7月は7勝3敗2分と好調な後期のスタートを切りながら、8月は一転、7連敗を含む2勝9敗2分。現状は地区最下位です。暑い熊谷の夏、開幕から守り勝つ野球を支えてきた投手陣に疲れが出てきています。
 その中で孤軍奮闘しているのが、エースの篠田朗樹です。今季は信濃から移籍して抑えから先発に転向し、しっかり役目を果たしています。長いイニングを投げるため、持ち味の速球はやや抑え気味ですが、コントロールの良さが好成績(10勝3敗、防御率1.44)につながっています。

 メジャーリーグ経験もあるベック・チャスンが千葉ロッテに入団したため、先発2番手は左腕の中村一仁です。彼が勝てるかどうかが巻き返しへのポイントと言っていいでしょう。中村は7月までは7勝3敗と白星を伸ばしていたものの、8月に入って3連敗。シーズンを通じて投げる経験が初めてで、夏場に来てコンディションが落ちています。

 NPBのピッチャーでも、どうしても夏はトレーニング量が落ちがちです。ここでスタミナ切れを起こさないためには、夏前の練習が重要になります。いかに走りこんで、暑さを乗り切る体力を身につけられるか。中村もこの失敗から、学ぶことは多かったはずです。

 現時点では疲労からフォームのバランスが崩れ、いいボールを投げられなくなっています。ここはアドバイスをしながら、一緒に修正に取り組み、調子を取り戻させたいところです。篠田、中村が勝てば、3連戦で最低2勝でき、借金返済へメドが立ちます。

 抑えは三ツ間卓也がプレッシャーのかかるなか、よく頑張っています。ここまでリーグトップの17セーブ。サイドから放る150キロ近い速球が大きな武器です。しかし、さらに上のレベルを狙うなら、ストレートだけでは抑えきれません。既に4敗を喫しているように、一本調子になってやられてしまうところは改善点です。変化球でストライクや空振りをとれる精度を磨くことが求められます。

 監督代行に就任して心掛けているのは、選手たちのモチベーションをいかに高く保つか。独立リーグの選手はミスを引きずりやすく、切り替えに時間がかかる傾向があります。負けが込んだり、結果が出ないと気持ちが落ち込んでしまうのです。

 そのため、「またミスをしたら、どうしよう」とプレーが消極的になってしまいます。
「失敗した時こそ、前を向く」
「やられたら、やり返す」
 プロとしては、このくらいの気持ちの強さを持ってほしいと思っています。

 攻撃にしても、チャンスになればなるほど、ファーストストライクを見逃してしまうのは残念です。ワンストライクを簡単に与えてしまうと、次は誘い球で追い込まれ、自分のバッティングがますますできなくなってしまいます。NPBで活躍しているバッターは好機こそ1球で仕留めています。そのための心構えを含めた準備を石井義人コーチと選手たちには植えつけたいと考えています。

 打線では元NPBの角晃多が打率.333と頑張っていますから、周りを打つ中野邦彦、伊藤彰大がいかにつなげられるかがカギを握ります。最下位とはいえ、首位とはまだ2.5ゲーム差。何とか挽回して上位を目指します。


小林宏之(こばやし・ひろゆき)>:武蔵ヒートベアーズ監督代行
1978年6月4日、埼玉県出身。春日部共栄高を経て、97年にドラフト4位で千葉ロッテに入団。02年にセットアッパーとして1軍に定着し、05年は先発で12勝をあげ、日本一に貢献。以降、3年連続で2ケタ勝利をマークする。06年の第1回WBC、07年の北京五輪アジア予選では日本代表も経験。10年にはクローザーとして29セーブをあげる。FA権を行使し、11年に阪神へ移籍。13年にはロサンゼルス・エンゼルスとマイナー契約。シーズン途中にBCリーグ・群馬へ。14年は信濃でコーチ兼任でプレーする。14年7月、埼玉西武に入団し、同年限りで引退。15年は新規参入した武蔵の投手コーチに就任し、5月から監督代行に昇格。NPBでの通算成績は385試合、75勝74敗29セーブ、1135奪三振、防御率3.57。
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