WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)決勝は日本時間24日、ロサンゼルスのドジャー・スタジアムで日本と韓国の決勝が行われる。両者は今大会5度目の顔合わせで、これまでの対戦成績は2勝2敗。世界一をかけた最終決戦が、まさに日韓の雌雄を決する舞台となる。日本打線は2戦2敗の先発・奉重根をいかに攻略するか。試合のポイントはここに尽きる。
(写真:メジャーリーグでも3年間で7勝をあげた奉)
 これまで奉にやられているパターンは一貫している。緩急でうまくタイミングをはずされているのだ。140キロ台後半のストレートと緩いチェンジアップ、カーブ、スライダー。このコンビネーションで、日本の打者は的を絞りきれていない。勝負どころと見るや、ストレートでぐいぐい押してくる強気の投球にも差し込まれている。

 しかし、さすがに3度目となれば、球筋やタイミングもわかってくる。1回目と2回目の対戦では、ヒット数は変わらなかったものの、選んだ四球はゼロから3つに増えた。ボールを見極められるようになった証拠だ。

 ただ、2戦目はボールを見すぎるあまり、簡単にストライクを見逃すケースが目についた。過去2度の対戦を振り返ると、外野に飛んだヒットはすべて変化球を打ち返したもの。変化球は時折、甘いコースに入ってくる。準決勝の米国戦ではファーストストライクを積極的に振ったことが集中打につながった。打てるボールなら、どんどんバットを出していいだろう。

 攻略のカギを握るのは、奉からヒットを放っている城島健司や中島裕之ら右打者だ。城島はこの際、思い切ってクリーンアップを任せてもいい。そしてサムライジャパンの最終兵器として栗原健太(写真)もスタメンで起用したい。栗原は昨季の対左投手の打率は.331。代表落ち以降、カープに戻ってのオープン戦は25打数8安打、打率.320、2本塁打とバットは振れている。緊急招集だけに他の代表選手と比べれば、韓国が持っているデータも多くないだろう。速球に振り負けないパワーがある点も好材料だ。初出場となった米国戦では代打で三振に倒れたが、全球フルスイングができていた。栗原の一撃がサムライジャパンを頂点に導くかもしれない。

 日本が先発マウンドを託すのは岩隈久志だ。1次ラウンドの韓国戦では奉に投げ負けたものの、5回3分の1を1失点と好投した。負ければ敗退のプレッシャーがあった2次ラウンドのキューバ戦でも6回を投げて5安打無失点。今大会の防御率は0.73で、サムライジャパンでもっとも安定しているスターターと言っていい。

 1点こそ取られたが、右打者の内に食い込むツーシームや、フォークボールに韓国打線は手を焼いていた。丁寧に低めを突く持ち味を出せば、大量失点することは考えにくい。唯一、気をつけるとすればイニングの入り方だ。韓国戦の失点の場面では、先頭打者への四球が命取りになった。キューバ戦では毎回のように走者を背負ったものの、すべて2死からの出塁だったことが失点ゼロを生んだ。韓国の打者は粘り強いが、あまり慎重になりすぎるのは良くない。

 ここまで勝ち上がってきたチームだけあって、日本も韓国も投打のバランスは非常にいい。日本はダルビッシュ有、左の杉内俊哉など、先発でも通用する投手がブルペンに控える。右の涌井秀章、左の山口鉄也も短いイニングながら中継ぎで役割を果たしてきた。

 韓国も本格派右腕の鄭現旭、下手投げの鄭大ヒョンとタイプの異なるリリーフがここまで無失点と磐石だ。準決勝のベネズエラ戦同様、左打者に対しては先発左腕の柳賢振をつぎ込んでくるだろう。そして抑えにはおなじみ林昌勇がいる。リリーフ勝負になれば、お互い簡単に点は奪えないとみていい。

 打線も両チームとも上り調子だ。日本はトップバッターのイチローが3試合連続ヒット。1次ラウンドでは音無しだった岩村明憲も2次ラウンド以降は打率5割と好調だ。ケガで離脱した村田修一の代わりに、準決勝でサードに入った川崎宗則が2安打と活躍するなど、誰が試合に出てもいい状態になっている。

 対する韓国も、唯一のメジャーリーガー秋信守が準決勝で3ランを放ち、乗ってきた。体調を崩していた主砲の李大浩も、その試合では大きな当たりを飛ばし、ライトへの流し打ちもみせた。4番の金泰均も含め、中軸打者の破壊力は一枚上手。警戒が必要だ。

 いずれにしても決勝にふさわしい見ごたえのあるゲームになるのは間違いないだろう。2次ラウンドの韓国戦前に原辰徳監督が語っていたように「1番大事なのは先取点」なのは言うまでもない。果たして「2度あることは3度ある」のか、「3度目の正直」になるのか――。日本としてはもちろん、後者であってほしいところだ。

(石田洋之)