7日、国際親善試合の横浜F・マリノス対バルセロナ(スペイン)が日産スタジアムで行われ、バルセロナが1−0で勝った。ブラジル代表FWロナウジーニョ、フランス代表FWアンリらが先発した豪華布陣のバルセロナは、後半30分、18歳のFWドス・サントスがカメルーン代表FWエトーのスルーパスに抜け出し、決勝点を挙げた。

◇8月7日、日産スタジアム
横浜F・マリノス 0−1 バルセロナ
【得点】
[バ] ドス・サントス(75分)
 世界中のフットボールファンが待ち望んだ瞬間だった。バルセロナの先発は左からエトー、ロナウジーニョ、そして今オフに移籍金2400万ユーロ(約40億円)で加入したアンリが並ぶ3トップ。夢のような豪華布陣が日本で実現した。

「長距離の移動や時差といった不利な条件があった」
 ライカールト監督がそう語ったとおり、バルセロナのエンジンが温まるまでには時間が必要だった。序盤はホームの横浜が主導権を握る。前半18分には、MF山瀬幸の横パスを受けたMF山瀬功がPA外からミドルシュート。左隅に飛んだ無回転のボールをGKビクトル・バルデスが鋭い反応ではじき出した。

 バルサが魅惑のベールを脱いだのは20分が過ぎてから。21分、左サイドのエトーがロナウジーニョとの軽快なワンツーからPAに侵入。30分には、再びロナウジーニョのスルーパスにエトーが鋭く反応し、GK榎本をかわして、ゴールへ流し込んだ。だが、副審の判定はオフサイド。ゴールの喜びに一度は大きな歓声を上げた5万6681人の大観衆からは溜め息が漏れる。

 後半、アンリが退き、夢の3トップは45分限りで終了。だが、アンリの代わりにピッチに入った18歳の新鋭ドス・サントスが魅せる。後半8分、左サイドでロナウジーニョのパスを受けると、そのままPA左に切れ込み、右足で強烈なシュート。GK榎本も動けないほどのコースとスピードだったが、無情にも右ポストを弾いてゴールとはならなかった。

 このプレーを筆頭に、バルセロナは攻めながらもゴールを割ることができない、もどかしい展開が続く。後半12分には、シャビのスルーパスに抜け出したエトーがオフサイドをとられた。際どい判定にエトーも飛び上がって不満の意を表すほどだった。

 だが、後半30分、ついに待望の瞬間が訪れた。ロナウジーニョがヒールパスでつなぎ、エトーがダイレクトでスルーパスを送る。ラインぎりぎりで抜け出したのはドス・サントス。今度は副審も旗を上げない。ドス・サントスは一度右にフェイントをかけ、GKの体勢が左に崩れたとみると、落ち着いて左隅へ流し込む。待ち焦がれた瞬間にスタジアムが大きく揺れた。

 その後、1点を奪われた横浜は山瀬幸を中心に攻勢を強めるが、守りに入ったバルセロナを崩すことができない。結局、バルセロナがドス・サントスの決勝点を守りきって、1−0で勝利を収めた。

<「機能した」3トップも課題残る>

「もう気分は最高だったね。世界的に有名な選手と一緒にプレーができて嬉しかったよ」
 試合後、エトー、アンリと初めて組んだ3トップの感想を訊かれたロナウジーニョは充実の表情だった。ライカールト監督も「3トップは機能したと思う。3人とも非常に偉大な選手だからね。今後、今回のような形で彼らを起用するようなことはあると思う」と手応えを感じた様子。横浜の早野監督も「バルセロナの3トップには本気を出されなくてよかった。本当はもっとすごいはず。個人の力の違いを感じました」と脱帽の様子だった。

 ただ、その豪華布陣でゴールという結果を残せなかったのも事実だ。10本のシュートを放った後半に対して、前半はわずか3本。この3月に腹部の筋肉を断裂して、復帰したばかりのアンリは1本もシュートを打てずに交代を余儀なくされた。

 ライカールト監督は、アンリについて質問が飛ぶと「非常によく戦っていた。ただ、長旅の疲れはあった。それに、故障から戻った場合はプレーを再開するまでに時間は必要。今の調子は当然だと思う」とかばうようなコメント。夢の3トップが完成するまでには時間が必要だ。

 一方で、監督に大きくアピールしたのはMVPに輝いたドス・サントス。後半にピッチに立つと、両チーム最多の7本のシュートを記録して、決勝点を奪った。ライカールト監督も「今日は個人の出来というより、チームがまとまっていたことがよかった」としながらも「(ドス・サントスは)最近、進歩が著しい。プレーの質がよくなっているのは確かだと思う」と目を細めていた。

 当の本人は「僕がなぜ、ロナウジーニョやエトーをさしおいてMVPに選ばれたのかがわからない」といたって謙虚なコメント。地元の記者から「今日の貴方はロナウジーニョやエトーよりフィジカル面がよかったと思いました」と言われると、「今言って頂いたように、U-20の試合を経て現在プレーしているから、フィジカルはすごくいい状態にある。いい形でリーグの開幕に入っていけるよ」と18歳の少年らしく、無邪気に目を輝かせていた。

<バルセロナ 出場選手>
GK
ビクトル・バルデス
⇒ジョルケラ(HT)
DF
ザンブロッタ
テュラム
シウビーニョ
⇒モッタ(65分)
オレゲール
MF
ヤヤ・トゥーレ
シャビ
⇒マルク・クロサス(81分)
イニエスタ
FW
ロナウジーニョ(Cap)
⇒マキシ・ロペス(88分)
エトー
⇒エスケーロ(86分)
アンリ
⇒ドス・サントス(HT)

<横浜F・マリノス 出場選手>
GK
榎本哲也
DF
田中隼磨
栗原勇蔵
松田直樹
⇒那須大亮(HT)
小宮山尊信
MF
マルケス
⇒吉田孝行(HT)
河合竜二
⇒上野良治(59分)
山瀬功治(Cap)
⇒狩野健太(72分)
山瀬幸宏
FW
大島秀夫
⇒鈴木隆行(62分)
坂田大輔
⇒清水範久(72分)