WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)2次ラウンドが日本時間15日からスタートする。1次ラウンドを勝ち抜いた8チームが2組に分かれ、ダブル・エリミネーション方式でそれぞれ準決勝に進む2カ国を決定する。日本は1組に入り、16日から韓国、キューバ、メキシコとベスト4入りをかけて争う。まずは初戦でサムライジャパンの前に立ちふさがるキューバの戦力を探ってみた。
(写真:MAX164キロを誇る若き左腕チャップマン)
キューバ 3戦11発&チーム打率.394! 脅威の破壊力

 1次ラウンドのチーム打率.394は参加チームトップ、3試合でホームランは11本、1試合平均9.7得点……。高地でボールがよく飛ぶメキシコが舞台だったとはいえ、キューバの打線はエンジン全開だった。中軸を打つフレデリック・セペダは南アフリカ戦での2打席連発を含む3ホーマー、ユリエスキ・グリエルも2本塁打を含む5打点と結果が出ている。下位を打つヨエニス・セスペデスも打率.538と当たっており、警戒が必要だ。

 単に打つだけのみならず、回を追うごとに集中力が増すのが彼らの特徴だ。1次ラウンドでもオーストラリア戦、メキシコ戦とリードを許す場面があったが、直後に反撃し、逆転に結びつけた。特にオーストラリア戦は2点ビハインドで終盤を迎えながら、7回に2死無走者から1点を返し、8回には代打のヨスバニー・ペラザが2ランを放って試合をひっくり返した。前回のWBC決勝でも日本は5点リードを奪ったが、最終回を迎えた時点では1点差に詰め寄られていた(最終的には10−6で勝利)。いくら点差をつけても安心はできない。

 投手陣は38歳のベテラン右腕ノルヘ・ルイス・ベラが先発の軸。昨夏の北京五輪でも初戦、日本相手に6回2失点と好投した。このWBCでも初戦(南アフリカ戦)に先発し、6回無失点とほぼ完璧な投球をみせた。順当に行けば日本戦の先発が予想される。

 しかし、左打者が多い日本のラインアップを考えれば、左腕のアルベルティン・チャップマンが先発マウンドに上がる可能性もある。最速164キロといわれる豪速球の持ち主は、オーストラリア戦で4回1失点。実際に160キロを超えるストレートを武器に7三振を奪った。制球に難はあるが、ボールに勢いがあるため、見極めは容易ではない。

 ただ、この大会には球数制限がある(2次ラウンドでは85球)。どんなに好投をみせても先発5、6回が限界だ。残りのイニングを託すリリーフ陣に今回のキューバは弱みがある。抑え役のベテラン右腕、ペドロ・ルイス・ラソはオーストラリア戦で1死しか奪えず2失点。“ポスト・ラソ”との呼び声も高いブラディミール・ガルシアも点差の離れた状況とはいえ、南アフリカ相手に失点を許した。また13日のメキシコ戦では、これまで出場機会のなかった投手が次々登板したものの、いずれも失点、または得点圏に走者を背負う内容だった。リリーフ勝負に持ち込めば、日本に分がある。

 そのためにも日本は早めに先発投手をマウンドから降ろしたい。たとえ完全攻略はできなくても、じっくりと待って球数を放らせるのもひとつの手だ。相手に爆発力があるだけに、チャンスがあれば序盤から小技も絡めて1点でも2点でも先行する展開に持ち込みたい。

 先発が確実な松坂大輔の役割も重要だ。アテネ五輪、第1回WBC決勝と、近年キューバを破った2試合は松坂が先発のマウンドにいた。強打の相手を完璧に封じるのは難しいだろうが、昨年、メジャーリーグで効果的に使ったシュートを交えて、うまくボール球で打ち取りたい。また同決勝で2番手として登板し、守備の乱れで3点を失いながら3イニングを投げた渡辺俊介の起用も効果的だろう。フィデル・カストロ前議長が日本の戦いぶりを批判したようにキューバはかなりサムライジャパンを意識している。初戦ではあるが、ここが連覇への大きな関門だ。総力戦のつもりで勝ちに行きたい。