22日、男子400メートルリレー決勝で、日本(塚原直貴、末續慎吾、高平慎士、朝原宣治)が銅メダルを獲得した。
 21日の予選で米国など強豪国のバトンパスのミスもあり、38秒52で全体の3位で決勝進出を決めた日本は、決勝でも確実なバトンパスを見せると38秒15で3位に入った。男子トラック種目でのメダル獲得は日本初の快挙。
 優勝はジャマイカで、37秒10の世界新記録を樹立。3走を務めたボルトは100、200メートルと合わせて3冠を達成した。
 日本の正確なバトンパスが、快挙を引き寄せた。
 昨年の大阪世界選手権と同じメンバーで挑んだ日本は、1走の塚原が好スタートを切り、末續へバトンをつなぐ。不調が続いていた末續が好位置をキープし、3走の高平へ。コーナーの内側から、男子100、200メートルで世界記録を樹立したボルト(ジャマイカ)が一気に後続との差を広げたが、高平は落ち着いた走りで、アンカーの朝原へバトンを渡す。
 ジャマイカ、トリニダード・トバゴが前に出る中、朝原は3位をキープし、そのままゴールを駆け抜けた。

 不振が続いていた今大会で陸上初のメダル。トラック種目での五輪メダルは、1928年アムステルダム五輪女子800メートルで銀メダルを獲得した人見絹枝以来、80年ぶりの快挙となった。

■塚原直貴選手のコメント
「最高です! 歴史の立役者の1人になれてよかったです。末續さんをめがけてぶっとんでやりました。ここまでもってくるのが不安だったんですけど、必死にくらいつきました」

■末續慎吾選手のコメント
「みんなの力を合わせて、挑んだ。この場に立てて、日本短距離として培った歴史をつなげることができた。厳しい戦いのときもあった。日本短距離は通用しないと言われた時期もあった。僕らだけの勝利だけじゃなくて、日本短距離界の勝利といっていいと思います。これからの競技人生に大きな力となるメダルでした。いやあ、楽しかった」

■高平慎士選手のコメント
「言葉にならないですね。アテネから4年間やってきて、朝原さんと一緒に走れるのが最後かもしれないということで、良い位置で朝原さんにつなげたかった。最後にメダルが出せてよかったです。メダルを目指してやってきた。夢がかなうことを証明できてよかった。去年の大阪でお客さんが1つになって応援してくれたが、今日も熱いものをもって走れた。日本がやってきた歴史を塗り替えられた。お世話になった人たちに感謝の気持ちでいっぱいです」

■朝原宣治選手のコメント
「最高の舞台で、最高に気持ちがよかった。言うことがないくらいに嬉しい。9万人の中で走れて、幸せな空間だった。正直、僕の身体がどこまで持つのか不安もあったし、反面、絶対できるという気持ちと揺れ動いていた。予選でメダルが狙える位置となって、アンカーとして重圧との戦いだった。でも楽しんでやろう、と。みんなでやってきてよかった。今まで一緒に走ってきたすべてのメンバーに感謝したい。(強豪国のミスなど)ラッキーなこともあったが、世界と戦えることは十分証明できた。あきらめずに応援してもらって、すごく力をもらった」


 男子50キロ競歩で、16日に行われた20キロ競歩で過去最高成績の11位に入った山崎勇喜(長谷川体育施設)が7位に入り、この種目で日本勢初の五輪入賞を果たした。 昨夏の大阪世界陸上では入賞争いをしていた終盤に係員の誘導ミスがあり途中棄権扱いとなった。悔しい思いを乗り越え、その後の国内での五輪代表選考レースできっちり結果を残し、再び世界の舞台に立った山崎。

 この日のレースでは10キロまでトップ集団につき、その後は自分のペースを貫いた。45キロ過ぎには5位にあがるなど健闘。その後、後続の選手に抜かれたが、最後まで粘り7位で競技場に戻ると、帽子とサングラスを外し、右手を突き上げてゴールした。タイムは3時間45分47秒だった。

