12日、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)決勝第2戦が豪・アデレード行われ、ガンバ大阪がアデレード・ユナイテッドを2−0で下し、初めてアジアクラブ王者の座に就いた。現行ACLの開催以降、Jリーグ勢の優勝は昨年の浦和レッズに続き、2年連続2度目となる。

 2戦合計5−0で圧勝、クラブW杯進出を決める(アデレード)
アデレード・ユナイテッド 0−2 ガンバ大阪
【得点】
[G大阪]ルーカス(4分、14分)
 決勝第1戦で3−0と完勝しているガンバが優勝するためには、第2戦で勝つか引き分け、または2点差以内の負けが必要条件だった。優位な立場で乗り込む敵地での戦いだが、後がない相手の激しい攻撃にさらされる可能性のあり、厳しいものになることも予想された。

 ガンバのフォーメーションは第1戦と同様にルーカスをワントップに置いた攻撃的布陣だ。西野朗監督は「ガンバらしい攻撃的なサッカーでチャンピオンになることが目標」と第1戦後に口にしていた通り、3点のアドバンテージがあっても決して守りには入らない構えを見せた。

 試合が始まると、アデレードが前線から激しいプレッシャーをかけてくる。ガンバDFが後方で回すボールに対しても執拗に追いかけ、積極的にボールを奪う姿勢を見せた。しかしこの戦い方には、ガンバはしっかりと対策を立てていた。相手DFラインの裏を突くことに神経を集中させ、虎視眈々とその機会をうかがっていた。そして早い時間帯で狙っていた形が生まれる。

 前半4分に前線でボールを奪うと、MF明神智和からフワリとしたクロスがゴール前に上がる。アデレードDFに一旦クリアされるが、そのボールをMF佐々木勇人が拾い、DFを一人かわしてシュート。GKが弾いたところにFWルーカスが詰めてゴールネットを揺らした。前がかり気味の相手に対し、一気に人数をかけて上がり、得点を奪った。貴重なアウェーゴールを序盤に奪い、流れは完全にガンバに傾く。出足の鋭かったアデレードイレブンだが、この得点で一気に追いつめられた。

 さらにガンバは14分に、ピッチ中央からMF二川孝広が左サイドへスルーパスを通し、そこへ再びルーカスが走りこむ。GKと1対1になり、冷静に右足でゴールへ流し込んで、2−0とした。間延びしたアデレード守備陣はガンバの中盤に大きなスペースを与えており、二川がフリーでボールを受けた時には、ルーカスが絶妙のタイミングでDFラインの背後めがけて走り出していた。この時点で勝負ありという印象だった。

 これで2戦合計5−0。アウェーゴールの差も考慮すると、アデレードは6点を取らなければならず、試合開始15分でほぼ大勢は決まってしまった。ガンバの2点目がゴールに吸い込まれた瞬間、15000人を収容する真っ赤に染まったハインドマーシュスタジアムは沈黙に包まれた。しかし、右ゴール裏に陣取った青いサポーターの一角だけはお祭り騒ぎ。関西から遥々、南半球まで飛んできた彼らには堪らない展開となった。

 ホームの大声援を受け、1点でも反撃したいアデレードだったが、この日のガンバDFは山口智を中心に高い集中力を保ち、相手に得点を与えない。今大会では多くの得点を奪った攻撃陣がクローズアップされたが、彼らを後ろで支えた守備陣の踏ん張りも素晴らしかった。グループリーグから12戦戦って負けなし。攻守とも充実した働きを見せたACLだった。堅守はこの日も変わらず、ホームスタジアムを埋めたアデレードサポーターから喜びの声があがることはなく、2−0で試合終了。決勝戦を2連勝で終え、ガンバが初めてアジアの頂に到達した。

 試合後、西野監督と選手、スタッフはピッチの上で全員が肩を組み、ピッチの上で喜びを表現した。今季は夏場の1カ月半、一つも勝ち星が挙げられずに苦しんだ。決勝トーナメントの始まった9月には、監督の口から「現状では厳しい戦いになる」という悲観的な言葉しか出てこなかった。そこからたった3カ月。アジア王者に到達するまで、クラブが立ち直ったのは、チームが一丸になったからこそ。まるでジェットコースターのような浮き沈みの激しいシーズンを過ごしているが、アデレードで彼らが喜びを分かち合った場面は、間違いなく今年のハイライトシーンとなった。

 ACL決勝が現行のホームアンドアウェー方式で行われるのは今年まで。09年の決勝は欧州チャンピオンズリーグと同じように中立地での1発勝負で行われ、来年の決勝の舞台は東京・国立競技場となる。日本からはJリーグの上位3クラブと天皇杯チャンピオンクラブ、計4クラブが出場しアジアの強豪と覇を競う。

 ガンバは現在Jリーグで7位。4位までは勝ち点差4となっており、残り3節でこの差を逆転するか、天皇杯王者にならなければ来季のACLに出場できない。連覇を目指すためにも国内での巻き返しに期待したい。

 さらにアジアチャンピオンとして、12月に日本で開催されるFIFAクラブワールドカップの舞台も待っている。14日(日)に豊田スタジアムで行われる2回戦から登場し、オセアニア代表・ワイタケレとアジア2位のアデレード・ユナイテッドの勝者と対戦する。昨年は浦和レッズが準決勝まで進んだ同大会。世界の強豪相手にガンバが、日本サッカーがどこまで通用するか。見逃せない戦いになりそうだ。