WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)2次ラウンド1組が16日、スタートし、日本代表はキューバ代表を6−0で下した。日本は先発の松坂大輔が6回無失点とゲームをつくり、打線もイチローを除く先発8人が安打を放つなどつながりをみせて快勝した。次戦は同日メキシコを破った韓国と準決勝進出をかけて対戦する。

 4投手でキューバを8安打に封じる
日本代表     6 = 003110001
キューバ代表  0 = 000000000
(日)○松坂−岩隈−馬原−藤川
(キ)●チャップマン−N.ゴンザレス−ヒメネス−Y.ゴンサレス−マヤ−ウラシア−ガルシア
(写真:前回大会からWBC5連勝の松坂)
 初回の攻防に完勝の要因があった。
 まずは攻撃。キューバの先発はMAX164キロといわれる速球を持つ左腕のアルベルティン・チャップマンだった。2死後、3番の青木宣親が四球を選ぶと、すかさず盗塁をしかけた。クイックが不得意なチャップマンの弱点を見越した攻撃だ。得点にはつながらなかったものの、これが若きサウスポーのリズムを乱した。

 2回、先頭の小笠原道大にカウント2−0から4球連続ボールで四球を与える。続く内川聖一にも追い込んでからファールで粘られて歩かせた。日本にとっては、この2人のランナーがいずれも牽制でタッチアウトになるまずい走塁があったが、足攻に対し、チャップマンは明らかにマウンド上でイライラしていた。球数は必然的に多くなり、2回を終えた時点で41球。2次ラウンドは85球の球数制限があるため、速球左腕を早い回でマウンドから引きずり降ろせる展開に持ち込めたことは大きかった。

 こうなると日本のペースだ。4回、先頭の城島健司がチーム初ヒットを放つと、1次ラウンドで音なしだった岩村明憲もレフト前安打で続く。イチローの送りバントは失敗に終わったが、初スタメンの2番・片岡易之もレフト前へはじき返す。いずれもストライクをとりにきたボールをとらえたものだった。キューバベンチは、チャップマンを早々と諦めた。

 急遽代わったノルベルト・ゴンザレスはいきなり暴投で1点をプレゼント。日本もすかさず青木のタイムリー、村田修一の犠飛とたたみかけ、3点を先行した。さらに4、5回と1点ずつを追加し、試合の流れは大きく日本へ傾いた。

 投げては松坂の内角攻めが効いた。初回、先頭打者のヨエニス・セスペデスをシュートで詰まらせ、サードゴロに打ち取る。続くミッチェル・エンリケス、フレデリック・セペダには内寄りのボールを連打されたが、完璧にとらえた当たりではなかった。

 1死1、2塁で4番はオーストラリア戦で代打逆転2ランを放っているヨスバニ・ペラザ。ここでもシュートが冴える。カウント1−0からの投じた1球は力ないレフトへの飛球になった。さらに5番の強打者ユリエスキ・グリエルにはインコースへのスライダーで意識付け。最後は外で勝負してセンターへの平凡なフライに仕留めた。

 この投球術はメジャーリーグで磨きをかけたものだ。昨季レッドソックスで18勝をあげ、進化した右腕に内角を突かれ、さすがのキューバ打線も思い切って踏み込めない。2回以降は、逆にアウトコースのボールで打ち取られるケースが目立った。結局9回を終えて、キューバの長打は2塁打1本のみ。3戦11発と抜群の破壊力をみせてきたチームに持ち味を出させなかった。

 連続の牽制アウト、バント失敗、ファールフライの落球が2度……。大一番の緊張感からか、振り返ってみれば日本にも珍しく攻守にミスが続出した。だが、それをカバーするだけのキューバ対策を徹底して最大の難関を突破できた。連覇への道のりはまだ長い。しかし、サムライジャパンは大きな1勝をつかんだことは間違いない。

○松坂
 1次ラウンドはよくない投球で心配をかけたが、終わった時点で監督から「頭頼むぞ」と言われていた。今日のためにしっかり準備できた。もう、このラウンドは投げられないが、次に進んで、今日みたいな投球ができたらいいと思う。

(石田洋之)