 谷井孝行(佐川急便)は4時間1分37秒で29位だった。

■山崎勇喜選手のコメント
「ランキングでは入賞圏内だったので、入賞しなければいけないという責任感があった。最低限のことはできたと思う。最後まで歩き切れたことにホッとしています。失速の仕方が少なくなってきて、アテネ五輪と比べると力がついたのは感じるが、まだまだ、世界との差は大きい。4年後に向けて、また1から頑張りたいと思います」


 女子1600メートルリレー予選の1組目に出場した日本(久保倉里美、丹野麻美、木田真有、青木沙弥佳)は、3分30秒52で8位となり、決勝進出はならなかった。
 9レーンでスタートした日本は、1走の久保倉が好走し、2走のエース丹野につなげると、丹野は6位につける。だが、3走の木田へのバトンパスの際に最下位の8位に後退。アンカー青木も前を追うが順位は変わらず、シーズンベストのタイムだったが、昨年の大阪世界選手権で出した3分30 秒17の日本記録には惜しくも届かなかった。

■久保倉里美選手のコメント
「日本記録(3分30秒17)を更新することが4人の目標だったので、届かなかったのは残念。それなりの理由があるんだと思う。この舞台で走れて、自分の経験にはなりました」

■丹野麻美選手のコメント
「日本記録を出すこと、(3分)30秒切ることが目標だったので、残念だが、4人の力を出せた。400メートル予選は思うように走れなかったが、今日はある程度納得の走りができた。この経験を今後にしっかり生かしていきたい」

■木田真有選手のコメント
「日本記録に届かなかったので悔しい。こうして五輪の舞台に立って、世界の選手と肩を並べて走ることができた。精一杯走ったが、届かないことが身にしみてわかった。これからもっと力をつけたい。今まで接戦の中でバトンを渡すことがなかった。すべてが新しい経験だった」

■青木沙弥佳選手のコメント
「世界選手権とはまた違い緊張感があった。こういう舞台でのマイルリレーは面白いと思った。記録は残念。もっと向上していきたいと思う。今後はもう少し上に行って、新たな歴史をつくりたい」


 男子1600メートルリレー予選で、日本(安孫子充裕、為末大、堀籠佳宏、成迫健児)は、第2組に出場。出場を予定していたエースの金丸が走ることができず、急きょ、為末が2走に入った。
 4コースでスタートした1走の我孫子は、序盤から積極的に飛ばすが、ラストの100メートルで失速し最下位で2走の為末へバトンパス。為末、3走の堀籠が必死に前を追うが順位は変わらず。
 アンカーの成迫が、最後の直線でギリシャとドミニカ共和国をかわし、3分14秒18の6位でゴール。決勝進出はならなかった。

■安孫子充裕選手のコメント
「僕が流れを作らないといけなかったが、逆に悪い流れをつくってしまった。前半から飛ばすのが僕のスタイル。どこまで通じるか勝負したが、全然ダメだった。最後の100メートルが粘れなくて自分の弱いところだなと実感した」

■為末大選手のコメント
「(走る予定だった)金丸君が足を痛めて、急きょ2走に入った。体調が万全であれば、もうちょっとチームを良い位置に導けたと思うが、不甲斐ないレースで悔しい。(選手交代を言われたのは)30分くらい前。この種目は前回、決勝に残っている。個人のオリンピックはもう終わっているが、リレーだけで北京に来ている選手もいるので、せめてもう少し夢を見させてあげたかった。オリンピックはつらい思いをする選手の方が多いと思うが、このような舞台で走れる機会はそうない。この舞台をよく覚えていてほしいし、もっと上を目指してほしい」

■堀籠佳宏選手のコメント
「もう少し上位にいければよかったが、金丸君のアクシデントもあって、その中で力を合わせて精一杯やれたと思う。ここまで来れたのは僕1人の力ではない。多くの方のおかげでこの舞台に立てたことに感謝したい」

■成迫健児選手のコメント
「ここに行きつくまでに、苦しいことや楽しいこと、いろいろあったが、最後の舞台で走れて幸せ。この舞台で走れたことを誇りに思う。今のままでは世界で戦えないというのもわかった。この五輪を目標にしてきたが、次のステップに向けて頑張りたい。また世界を目指していきたい」