18日、「クラブワールドカップ2008」準決勝が横浜国際競技場で行なわれ、欧州代表のマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)がアジア王者のガンバ大阪を5−3で下し、決勝進出を決めた。マンUは前半にクリスティアーノ・ロナルドらの得点で2点をリードするが、後半に入ってG大阪も山崎雅人がゴールを決めて反撃。マンUは途中出場のウェイン・ルーニーが2得点をあげて突き放すも、G大阪は終盤に入って遠藤保仁がPKを決めるなど、欧州王者相手に3点を奪う健闘をみせた。

◇12月18日、横浜
ガンバ大阪 3−5 マンチェスター・ユナイテッド
【得点】
[ガ] 山崎雅人(73分)、遠藤保仁(85分)、橋本英郎(89分)
[マ] ネマニャ・ビディッチ(28分)、クリスティアーノ・ロナウド(44分)、ウェイン・ルーニー(75分、79分)、ダレン・フレッチャー(78分)
 6万7千人の大観衆を集めた横浜国際競技場にマンチェスター・ユナイテッドの登場した瞬間、スタジアムは大歓声に包まれた。無数のフラッシュが光る中、アジア王者ガンバ大阪との試合はキックオフされた。

 試合の立ち上がりから積極的な姿勢を見せたのはガンバだった。中盤の遠藤保仁を普段よりも下がり目に配置、前線の選手たちが高い位置からマンUにプレッシャーをかける。試合後の会見でサー・アレックス・ファーガソン監督は「遠藤があの位置にいることは誤算だった」とコメント。名将の裏をかいたガンバは前半11分、遠藤からのパスにFW播戸竜二が飛び出し決定機を作る。シュートは惜しくもGKファンデルサールにセーブされたが、得点の可能性は前半の早い時間から感じられた。

 しかし相手は世界有数の実力を持つマンU。そう簡単には試合を運ばせてくれない。徐々にペースを掴みだすと、前半20分すぎからは一方的なマンUペースに。右サイドからFWクリスティアーノ・ロナウドが再三突破を試みクロスボールを上げる。相対するDF安田理大も必死の守りを見せるが、数多くのチャンスが右サイドから生まれた。

 そして迎えた前半27分。右サイドコーナーキックからのボールにヘディングで合わせたのはDFネマニャ・ビディッチだ。ガンバDFのマークをうまく外すと高い打点から強烈なシュートを放ちゴールネットを揺らした。それまで互角と言わないまでも、流れの中で守備の破綻がなかったガンバにとって、セットプレーでの失点は重いダメージとなった。

 ガンバに同じようなシーンが訪れたのは前半ロスタイム。またも右サイド、FWライアン・ギグスが上げたコーナーキックに合わせたのは、C・ロナウドだ。ビディッチと同じように相手マークを完全に振り切り、高いヘディングで得点を挙げた。ここで前半が終了、2−0とマンUが2点をリードして折り返した。内容的にはそこまでの差がある展開ではなかっただけに、ガンバにとってはセットプレーでの2失点が悔やまれた。

 後半が始まると、マンUは前線のカルロス・テベス、ギグス、C・ロナウドの3人を中心に攻撃を組み立てる。この3人が前を向いてゴールに向かう迫力は世界でも随一。ガンバ守備陣は何度か決定的なシーンを作られたが、GK藤ヶ谷陽介を中心に懸命の守りを見せ、マンUに追加点を与えない。

 猛攻に耐えてきたガンバに待望の1点目が入ったのは後半29分だった。カウンターから右サイドに流れたボールをMF橋本英郎がゴール前に折り返す。そこへ走りこんだのはFW山崎雅人。初戦での佐々木勇人、二川孝広の負傷で出場機会を得た山崎が、橋本のパスにすばやく反応し、低い弾道のシュートを放つ。シュートはゴール右隅に決まり、1−2となる。この得点でスタジアムに足を運んだガンバサポーターが元気を取り戻すように思われた。

 しかしこの直後、再びマンUファンが歓喜の声を上げた。ピッチに投入されたばかりのFWウェイン・ルーニーがファーストタッチでガンバのゴールネットを揺らす。MFダレン・フレッチャーの縦パスに反応したルーニーは、マークについていたDF中澤聡太をトラップすると同時に一瞬でかわし、左足でシュートを放つ。ボールは糸を引くようにガンバゴールに吸い込まれ、決定的な3点目が入った。ファーガソン監督が「あの1点が相手に決定的なダメージを与えた。スペースに入る動きがよかった。彼ならではの得点だ」と手放しで絶賛した得点だった。

 その後、5分間でマンUはフレッチャー、ルーニーの得点で1−5とした。シンプルな早いパス回しに対応できなかったガンバはあっという間に突き放されてしまう。

 一方、攻撃の形は作るもののなかなか追加点が挙げられなかったガンバはDFガリー・ネビルのハンドでPKを獲得、これをMF遠藤保仁が確実に決める。さらに試合終了間際のロスタイム、FWルーカスのロングパスに反応し前線へ飛び出した橋本が右足を振りぬき豪快なゴールを挙げる。後半だけでマンU相手に3得点を奪い、攻撃サッカーを身上とするガンバのスタイルを世界に示すことはできた。

 試合はこのまま終了し、5−3でマンチェスター・ユナイテッドの勝利。両クラブ合計8点が入った打ち合いは欧州王者に軍配が上がった。

 試合後、ガンバ西野朗監督は憮然とした表情で会見に現れた。「ガンバらしい時間帯があったが、前半の2失点と1点を返してからの3点目が残念だった。シンプルな攻撃に対応しきれていなかった」と敗因を語った。「面白い試合だったと何人かに言ってもらったけど、こちらは負けている。5失点で面白いと言われてしまうのは厳しい」とも口にした。

 一方で「選手たちは真っ向から勝負をして3点取ったのだからよくやったと思う。これ以上は望めないかもしれない。攻撃的なスタイルを見せることはできた。この経験は財産として大きいと思う」と強敵相手に臆することなく挑み続けた選手たちを称えた。

 決勝進出を決めたファーガソン監督は「ガンバは素晴らしいチーム。日本サッカーの進歩が感じられた。5−3という結果には満足だ。お客さんもお金を払う価値のある試合を見ただろう」と準決勝を振り返った。日曜日の試合については「昨日の試合を見て相手を研究している。南米のチームは守備が堅い。難しい試合になるが、今日の試合での反省点を修正できるようにしたい」と語った。

 今年のクラブW杯も残すところあと2試合。決勝は今年も南米と欧州の争いとなる。クラブ世界一に輝くのは堅守のリガ・デ・キトか、強力な破壊力を持つマンチェスター・ユナイテッドか。注目の決勝は21日(日)19:30にキックオフされる。


<今後のスケジュール>

【3位決定戦】
◇12月21日(日)
・北中米カリブ海代表パチューカ(メキシコ) × アジア代表ガンバ大阪(日本)

【決勝】
◇12月21日(日)
・南米代表リガ・デ・キト(エクアドル) × 欧州代表マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)