◇11月3日 さいたま市駒場スタジアム 16,724人
 浦和レッズ 1−0 愛媛FC
【得点】
[浦和] ポンテ(95分)

 試合終了のホイッスルが鳴った瞬間に巻き起こったのはレッズサポーターの歓声ではなかった。スタジアムを揺るがすような大ブーイング。そして、愛媛イレブンに寄せられた拍手だった。“駒場の奇跡”こそ再現できなかったが、愛媛は120分間、J1のトップクラブと互角の戦いを繰り広げた。

 2−0で勝利した昨年の試合は終始、主導権を握られっぱなしだった愛媛。1年ぶりの再戦も雪辱を期す浦和が攻め込んでくるかと思われた。ところが立ち上がり、ピッチ上に広がったのは赤色ではなくオレンジ色だった。

 前半2分、ファーストシュートをFW内村圭宏が放つと、愛媛が前を向く時間が増える。「個人の力では打開できない。相手に構えられる前に(サイドに)広げたり、DFラインを下げさせたりしていこう」。望月一仁監督の狙い通り、愛媛は最終ラインを高く保ち、中盤でボールを奪って、素早く展開するサッカーをみせる。前半27分には左サイドから細かくつないで、MF青野大介が中へ。ゴール前でFW大木勉が頭を出したが、ボールはバーの上を通過した。

「今年の浦和はボランチにボールが収まっていない。そこでボールを奪っていいボールを出させなかった」
 キャプテンの金守智哉が明かしたように、守備陣の浦和対策も徹底されていた。浦和は公式戦2カ月ぶりの先発出場となったFW田中達也がチャンスを演出する場面はあったものの、らしからぬミスも目立ち、愛媛の守りを崩せない。

 それでも33分、MFポンテのコーナーキックから競り合いとなり、こぼれたところをゴール右から田中達がシュート。ネットがゆれ、スタンドの一角に詰め掛けた愛媛サポーターをヒヤリとさせる。だが、これはサイドネットに救われた。ならばと前半34分にはMF細貝萌、後半39分にはMF平川忠亮がミドルシュートを放つも得点には至らず。「個人の能力では勝てないが、運動量を増やしてチームとして戦えた」(MF赤井秀一)という愛媛が0−0で試合を折り返す。

「(浦和は)思っていたよりスキがあった。いい試合の入り方でうまく0−0で抑えた。プラン通り」(金守)と、手ごたえをつかんで後半に臨んだ愛媛。しかし、折り返しの45分は防戦一方のゲームを強いられる。「バランスを崩された時に引いてしまった。押し込まれた時にもう一歩、前に出てほしかった」(望月監督)。愛媛は高い位置でラインをキープできなくなり、DF田中マルクス闘莉王が前線に顔を出す場面が増えてくる。

 後半10分には、その闘莉王の縦パスにFWエジミウソンがゴール左から強烈なシュート。GK川北裕介が必死のセービングをみせるが、こぼれ球を細貝が押し込む。今度はDF高杉亮太が足を出してなんとかクリア。後半17分にも闘莉王のシュートがサイドネットを揺らすなど、愛媛には危ない時間が続いた。

 局面を打開したい愛媛だが、「押し込まれた時に、どう攻めていくかはっきりしなかった」(高杉)と攻撃の糸口を見出せない。ようやく訪れた得点機は後半36分。途中出場したFW横山拓也がスルーパスを送り込む。抜け出したのは赤井。しかし、「DFラインが気になって一瞬止まってしまった」ため、タイミングがずれ、キックは飛び出した相手GKに抑えこまれた。

 ケリをつけたい浦和は後半終了間際、ゴール前のエジミウソンに2度、ボールを供給したが、守りきって0−0。愛媛にとってはJ2昇格初年度(06年)の4回戦、横浜F・マリノス戦以来となる延長戦に突入した。

