7月に中日入りしたドリュー・ネイラーが1日の巨人戦で初登板初先発を果たしました。ボールを見る限り、決して本調子とは言えない中で6回2失点。次回以降のチャンスが生まれ、これからに期待できるピッチングだったと思います。
 彼は香川に入団した時から、能力が高く、NPB1軍クラスの右腕だとみていました。何より適応力があるのが長所。どんなマウンドも苦にせず、牽制やクイック投法、バント処理なども改善点をすぐに実践できます。香川に来てからはチェンジアップの落差を改良したり、カットボールの曲がりを鋭くして左バッターのインサイドにも使えるように磨くなど進化していきました。
 
 頭が良く、アドバイスをきちんと理解し、吸収することができますから、中日でもさらに伸びる余地はあるでしょう。巨人戦で6回に打たれた2本のソロホームランは、ともに変化球が甘く入ったもの。コントロールミスをすれば、一発につながってしまうことを学習できたはずです。まだスピードも変化球のキレも出るとみていますから、今後を楽しみにしています。

 アイランドリーグは後期シーズンがスタートし、香川は連敗スタートとなってしまいました。前期優勝というアドバンテージがあるだけに、後期は育成も重視しながら、秋のチャンピオンシップを見据えて戦っていくつもりです。

 ネイラーが抜けた投手陣でキーマンとなるのは、新人サイド右腕の原田宥希。ここにきて彼の良さであるボールの威力が増してきました。ストレートの球速が上がった分、速くて大きく曲がるスライダーも有効に使えています。

 後期初登板となった2日の高知戦では先発で6回3失点。及第点と言える内容でした。失点につながったのは、いずれも四球がきっかけでしたから、ここを注意していけば先発として役割が果たせるでしょう。後期はローテーションの一角を担ってほしいと望んでいます。

 またリリーフでは2年目の太田圭祐に安定感が出てきています。制球力はチームでも1、2を争うレベル。前期が終わってから下半身強化に取り組み、軸がぶれなくなってきました。その分、しっかり回転をかけてストレートが投げられるようになり、シンカーで空振りがとれています。

 本人も投げ込みやトレーニングを重ねて、力をつけている自信があるはずです。2日の高知戦では最後に打たれてサヨナラ負けを喫してしまいましたが、この先もどんどん投げさせて経験を積ませる予定です。

 後期の先発は先にあげた原田に、中日から派遣中の川崎貴弘、外国人のウェスリー・エドワーズと、故障からの復活を目指す竹田隼人の4枚をメインで考えています。愛媛との開幕戦(1日)で先発した竹田は4回途中で8失点。フューチャーズとの関東遠征から戻ってきた疲れを差し引いても課題が残るマウンドとなりました。

 竹田は手術した右ヒジが回復し、ボールの勢いは戻ってきています。その分、愛媛戦では一本調子でストライクを揃えすぎました。勝負どころでボール球をうまく使ったり、緩急を駆使することで、より打ちにくいピッチャーになるでしょう。投球術を覚えることで、さらに上のレベルに到達してほしいものです。

 ブルペンは太田に田村雅樹、抑えの松本直晃が勝ちパターンのリリーフになります。ただ、松本は状況によっては先発に回し、長いイニングでもアピールさせたいと思っています。松本は硬式野球でのピッチャーは1年目ながら、空振りをとれるストレートを持っています。以前も指摘したように課題は落ちるボールの習得です。これはバッターの反応を見ながら実戦でコツをつかんでいくしかありません。スライダーも含めて変化球の精度が上がれば、スカウトの評価も高まるとみています。

 後期は9月に10連戦も控える過密日程だけに、ブルペンに負担がかかります。こちらも各選手の調子や状態を見ながら、柔軟に起用していくつもりです。練習もメリハリをつけ、試合で力が発揮できるよう、うまくコントロールすることもコーチとして大切な役割だと考えています。

 選手たちは暑い中、一生懸命トレーニングしています。チームの勝利と個人のレベルアップを両立させ、秋には両方で成果が残せるよう、僕も精一杯サポートしていきます。

伊藤秀範(いとう・ひでのり)プロフィール>:香川オリーブガイナーズコーチ
 1982年8月22日、神奈川県出身。駒場学園高、ホンダを経て、05年、初年度のアイランドリーグ・香川に入団。140キロ台のストレートにスライダーなどの多彩な変化球を交えた投球を武器に、同年、12勝をマークして最多勝に輝く。翌年も11勝をあげてリーグを代表する右腕として活躍し、06年の育成ドラフトで東京ヤクルトから指名を受ける。ルーキーイヤーの07年には開幕前に支配下登録されると開幕1軍入りも果たした。08年限りで退団し、翌年はBCリーグの新潟アルビレックスBCで12勝をマーク。10年からは香川に復帰し、11年後期より、現役を引退して投手コーチに就任した。NPBでの通算成績は5試合、0勝1敗、防御率12.86。

(このコーナーでは四国アイランドリーグplus各球団の監督・コーチが順番にチームの現状、期待の選手などを紹介します)


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