で生まれたパンチだった。メイウェザーはそこまで追い込まれないだろうから、逆にKOは生まれにくくなる」
(写真:メイウェザーが追い詰められるシーンはあるのか Photo By Stephanie Trapp/Mayweather Prom)

 ライアン・サンガリア(リング誌/フィリピン系アメリカ人)
 パッキャオの判定勝ち
「まったく違うスタイルの2人の対戦だから、接戦になるだろう。少なくともペーパー上は、互いにとってやりづらい相手であるようにも思える。メイウェザーはパッキャオのように、さまざまな角度からパンチを出すサウスポーは得意としていない。
 一方で、パッキャオはカウンターパンチャーは苦手としていて、そのカウンターのうまさでメイウェザーの右に出る選手はほとんどいない。そんな2人の対戦では、自身の秀でている部分をどれだけ活かせるかがポイントになると思う。メイウェザーはサイズ面で、パッキャオはクイックネスで上回っていて、その有利さをどう生かしてくるか。不確定要素が多いだけに展開を考えるのは難しいが、現時点ではパッキャオ有利の方に傾いている」

 福田直樹(ボクシングカメラマン/全米ボクシング記者協会の最優秀賞を過去5年間で4度受賞)
 パッキャオの判定勝ち
「ここ最近のメイウェザーはディフェンス力がやや落ちているので、さまざまな角度から繰り出されるパッキャオのコンビネーションを避け切れないでしょう。豊富なスタミナを糧に、パッキャオがヴォリュームパンチでそのまま押し切るのではないでしょうか。攻勢点を買っての判定勝ちですね。メイウェザーもときにカウンターで強烈なパンチを当てるとは思いますが、好調時のパッキャオはそれでも止まらない。もちろんパッキャオの状態が良いことが勝利の条件になります」
(写真:べガス入り以降もパッキャオはリラックスした笑顔をよく見せている Photo By Stephanie Trapp/Mayweather Prom)

 山口大介(日本経済新聞運動部)
 パッキャオの判定勝ち
「願望を込めてパッキャオを推します。条件としては3ラウンドまでにダウンを奪うか、相当なダメージを与えること。序盤に山場をつくれば、会場の雰囲気も味方に付けて、パッキャオが一気に行く可能性があるんじゃないかと。メイウェザーもそれをさせないために、サウル・アルバレス戦(2013年9月)のように序盤からそれなりに出てくるとは思います。その衝突の中でパッキャオのパンチが当たれば、良い流れになっていくのではないでしょうか。どちらにしても判定勝負と思いますが、パッキャオだけでなく、メイウェザーのKOもあり得る気はします」

 杉浦大介
 パッキャオ、2−1の判定勝ち
「サイズ、ディフェンスに優れたものが勝ち残るというのは、ボクシングに限らず、あらゆるスポーツの定説。だとすれば、メイウェザー有利と考えるのが妥当ではあるのだろう。ただ、サウスポースタイルからさまざまな角度でパンチを繰り出すパッキャオのスタイルは、希代のディフェンスマスターにとっても見切るのが難しいはず。メイウェザーがときに好打をヒットしてボクシングの質では優勢を印象づけるも、圧倒するまでには至らず、際どいラウンドは手数で勝るパッキャオに流れるのではないか。
 結果として、微妙な判定でパッキャオの手が上がる。試合後はその採点を巡って紛糾し、社会問題に発展。メイウェザーは即座の再戦を叫び、ここで“世紀のリマッチ”へ向けてのドラマが再び幕を開ける……」

杉浦大介(すぎうら だいすけ)プロフィール
東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、NFL、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボールマガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞』など多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。著書に『MLBに挑んだ7人のサムライ』(サンクチュアリ出版)『日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価』(KKベストセラーズ)。

※杉浦大介オフィシャルサイト>>スポーツ見聞録 in NY


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