WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)決勝ラウンドは日本時間23日、日本と米国が決勝進出をかけてゲームを行う。前回大会では両者が2次ラウンドで激突し、日本は誤審騒動もあって4−5でサヨナラ負けを喫した。しかし、今大会に限って言えば戦力、チーム状態ともに日本は米国を上回る。先発の松坂大輔がメジャーの舞台でいつも対戦している米国の強打者を封じ込めれば、試合は日本ペースになりそうだ。
(写真:WBC負けなしの右腕に大きな期待がかかる)
 米国はケガ人が続出している。3年前の日本戦でソロを放ったチッパー・ジョーンズや昨季ア・リーグMVPのダスティン・ペドロイア、今大会4番を打っていたケビン・ユーキリスが本番に入って戦線を離脱した。4番は昨季33本塁打をマークしたデイビッド・ライトが座りそうだが、ケン・グリフィーJr.、アレックス・ロドリゲス、デレク・リーらそうそうたるスタメンだった前回大会と比べれば打線に怖さはない。

 とはいえ2次ラウンドまでのチーム打率は.303と高く、得点は7試合で46点と4強の中ではナンバーワンだ。ブライアン・ロバーツ、ジミー・ロリンズと俊足のスイッチヒッターが上位には名を連ねる。彼らを塁に出すと厄介だ。振り回してくるのかと思いきや、日韓を上回る38四球を選んでおり、走者をためて大量点を奪う攻撃をみせている。日本は先頭打者への四球が失点につながるケースが目立つ。不用意にバッターを歩かせることは避けたい。

 キーマンをひとりあげるとすれば、2番のデレク・ジーターだろう。松坂には打率.333、2本塁打と相性がいい。ただ、今大会は打率.292で打点も本塁打もゼロとエンジンがかかっていない。日本はジーターを眠らせたままにしておけば、打線を寸断できる。

 米国最大の弱点は投手力だ。チーム防御率6.18はベスト4に進んだ中でダントツのワースト。被本塁打10と痛い一発を浴びる場面も多かった。7試合中5試合で先制を許し、序盤からビハインドを背負う苦しい展開になっている。直前に昨季39セーブのジョー・ネイサン、同32セーブのB.J.ライアンが代表を外れた影響でブルペンも安定感がない。日本のトップクラスのバッターをもってすれば、ある程度の得点は見込めるだろう。

 日本戦先発はロイ・オズワルト。速球と緩い変化球のコンビネーションを武器にする右腕だ。昨年はアストロズで17勝をあげている。今大会は2試合に先発して防御率3.52。2次ラウンドのオランダ戦では4回無失点だったが、貧打の相手にヒット5本を打たれた。決して内容は良くない。

 しかも日本のトップバッター・イチローはオズワルトを7打数4安打と打ち込んでいる。前回の米国戦ではイチローが先頭打者アーチを描き、流れを呼び込んだ。メジャーリーグを代表する安打製造機が第1打席からフル稼働すれば、日本のリズムで試合ができそうだ。

 また左打者が多いサムライジャパンにとって、右腕の先発はありがたい。主砲・村田修一の離脱は確かに痛いが、代役に状態のいい左の川崎宗則を起用できる。足のあるバッターを入れることで、機動力を使った多彩な攻撃も可能だ。勝負どころでは緊急招集の栗原健太を使ってみてもおもしろい。

 松坂がしっかりゲームをつくり、主導権を握れば、かなりの確率で勝ちゲームに持ち込めるはずだ。最悪の場合はダルビッシュ有や杉内俊哉といった力のある投手を早めにつぎ込めばいい。韓国はベネズエラを大差で破って、いい雰囲気で決勝進出を決めた。5度目のライバル対決、そして最終決戦へ――。是が非でも野球大国の厚い壁を打ち破りたい。

(石田洋之)