6日、南アフリカW杯アジア最終予選の第1戦がバーレーンのナショナル・スタジアムで行われ、日本代表はバーレーン代表と対戦した。前半18分にMF中村俊輔がFKから先制し、その後も効果的に追加点をあげるが、終了間際に立て続けに失点し、3−2で辛勝した。課題の残る内容ながらも、アウェーで貴重な勝ち点3を手にした。

  終了間際に失点を重ね、課題残す(バーレーン・マナマ)
日本代表 3−2 バーレーン代表
【得点】
[日] 中村俊輔(18分)、遠藤保仁(43分)、中村憲剛(85分)
[バ] サルマン・イサ(87分)、オウンゴール(88分)
 南アフリカW杯への長い道程が始まった。初戦の相手は、3月に行なわれた3次予選のアウェー戦で敗れているバーレーンだ。アウェーとはいえ、大切な初戦は必ず勝ち点を奪いとりたいところだ。

 8月20日に行なわれた親善試合には不在だった欧州組のMF中村俊輔(セルティック)、MF松井大輔(サンテティエンヌ)、MF長谷部誠(ヴォルフスブルグ)が先発に名を連ねた。トップ下にMF田中達也(浦和)、ワントップにFW玉田圭司(名古屋)という攻撃陣で試合に臨んだ。

 試合は立ち上がりから日本ペースで試合は進んだ。中東の暑さを感じさせない軽い動きで、チーム全体がプレスをかけ、バーレーンからボールを奪う。前半10分、高い位置からボールを奪った右SB内田篤人(鹿島)がオーバーラップからクロスを上げ、PA内ゴール正面で田中達也がトラップから反転し、左足でシュート。惜しくもGKにキャッチされたが、この試合での日本の狙いが現れた場面だった。

 圧倒的にボールをキープし、相手の攻撃に落ち着いて対処していた日本に、欲しかった先制点が入ったのは前半18分だった。

 右45度、ゴールから約30mの地点でのフリーキック。キッカーは中村だ。バーレーンは中村のフリーキックの威力を十分に承知してか、全員がPA内に戻りFKに備えた。人数をかけ、分厚い壁を作っていたが、絶好の位置からゴールを狙った中村には関係のないことだった。左足から放たれた低く早いボールは、守備陣の壁の横を抜け、ゴール左のサイドネットにするどく突き刺さった。のどから手が出るほど欲しかった先制点は、日本が世界に誇る左足から生み出された。

 先制直後には、バーレーンがカウンターを中心に鋭い攻撃を見せる。前半20分には、MFサルマン・イサの強烈なミドルシュートが日本ゴールを襲うが、GK楢崎正剛(名古屋)が好セーブをみせ得点を与えなかった。35分ころまではバーレーンのリズムで試合が進み、タテへの突破を試みるが、日本の最終ラインが落ち着いて対処し、決定機を作らせず再び日本に流れがくるのを待った。

 そして、前半42分に日本はまたもやセットプレーから2点目をあげる。

 左サイドのPA少し外で、玉田がファウルを受けFKをもらう。キッカーの遠藤は、自らも直接狙えるところだったが、サインプレーでグラウンダーのボールをゴール前に入れる。そこに走りこんだのはフリーの中村だ。左足で放ったシュートにバーレーンDFが思わず手を出しPKを獲得。蹴るのは3次予選でも冷静にPKを決めている遠藤。緊張することのない男が、今回もGKの動きをしっかりと見極め、ゴール右隅にボールを流し込み2−0となった。このまま前半は終了し、2点リードで試合を折り返す。

 後半立ち上がりは、バーレーンが前かかり気味で攻撃を仕掛ける。コーナーキックから幾度か危ないシーンを迎えたが、楢崎がバーレーン攻撃陣の前に立ちはだかり、ゴールを与えることはなかった。暑さからか日本の運動量が落ちたが、堅守でピンチをことごとく救う動きを見せた。

