ボクシング界の“ボンバー”といえば、WBC世界スーパーフェザー級王者の三浦隆司だ。5月の防衛戦では元IBF世界フェザー級王者のビリー・ディブ(オーストラリア)に得意の左が炸裂。3RTKO勝ちを収め、4度目の防衛に成功した。これで3戦連続KO勝ちと、ニックネームにふさわしい倒しっぷりをみせている。三浦本人と、担当の葛西裕一トレーナーに“ボンバー”と呼ばれるまでのいきさつを二宮清純が訊いた。
(写真:「昔から倒して勝つのを理想にしてきた。判定で勝っても、あまりうれしくない」と言い切る)
二宮: 三浦さんといえば、今や“ボンバー”の愛称が定着しました。そう呼ばれることをどう感じていますか。
三浦: ボンバーは、素直にうれしいです。
葛西: 内山(高志)君(WBA世界スーパーフェザー級王者)が「ダイナマイト」と呼ばれていますよね。そういうニックネームをつけると周りも注目して、相乗効果で気分も乗ってくる。名前に選手が引っ張られて伸びるんです。世界を獲るためには、そういうイメージ戦略も必要だと考えました。

二宮: そう言えば、葛西さんも現役時代は“プリンス”と呼ばれていましたね。
葛西: でも、プリンスだと強いイメージはないですよね(苦笑)。なんか、戦う相手が警戒するような部分がほしい。そこで“石の拳”とか、いろいろ考えて、“ボンバー”という名前をつけました。「これで世界チャンピオンになれるぞ」と“洗脳”したんです。本人はパフォーマンスで目立つのはあまり好きじゃないタイプですけど、「無理やり言え」と“ボンバー”を浸透させていったんです。

二宮: 同じ帝拳ジムの山中慎介チャンピオン(WBC世界バンタム級王者)は“神の左”。そんなニックネームがついたら、相手は「どんな左だろう」と勝手に怖がってくれますよね。
葛西: そういう風に相手がビックリしたり、ビビってくれれば、こっちのものです。

二宮: 山中選手とは同じサウスポーですが、どう映りますか。
三浦: 僕とはちょっとパンチの質が違いますね。
葛西: 山中はパンチが切れる感じ。三浦は名前のごとく爆発させてぶっ壊す感じですね。違いがあった方が個性が際立つので、ちょうど良かったと思っています。三浦は左だけじゃなく、右フックもすごいですから。

三浦: サンドバックを打つだけなら、右フックの方が強いかもしれません。
葛西: 試合での命中率は左だけど、右も強い。だから右で弱らせておいて、左で仕留めることができる。もともとスキルはあって、センスもあるから、これからも強くなりますよ。

二宮: 内山選手とのリターンマッチで王座統一戦を望むファンもたくさんいます。もう1度、戦ってみたい気持ちは強いですか。
三浦: チャンピオンになって、自信もついてきていますから、いずれ、ケリをつけたいですね。タイミングが合えば、ぜひやりたいとは思っています。ただ、それよりも、やってみたいのがラスベガスでの試合。昨年の12月にWBC総会があって現地に行った際に、アミール・カーンとデボン・アレクサンダーの試合を観ました。チャンスがあれば、ラスベガスで名前のある相手と戦ってみたいです。

<現在発売中の小学館『ビッグコミックオリジナル』(8月5日号)に三浦選手のインタビュー記事が掲載されています。こちらもぜひご覧ください>