福岡ソフトバンクホークスの王貞治監督が23日、今シーズン限りで辞任すると発表した。王監督は1995年よりダイエー(当時)の指揮を執り、現在の12球団監督の中では最長となる14年目のシーズンを終えようとしている。ソフトバンクは同日、北海道日本ハムに敗れ、61勝71敗3分と11年ぶりのシーズン負け越しが決定。クライマックスシリーズ出場も厳しい状況で、24日に行われる本拠地最終戦を前に自ら退くことを決断した。
 84年より巨人の監督を5年間務めた王監督は、95年に前身のダイエーの指揮官に就任。当初はBクラスから抜け出せずにいたが、監督就任と前後して入団した小久保裕紀、城島健司(現マリナーズ)、井口資仁(現フィリーズ)、松中信彦らが主力に成長。99年にダイエーとして初のリーグ制覇と日本一に導いた。00年にはリーグ連覇、03年にも日本一を達成。九州に本拠地を移したホークスを人気、実力ともにトップクラスの球団に押し上げた。

 06年にはWBCの代表監督にも就任。苦しみながらも、そのカリスマ性でイチローら日本人メジャーリーガーの加わった代表チームをまとめあげ、初代世界一の栄光を手にした。しかし、同年7月、胃ガンの手術とリハビリのため、残りのシーズンを休養。07年シーズンから復帰したが、試合前に点滴治療を受けるなど、決して体調は万全ではなかった。

 チーム自体も03年の日本一以降、レギュラーシーズンを1位通過しながら、2年連続のプレーオフ敗退。昨季は3位に終わった。井口、城島ら黄金時代を支えた中心メンバーがチームを去り、勝利と世代交代の両方を求められる状況になっていた。

 今シーズンは「ラストシーズンのつもり」と宣言。5年ぶりのリーグ制覇と日本一に最後の勝負を賭け、チームは開幕5連勝と好スタートを切った。しかし、エースの斉藤和巳をケガで欠く中、勝ち星は思うように伸びなかった。「(発言は)ヘンなプレッシャーを与えてしまった。14年間で一番の反省点」。辞任会見で指揮官は自らの発言を責めた。

 結局、首位・埼玉西武の独走を許し、クライマックスシリーズ争いでも9月に入って連敗を重ねて失速した。「選手たちは監督の顔色をみている。夏場、私の体調が良くなかった。9月は私自身の戦いが選手たちに乗り移ってしまった」。最下位・東北楽天とのゲーム差も0.5(23日現在)。球団側は続投要請の意向だったが、「勝負の中に身を置いているものは結果責任」と辞意を固めた。

「プロ野球に入って50年目。いい人生を歩ませてもらった。68歳になりながら心をときめかせて野球をやれるのは幸せだった」
 会見では自らの野球人生をしみじみと振り返る場面もあった。選手、そして監督として、長きにわたり「世界の王」は球界に圧倒的な存在感を示してきた。王監督は来春のWBC代表監督就任も固辞している。そのユニホーム姿をグラウンドで見られるのは、本当にあとわずかとなりそうだ。