 そして延長前半5分、ひとつのプレーが明暗を分ける。前線でボールを追いかけていた闘莉王がPA内で愛媛DFともみ合って倒れる。後ろから押した格好になってしまったのは高杉だった。「後ろから(他の選手が)来ていると思って、前へ出たらぶつかってしまった」。故意でないことをアピールしたが、無情にも判定はPK。キッカーのポンテは冷静に右足でゴールに突き刺し、ついに均衡は破られた。

 不運な形で失点した愛媛だが、まだツキは残っていた。前半11分、金守と細貝が接触した際に、細貝がエキサイト。乱暴を働き、一発レッドで退場となる。数的優位を活かしたい愛媛は延長後半5分、DF関根永悟が右サイドを突破。ゴール前にはオレンジのユニホームが押し寄せる。しかし、「ニアに出すか、マイナスに折り返すか迷った」という関根が折り返したスペースには受け手がいなかった。

 さらに延長後半13分、コーナーキックを得た愛媛は、右サイドからスルスルと上がってきた赤井へボールを出す。完全にフリーとなった赤井は狙いすましてループ気味のシュート。イメージ通りに弧を描いたボールが相手GKの頭上を襲う。だが次の瞬間、ボールはバーに跳ね返る乾いた音を残して転がった。

 巡ってきたチャンスを逃し、120分走り続けた選手たちに、もうゴールを決める力は残っていなかった。試合はそのままタイムアップ。「選手は頑張って、90分間一生懸命戦ってくれた。延長になって動けなくなった。1つ上のカテゴリーと戦うには力がなかった」(望月監督)。昨年の対戦より内容は良かった愛媛だが、結果は惜敗に終わった。

 リーグ14位と低迷が続いたシーズン、今年も天皇杯ではJ1クラブを苦しめた。「チームとしてやりたいことがはっきりしてきた。どことやっても戦える自信がある」(赤井)。「組織で個人のしっかり能力をつぶせば戦えると感じた」(DF三上卓哉)。出場した選手たちは誰もが胸を張った。望月監督も「チームがまとまり始めて、攻守で狙っていることができてきた」と納得の表情をみせていた。大多数の浦和サポーターに負けじと声援を飛ばした愛媛サポーターも「望月エヒメ」のコールで選手たちを讃えた。

 これで今シーズンの残り試合はリーグ戦の4試合。「点をとれば勝っていた」と敗戦を悔やんだ内村も「今季は連勝がない。全部勝ちたい」と前を向いた。駒場の善戦を来季につなげるための戦いは、5日後のホーム、ロアッソ熊本戦からスタートする。

<両チームメンバー>
愛媛FC
GK  1 川北裕介
DF 13 関根永悟
    3 金守智哉
   28 高杉亮太
   14 三上卓哉
MF 27 青野大介 → 10 宮原裕司(104分)
   16 赤井秀一
   22 横谷繁 
   18 江後賢一
FW  8 内村圭宏 → 24 横山拓也(77分)
   20 大木勉 → 19 笹垣亮介(延長開始)

浦和レッズ
GK 23 都築龍太 
DF  2 坪井慶介
    4 田中マルクス闘莉王
   20 堀之内聖
MF  6 山田暢久
   13 鈴木啓太 → 22 阿部勇樹(77分)
    3 細貝萌
   14 平川忠亮
   10 ポンテ
FW 11 田中達也 → 15 エスクデロ・セルヒオ(68分)
   17 エジミウソン → DF 12 堤俊輔(114分)

<第2回太陽石油カップ愛媛FCサッカー大会開催!>

【日時】 11月8日(土) 9:30〜開会式
【場所】 愛媛県総合運動公園補助競技場(天然芝グラウンド)
【参加チーム】 8チーム(小学6年生以下で1チーム16人)

【方式】 試合は12分ハーフ(1試合24分)、8人制を採用し、前後半でメンバー総入替のトーナメント方式
【参加費】 無料
【特典】
・参加選手にロアッソ熊本戦C席チケット(当日13時〜試合開始)をプレゼント
・太陽石油よりオリジナルTシャツをプレゼント
・優勝チーム、準優勝には、トロフィー・メダル授与

【主催】 株式会社愛媛FC
【協賛】 太陽石油株式会社


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