今年のゴールデンウィークは、イコール、ボクシングウィークだった。
 5月に入ってからの6日間で日本人が絡んだプロボクシングの世界戦(男子に限る)が4試合も行われた。
▼5月1日、東京・大田区総合体育館
★WBC世界スーパーフェザー級タイトルマッチ
○三浦隆司(帝拳)<TKO、3R1分29秒>●ビリー・ディブ(オーストラリア)
※三浦が4度目の王座防衛に成功。

▼5月1日(現地時間)、米国ラスベガス
★WBO世界ライト級王座決定戦
○レイムンド・ベルトラン(メキシコ)<TKO、2R1分29秒>●粟生隆寛
※ベルトランのウェイトオーバーにより、王座は空位に。

▼5月6日、東京・大田区総合体育館
★WBA世界ライトフライ級タイトルマッチ
○田口良一(ワタナベ)<TKO、8R36秒>●クワンタイ・シスモーゼン(タイ)
※田口が王座初防衛に成功。

★WBA世界スーパーフェザー級タイトルマッチ
○内山高志(ワタナベ)<TKO、2R1分15秒>●ジョムトーン・チューワタナ(タイ)
※内山が10度目の王座防衛に成功。

 これに加えてロンドン五輪ミドル級金メダリスト村田諒太のプロ7戦目、元WBA世界ミニマム級&WBC世界フライ級王者・八重樫東のカムバック戦(いずれも5月1日、大田区総合体育館)、そして世界が注目したフロイド・メイウェザー(米国)vs.マニー・パッキャオ(フィリピン)の王座統一戦(現地時間5月2日、米国ラスベガス)も華々しく行われた。私も連日、会場で、テレビの前で拳を熱く握り締めることができた。

 最も観る者を熱くさせたのは、やはりメイウェザーvs.パッキャオか。いずれもが100億円以上を手にするという世紀のスーパーファイト。あまりにも予想通りの決着に拍子抜けの感は否めないが、メイウェザーの巧さが光った一戦だった。ディフェンシブなメイウェザーに対して批判の声も大きかったようだが、それは的外れだ。

 ディフェンスに徹しながら、スピード感あふれるジャブでポイントを稼いで勝つ。それが、ここまで無敗で5階級を制してきたメイウェザーの戦法。そこを、いかにパッキャオが打ち破るかが、この一戦のテーマだったのだから、パッキャオの完敗と見るしかないだろう。メイウェザーが強かったというよりも、ボクシング競技という枠の中で彼はとても巧かったのだ。

 さて、国内のリングにおいて最も衝撃的なファイトで魅せたのは、見事なKOで?10を飾った内山だろう。
 スーパーフェザー級とは思えない凄まじい強打を見た。2ラウンドのトドメの右のパンチも凄絶。だが、それ以上に1ラウンドに決めた右ストレートは、さらにインパクトの強いものだった。よく挑戦者は立っていられたと思う。でも、おそらくは、あの一撃で勝負は決まっていたのだろう。

「あのパンチで視界がハッキリしなくなった」
 敗れたジョムトーンも、試合後にそう話していた。
 重度の拳の負傷を乗り越えて、ダイナマイトパンチは、さらに威力を増し、内山は35歳を過ぎてピークを迎えた感さえある。

 さて、内山の今後だが、世界進出、すなわちラスベガスでのファイトを目論んでいる。
「メイウェザーvs.パッキャオを観て刺激を受けた。自分も、あのような舞台で闘って観客を感動させたい」
 そう内山は話していた。ぜひとも世界進出を実現させてほしい。内山の強打に世界が驚くことだろう。

 だが、その前に観たい試合がある。三浦隆司との再戦だ。
 2人がグローブを交えたのは2011年1月31日。この試合は内山にとっての3度目の防衛戦で8ラウンド終了TKO勝利を収めている。それでも内山にとって決して楽な試合ではなかった。初めて右目上を切り、右拳も傷めた末の王座防衛。あれから4年以上が経ち、三浦は現在WBCのベルトを腰に巻き、左強打をうならせ続けている。

 ともにピークを迎えているのだ。そんないまだから、「ダイナマイトパンチ」vs.「ボンバーレフト」――。日本人同士の王座統一戦、年内の実現を望む。ボクシング史上に残る名勝負が生まれる予感が漂う。

----------------------------------------
近藤隆夫(こんどう・たかお)
1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実〜すべては敬愛するエリオのために〜』(文春文庫PLUS)『情熱のサイドスロー〜小林繁物語〜』(竹書房)『キミはもっと速く走れる!』『ジャッキー・ロビンソン 〜人種差別をのりこえたメジャーリーガー〜』『キミも速く走れる!―ヒミツの特訓』(いずれも汐文社)ほか多数。最新刊は『忘れ難きボクシング名勝負100 昭和編』(日刊スポーツグラフ)。
連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)


◎バックナンバーはこちらから