◇12月23日 埼玉スタジアム2002 8,484人
川崎フロンターレ 2−0 愛媛FC【得点】
[川崎] 大橋(43分)、ジュニーニョ(60分)
期待した“3度目”は起きなかった。浦和レッズ、横浜FCとJ1クラブを連破し、迎えた相手は川崎フロンターレ。過去、川崎とは99年、04年と天皇杯で2度対戦したが、いずれも敗れている。“3度目”の挑戦で“3度目”の打倒J1――。しかし、今季ACLで決勝トーナメントにも進んだ強豪にその実力をみせつけられた。
立ち上がりから川崎は自慢の攻撃力をみせた。今季J1得点王のジュニーニョが1人で突破し、チャンスをつくる。しかし、金星をあげた浦和戦同様、最初の時間帯をしのぐと、愛媛はリズムをつかみはじめる。「相手の攻撃をスローダウンさせるためにもサイドの高い位置を使って、バイタルエリアに引き出す」。望月一仁監督が試合前に指示を出した通り、左サイドを中心に相手陣内に攻め入った。
最大のチャンスは前半11分。MF江後賢一が左サイド深くから折り返し気味にクロスを入れると、前線に詰めていたFW田中俊也がダイレクトで右足を振りぬく。これは相手GKにはじかれたものの、「サイドの使い方がうまかった」と相手DFの伊藤宏樹(新居浜市出身)を驚かせた。
だが、J1相手に自分たちのサッカーができる時間帯はそう長くなかった。「飛ばしてくるときいていた。90分は持たない」。日本代表MF中村憲剛は冷静にJ2・10位のクラブの実力を見ていた。川崎は中盤を制圧して愛媛の攻撃を封じ、再びリズムを取り戻す。
ただ、愛媛も最終ラインが崩れることはなく、相手に決定機を与えない。両者、無得点の入らないまま、前半終了が近づいた。「前半0−0で行ければ、後半、事故が起こるかもしれない」。望月監督はじめ、誰もがそう期待を抱いた43分のことだった。
相手クロスをヘッドでクリアしたボールが、ミドルの位置にフリーでポジションをとっていた川崎のMF大橋正博の足元へおさまる。ゴール前に下がっていた愛媛DF陣は慌ててボールを奪いにかかるが間に合わない。次の瞬間、右足から放たれたボールは弧を描き、ゴール右隅に吸い込まれた。一瞬のスキを突いた鮮やかな先制弾だった。
「(J1とJ2の)差を感じた」。ゴールネットを揺らされたGK川北裕介は舌を巻いた。「一生懸命守っていたが、スペースが空いてしまった」。DF金守智哉は唇をかんだ。チャンスを確実にものにするJ1のレベルをみせられ、愛媛のゲームプランは狂いをみせる。
「(中村)憲剛が自分のポジションを守りすぎて機能しなかった。前線と中盤の連携を修正した」(川崎・関塚隆監督)
「(前半は)前との距離が空いていた。相手陣地でボールを奪ってコンパクトに攻めるようにした」(川崎・中村)
後半は、問題点を修正した川崎のペース。いきなりジュニーニョが1対1の場面をつくるなど、スカイブルーの軍団が中盤でボールを奪い、縦横無尽に攻めあがる。
次から次へと相手のシュートをセーブしながら川北はJ2との違いを肌で感じていた。
「J1の選手はボールをもらう位置がいい。もらう前の段階でしっかり視野を確保して、どのプレーを選択をすべきかわかっている。J2はボールを持っていても狙いが分からない選手が多いのに……」
それでも相手の波状攻撃をなんとかしのいで愛媛はカウンターで同点を狙う。だが、次にゴールネットを揺らしたのはフロンターレだった。後半20分、PA内でFWジュニーニョを倒して金守がこの日2枚目のイエローカードで退場。ジュニーニョはPKを冷静に決め、勝負はついた。
10人となった愛媛に2点をはね返す力はない。その後は川崎の猛攻をしのぎ、ゼロに抑えるのが精一杯。以後は大きなチャンスをつくることもできず、愛媛の快進撃は埼玉の地で終わりを告げた。
「フィニッシュの部分で差が出た」(金守)
「相手のカウンターを防ぐ意味でもシュートで終わらなくてはいけなかった。向こうはきちんとシュートで攻撃が終わっていた」(MF宮原裕司)
「まずフィジカルが違う。オフ返上で体をつくらなくては」(川北)
「1対1で負けないよう、いかにやるか」(DF星野真悟)
試合後、選手からは反省点が口々に飛び出した。確かにどれも今の愛媛には足りない。J1との試合の中で、来季の課題をイレブンは身をもって感じることができた。
ただ、反省ばかりでもない。「愛媛は勢いだけではない。しっかりとしたサッカーを組織でやってくるという印象を受けた」。敵将の関塚監督も四国からきたチームを評価した。「個の力はなくても組織の力で強いクラブとサッカーはできる。小さな街のクラブでも頑張れば、大きなクラブとやれることが示せたのでは」。望月監督も2年目のラストゲームでようやく手ごたえを掴むことができた。
来季はロッソ熊本とFC岐阜が参入し、J2は15チームの戦いになる。クラブの補強費が限られている中、残念ながら、このゲームを最後に愛媛を去る選手もいる。新たなシーズンは、また1からチームをつくらなくてはならない。しかし、ピッチに立った誰もが語ったように「J1と3試合できたことが自信になった」ことは事実だ。
敗れたにもかかわらず、スタンドの一角をオレンジに染めたサポーターは健闘をたたえて拍手を送り、応援歌を歌って選手たちを送り出した。
〜何度も何度も立ち上がってみせる。あきらめはしないと誓ったのだから〜
愛媛FCの新たなシーズンは、この敗戦から立ち上がることで幕を開ける。
<両チームメンバー>
愛媛FCGK 35 川北裕介
DF 3 近藤徹志
5 星野真悟
10 金守智哉
15 森脇良太
MF 16 赤井秀一
18 江後賢一 → 17 大山俊輔(62分)
26 内村圭宏 → FW 33 ジョジマール(76分)
30 宮原裕司
27 青野大介
FW 11 田中俊也 → 9 三木良太(84分)
川崎フロンターレGK 1 川島永嗣
DF 2 伊藤宏樹
5 箕輪義信 → 4 井川祐輔(68分)
13 寺田周平
MF 14 中村憲剛
19 森勇介
24 大橋正博 → 6 河村嵩大(63分)
26 村上和弘
35 谷口博之
FW 10 ジュニーニョ
16 鄭大世 → MF 11 マギヌン(76分)
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