前期は16勝17敗4分と負け越しての地区3位。苦しんだ原因は投手陣の失点の多さです。7月20日時点でのチーム防御率は4.73でリーグワースト2位。215四球は全体で最も悪い数字です。得点はトップの230点をあげているにもかかわらず、守りが崩れて勝ちきれませんでした。
 その投手陣では前期、唯一気を吐いた元DeNAのエンジェルベルト・ソトが左肩の故障により、残念ながら退団することになりました。先発陣の再構築は不可欠な状況です。

 現状、先発の柱と考えているのは実績のある2人の外国人。元巨人のレビ・ロメロと、広島やシカゴ・カブスで投げていたエスマイリン・カリダです。ロメロは抑えで起用していましたが、調子が上がってこないため、先発に配置転換しました。ここにきて17日の武蔵戦では7回無失点の好投をみせるなど、状態は良くなっています。

 カリダは球に力があり、空振りのとれる変化球を持ち合わせています。タイプ的にはリリーフでしょうが、本人の希望もあり、先発で投げてもらっています。いずれにしても先発の頭数が足りない中、2人にはきっちり役割を果たしてほしいと願っています。

 3番手以降の先発は元DeNAの伊藤拓郎、経験豊富な堤雅貴、ドジャースのマイナーチームに在籍していた沼田拓巳を試しているところです。堤は今季、先発のメインで回ってもらう予定でした。しかし、打たれるケースが目立ち、成績は1勝3敗、防御率7.11。ボール自体は決して悪くないのに、急に乱れてしまいます。

 これはゲームに入っていく準備の問題でしょう。自身の状態を把握し、今日はどんなピッチングをすべきか、修正しながら投げていくことが大事です。きちんと頭の中を整理して、早く本来の姿を見せてほしいと思っています。

 7月に入団した沼田は楽しみな素材です。真っすぐにスライダーが良く、このコンビネーションで打者を抑えていきます。まだ21歳。長いイニングを経験して、もう一回り大きく成長してほしいものです。

 ロメロの先発転向の代わりに、抑えは町田翔司に任せることにしました。町田はフォークボール、スライダーという武器があり、空振り、ファウルでカウントを稼げる点が強みです。今の投手陣で最終回を安定して抑えられるのは彼が一番でしょう。短いイニングで彼の長所をよりスカウトにアピールさせたいと考えています。

 ソトが抜け、ピッチャーの人数も少なくなりましたから、全員が頑張らないと投手力アップは望めません。その中でも、やはり元NPBの伊藤、7年目の堤が先発、中継ぎでフル回転してくれることが重要になります。また抑えの町田につなぐ存在として左腕の山崎悠生の活躍も欠かせません。先発から中継ぎ、抑えと勝ちパターンをつくり、最少失点で打線の援護を待つスタイルを確立したいですね。

 野手ではヨヘルミン・チャベスがオリックス入りしたものの、攻撃力はそこまでダウンしていません。上位を打つ新人の森岡大和は打率3割以上をマーク。中軸の井野口祐介は7本塁打、31打点とポイントゲッターになっています。股関節を痛めて離脱していたヘスス・メルチャンが復帰し、たたみかける攻撃が可能でしょう。

 NPB行きを果たしたチャベスは、まだこれからの選手です。群馬ではタイミングの取り方が悪く、ヒッチする癖がありました。バットがスムーズに内側からしなって出てくるように改善すれば、助っ人として貢献できるはずです。レベルの高いNPBのピッチャーに早く慣れ、配球を勉強して、1軍に上がる日を楽しみにしています。

 前期は新潟が独走で地区優勝しましたが、後期は今のところ混戦模様です。首位争いから脱落することなく、後期優勝、年間王者を目指して頑張っていきます。


川尻哲郎(かわじり・てつろう)>:群馬ダイヤモンドペガサス監督
1969年1月5日、東京都生まれ。日大二高、亜細亜大、日産自動車を経て、94年にドラフト4位で阪神に入団。2年目にプロ初勝利を挙げると、翌年には自己最多の13勝(9敗)をマーク。98年5月26日の中日戦で史上66人目となるノーヒットノーランを達成し、同年オールスターゲームにも出場した。2004年に近鉄に移籍し、翌年には楽天へ。05年シーズン限りで現役を引退した。13年より群馬の投手コーチを務め、14年より監督として指揮を執っている。
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