前期優勝までのマジックは2。先発ピッチャーがしっかり試合をつくり、バッターがいいところで打って投打がかみ合っています。監督を引き受けた時から、このくらいはできるチームだと感じていただけに、正直、最初は指揮を執ることにプレッシャーがありました。オープン戦は決してチーム状態が良くありませんでしたが、開幕からきっちり結果を出してくれた選手たちに助けられています。
 先発で安定した成績を残しているのは右腕の間曽晃平です。ここまで3試合連続完封を含む、6勝1敗。防御率は0.66と抜群です。監督に就任し、最初に見た時の彼は上体に力が入り、前の左肩が上を向いていました。

 ピッチングで重要なのは、リリースの瞬間に力を爆発させること。最初から力が入っていては、せっかくのいいボールが生きてきません。そこで上体の力みを抜き、両肩を並行にして投げるようアドバイスしました。本人も試行錯誤して、うまくリリースポイントで力を込める感覚をつかめてきているようです。

 ストレート、変化球ともキレが上がってきており、コントロールもいい。今後、球速も上がってくるでしょう。平均145キロくらいになってくると、NPBは十分狙えるとみています。

 間曽に次いで5勝をあげている渡邉雄大は左のサイドスロー。変則的なフォームでストレートと変化球のコンビネーションが冴えています。サウスポーの変則派はNPBでも貴重です。間曽同様、もう少し球速が出るよう工夫をして、上のレベルに行かせたいと思っています。

 先発と比較して、課題はリリーフです。本来であれば、セットアッパー、抑えと役割分担したいところですが、まだ、そこまで信頼を置ける存在が出てきていません。現状は、その時の調子を見極めて、起用を判断しています。これまで同様、間曽、渡邉、田村勇磨、新人の中西啓太の先発陣に頑張ってもらうことがポイントになるでしょう。

 僕はピッチャー陣に対して、「勝負しろ」と言い続けています。勝負して打たれるのは仕方ありません。バッターは3割打てば好打者と言われるように、簡単に連打は出ないものです。しかし、四球が絡んでくると大量失点につながってしまいます。これは独立リーグでもNPBでも変わりません。

 上を目指すピッチャーたちにとって、打たれるのも勉強です。勝負して抑えれば自信になりますし、打たれれば反省して次につなげてくれればいいと考えています。これからもピッチャーには逃げることなく、勝負し続けてほしいものです。

 野手は稲葉大樹、平野進也の兼任コーチが、ともに打率3割以上と結果でチームを引っ張ってくれています。外国人のデイビッド・キャンディラスが中軸に座り、下位でも新人の纐纈(こうけつ)隼基や足立尚也がいい仕事をしていますね。1番から9番まで打線がよくつながっています。

 ミッチ・デニングが東京ヤクルト入りし、攻撃力が落ちるのではないかと心配しましたが、むしろ選手たちにはいい刺激になっています。しかも、デニングが活躍して、僕たちも頑張ろうという気持ちが強くなっているのではないでしょうか。

 デニングはまじめで研究熱心。性格が日本人的でNPBでも適応力はあるとみていました。しかも、NPBはBCリーグよりストライクゾーンをきっちりとり、狭いのもプラスになっています。好球必打でしっかりとらえていることが、結果につながっているのでしょう。これからも打ち続けて、評価を上げてほしいと願っています。

 デニングが抜けてチャンスが巡ってきた選手は、モチベーションが高いです。スタメン出場が増えた桑田真樹は打率3割以上と得意のバッティングでアピールしています。守備走塁はまだまだですが、実戦で経験を積んでレベルアップしてもらいたいですね。

 マジックは2ですから、ここまで来れば一気に優勝を決めたいところです。とはいえ、余計なことは考えず、まずは目の前の試合に集中することが大切でしょう。1試合1試合を大事に戦っていきますので、引き続き、応援よろしくお願いします。

赤堀元之(あかほり・もとゆき)>:新潟アルビレックスBC監督
1970年4月7日、静岡県生まれ。静岡高時代は2年時にエースナンバーを背負い、夏の甲子園に出場した。89年、ドラフト4位で近鉄に入団。主にクローザーとして活躍し、最優秀防御率1回、最優秀救援投手5回を獲得する。04年限りで現役を引退し、翌年からオリックスのコーチに。10年には韓国のSKワイバーンズのコーチ、11年に再びオリックスのコーチを4年間務めた。15年より、新潟アルビレックスBCの監督となる。現役時代の通算成績は380試合、58勝45敗139セーブ、防御率2.88。
(写真:(C)新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ)
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