大会最終日(24日)に行われた陸上の男子マラソンは天安門広場をスタートし、国家体育場をゴールとするコースで行われ、ワンジル(ケニア)が2時間6分32秒で優勝した。ハイペースで進んだレースは、終盤まで複数の選手が競り合う展開。残り5キロでワンジルがスパートし、後続を引き離した。日本勢は尾方剛が2時間13分26秒で13位、佐藤敦之が2時間41分8秒で76位だった。
 スタート時点の気温は21度。予想より気温は高くなかったものの、曇天だった女子マラソンとはうってかわって強い日差しが照りつける中、号砲が鳴った。
 
 立ち上がりも女子とは対照的だった。ゆったりとしたペースだった女子とは一転、最初の5キロの入りは1キロ3分を切る14分52秒。細く曲がりくねった天檀公園内のコースにハイペースが重なって、集団はあっという間に縦長になる。日本の2選手は先頭集団内に位置どることができず、後ろから前をうかがうレースとなる。

 10キロ地点は29分25秒とさらにペースが上がり、先頭集団はワンジルらのケニア勢、アスメロンらのエリトリア勢、メルガ(エチオピア)ら8選手に絞られた。驚異的なスピードの前に尾方は35位、佐藤は47位と出遅れる。

 トップを争う選手が1人、2人と脱落する中、レースが大きく動いたのは30キロ手前だった。北京大学の構内に入り、カーブが多くなるところでメルガが前に出る。これをワンジリ、ガリブ(モロッコ)が追いかけ、他の選手は遅れをとる。20キロ地点まで20位台後半をキープしていた尾方は、落ちていく選手をとらえはじめ、20位に順位を上げてきた。

 3選手が激しく争う中、決着がついたのは37キロ付近。給水を終えたタイミングで、ワンジルがギアを上げ、勝負に出る。メルガは、この仕掛けについていけず、粘ったガリブも次第に引き離される。気温が30度近くに上昇し、後続の選手が体力を消耗させる中、ワンジルはペースを緩めることなくレースの行方を決めた。

 最終的には2位・ガリブとの差を約100メートルに広げたワンジルはスタジアムへ入る前に両手を挙げ、勝利を確信。仙台育英高に留学して全国高校駅伝で活躍し、その後はトヨタ自動車九州に在籍していた“日本育ち”のランナーが母国ケニアに金メダルをもたらせた。尾方は35キロで17位とさらに前の選手を抜く粘りをみせ、ラストは13位でゴールした。

■尾方剛選手のコメント
 速い展開になるとは予想していたが、(5キロを)14分台で入られると、ついていくのは難しい。始めにいい位置で走れなかったので、後ろで上げていくしかなかった。ただ、前が見えないと勝負にはならない。何位か分からなかったので、粘って上がるしかなかった。(優勝した)ワンジルは6分台で走って、力の差をみせつけられた。悔しい。入賞でせめて(日本勢の)悪い流れを払拭したかったが、勝負にならなかったのが実感です。

■佐藤敦之選手のコメント
 力を出し切れずに終わったので残念。やることはやったが力がなかった。前半から粘ることができればよかったが、どんなことがあっても走り抜こうと決めていた。走りきれたことは次につながった。76位という順位を受け止めて、ここから1歩1歩、精進していきたい。

■ワンジル選手のコメント
 とてもいい気持ち。調子はまぁまぁだった。自分にはラストスパートする力がないから、あそこ(残り5キロ)で(スパートを)やろうと考えていた。ケニアでは初めての金メダルだから、優勝することだけを考えていた。
 日本では、きつくても我慢、我慢、我慢することを教えられた。今日は完璧でした。(トヨタ自動車九州監督の)森下(広一)さんがオリンピックでは(バルセロナで)2番だったから、1番になれて良かった。