 後半の苦しい時間帯で日本へ一気に流れが傾いたのは、後半28分だった。バーレーンはモハメド・ハサンがこの日、2回目の警告を受け退場になる。一人多くなった状況で落ち着いてボールを回し、時間を使いながら相手のスタミナを奪っていく。ここで岡田武史監督は、中村憲剛(川崎F)を投入し、さらにポゼッションを高めていく。疲れの見せ始めたバーレーンは反撃の糸口を見つけることが徐々にできなくなっていった。

 ボールをキープしながら攻撃の機会を狙い、後半31分には波状攻撃から長谷部、田中達也が連続でシュートを放つが2本ともゴールバーにはじかれる。決定機でなかなか点が入らずもどかしいシーンが続く。

 しかしながら、後半40分に中村憲剛のミドルシュートが決まり3−0となる。10人の相手に3点差をつけ、試合を決定的なものにした。

 ところが、ここから日本は立て続けに2点を奪われてしまう。1点目は右サイドからの早いクロスボールに対するケアの意識が薄く、GKとディフェンスラインの間にクロスをあげられての失点。2点目は田中マルクス闘莉王(浦和)には珍しい落ち着きのないプレーで、楢崎との連係ミスからオウンゴールを献上する。

 楽勝ムードから一転、ロスタイムを含めた終了間際の5分強は勝ち点3を守るため、必死の守備をしいられた。最終的にはどうにか1点を守り抜き、アウェーで勝ちを収めることができたが、試合のまとめ方には不満の残る内容となった。

 試合後のインタビューで岡田監督は「勝ち点3が目標だったので、それは素直に嬉しい。(終了間際の2失点には)サッカーは恐ろしいと感じた。3点目が入ったところでベンチも含めてホッとしたところがあったことは確かで、大いに反省しなければならない。しかし、勝ったということで選手たちをほめてあげたい。次はホームなので、勝ち点3をまたしっかり取りにいきたい」とまずは敵地での勝利を評価した。そして、反省点も踏まえたうえで、次戦への意気込みを語った。

 中村俊輔選手は「最後の2点はいらなかった。これが最終予選の怖いところ。アウェーで勝ち点3を取れたのはよかった。2失点はこれからの課題。問題が起きたら試合の中で修正することができなければいけない。交代選手の動きの重要性などをチーム全体で確認しなければいけない」と、勝ち点3を得た喜びよりも今後のチームへの課題を口にしていた。

 最後に課題をみせた守備陣とは対照的に、攻撃陣では田中達也の動きのよさが目立った。玉田との相性もよく、前線でチャンスメイクが出来ていた。これまでの試合で攻め手をなかなか作れなかったFW陣だが、このゲームで目指すべき方向をある程度、具現化することができた。あとは彼らが得点を挙げることが重要だろう。田中自らも試合後に「流れの中から自分で得点をあげることができなかったのは残念」と話したが、今日のようなプレーが続けば、得点は自然とついてくるだろう。今後の戦いでもいい動きを期待させるような内容だった。FW争いで玉田とともに一歩抜け出した印象がある。

 守備のミスが試合終盤で立て続けに出ながらも、アウェーで勝ったことは大きい。改めて守備の連係を確認する機会ができたということで、今日の2失点は前向きに捉えていきたいところだ。

 最終予選第2戦は10月15日(水)に埼玉スタジアムで行われるウズベキスタン戦だ。初めてのホームゲームだけに、確実に勝ち点3を手にしたい。初戦に続き、連勝を決めることができれば、南アフリカへの道は一気に開けてくるだろう。

<日本代表出場メンバー>

GK
楢崎正剛
DF
中澤佑二
田中マルクス闘莉王
内田篤人
阿部勇樹
MF
遠藤保仁
長谷部誠
→今野泰幸(83分)
松井大輔
→中村憲剛(70分)
中村俊輔
田中達也
FW
玉田圭司
→佐藤寿人(77分)