クラブ創立は1878年。鉄道労働者によって結成されたクラブは1902年に現在の名称であるマンチェスター・ユナイテッドとなった。1957年、58年とサー・マット・バスビーに率いられたクラブはリーグ連覇を飾り黄金期を迎える。しかし翌年の59年、ミュンヘン空港での航空機事故で主力8人の選手を含む23名が死亡する「ミュンヘンの悲劇」が起こる。この事故から奇跡的に生還したバスビーがクラブ再建に着手し、サー・ボビー・チャールトン、ジョージ・ベストという伝説のプレーヤーを中心としたチームで68年にイングランドのクラブとして始めて欧州王者の座に就いた。
 86年にはサー・アレックス・ファーガソンが監督に就任。デイビッド・ベッカム、ライアン・ギグス、ポール・スコールズら若手を育て上げ、99年には3冠を達成(UEFAチャンピオンズリーグ、プレミアリーグ、FAカップ)した。その年のトヨタカップで来日を果たし、パルメイラス(ブラジル)を1−0で下し世界王者の称号を手にしている。今回は9年ぶりのクラブ世界一の座に就くべく日本にやってきた。

 07−08シーズンの欧州チャンピオンズリーグを席巻したのはイングランドだった。ベスト4のうち3クラブは英・プレミアリーグのクラブ。5月21日にモスクワで行われた決勝戦ではマンチェスター・U対チェルシーという史上初のイングランド対決となった。試合は1−1のままPK戦に入り、GKエドウィン・ファンデルサールの好セーブでマンチェスター・Uが辛くも逃げ切り、ビッグイヤーを手にしている。

 ウェイン・ルーニー、ディミタール・ベルバトフ、ライアン・ギグス、リオ・ファーディナンド、ファンデルサール……。クラブには世界を代表するスター選手が多数在籍するが、一人を挙げるとすればやはりクリスティアーノ・ロナウドということになるだろう。

 07−08シーズンプレミアリーグ得点王、欧州チャンピオンズリーグ得点王、そしてヨーロッパ最優秀選手に贈られるバロンドールをも手中にした。08年だけでも9つの個人タイトルを獲得している。バロンドール受賞者がクラブW杯で来日するのは、06年ロナウジーニョ(バルセロナ)、07年カカ(ACミラン)に続き3年連続。彼はジョージ・ベスト、エリック・カントナ、デイビッド・ベッカムといったマンチェスター・Uのエースのみに与えられる背番号7を引き継ぐ男だ。

 C・ロナウドの最大の武器は高いオールラウンド能力。サッカー選手に求められる素質であるドリブル、パス、ヘディング、シュート。全てにおいて世界トップクラスだ。中でも必見なのはフリーキック。独特のトゥーキックから放たれる無回転シュートは驚異的だ。ペナルティエリア付近でファールをもらうことがあれば、私たちは数秒後に素晴らしいゴールを目にすることができるだろう。

 英・プレミアリーグ08−09シーズンでは序盤に出遅れたものの、現在は3位と好位置につけている。主力選手の中にケガ人はなく今大会はベストメンバーで臨む。また、22年間クラブを率いるファーガソン監督が「3年以内に引退」と明言しており、今回は世界一が狙える最後のチャンスかもしれない。それだけに選手たちのクラブW杯に対する意気込みも思いのほか強い。本場の“赤い悪魔”が日本を舞台に最高のパフォーマンスを見せてくれる日はまもなくやってくる。