WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)連覇の興奮冷めやらぬ4月3日、プロ野球はセ・パ両リーグが同時開幕する。昨季のセ・リーグは巨人が最大13ゲーム差をひっくり返し、大逆転優勝を飾った。今季はV9以来の3連覇を狙う。果たして144試合の長いペナントレースを勝ち抜くのはどのチームか? そしてクライマックス・シリーズに進出するのは? 当HP編集長の二宮清純は戦力充実の巨人を1位、広島を新球場効果で2位に入ると予想した。
(写真:世界一から日本一へ? 巨人・原監督)
★二宮清純予想★
1.巨人
2.広島
3.東京ヤクルト
4.中日
5.阪神
6.横浜

 巨人は投打ともに戦力が抜きん出ており、地力が違う。しいてウィークポイントをあげるとすれば先発投手か。セス・グライシンガーや内海哲也といったあたりにアクシデントが起これば、波乱があるかもしれない。

 広島は広くなった新球場がアドバンテージになる。投手も野手も若く伸び盛りの選手が出てきた。昨季、熾烈な3位争いを経験したことも大きい。彼らが新しい舞台で花開けば、おもしろい戦いができる。

 ヤクルトも若手が出てきた。特に由規は2年目の飛躍が楽しみだ。WBCで活躍した青木宣親も新しいチームリーダーとして期待がもてる。上位浮上のカギを握るのは外国人。打者では4番候補のジェイミー・デントナ、投手では韓国人左腕の李恵践の出来がポイントになる。

 中日は上位に予想したいところだが、ウッズ、中村紀洋、川上憲伸といった投打の柱の穴は、簡単には埋まらない。抑えの岩瀬仁紀の勤続疲労もそろそろ気になるところだ。ただ、オープン戦好調だった藤井淳志など大化けしそうな選手もいる。侮れない存在である。

 阪神は左腕の岩田稔の戦線離脱が痛い。先発陣がやや手薄で、セットアッパーのジェフ・ウィリアムス、抑えの藤川球児までつなげるか不安だ。真弓明信新監督にとって、チームを掌握するのに苦労する1年になりそう。手腕を発揮できるのは来季以降になるだろう。

 横浜も主砲・村田修一の故障が大きく響く。投手陣に絶対的な存在がおらず、女房役だった相川亮二をFAで失った。期待より不安のほうが大きい開幕だ。

★スポーツコミュニケーションズ予想★
1.巨人
2.東京ヤクルト
3.中日
4.阪神
5.広島
6.横浜

 巨人は目立たないながらも、きっちりと補強をした。投手陣では先発要員のディッキー・ゴンザレス(元ヤクルト)、セットアッパーに北海道日本ハムからマイケル中村を獲得。野手ではメジャー通算1532安打の実績を持つエドガルド・アルフォンゾがテスト入団した。3年連続優勝に向けて死角はない。

 打線は3番・小笠原道大、4番アレックス・ラミレス、5番・李承ヨプのクリーンアップにアルフォンゾ、阿部慎之助と長打が打てるメンバーが並ぶ。腰痛で2軍スタートの高橋由伸の不在を全く感じさせないオーダーだ。トップバッターの鈴木尚広、日本ハムから移籍した工藤隆人など足の使える選手も揃え、バランスがいい。

 上原浩治が抜けた先発陣もセス・グライシンガー、内海哲也、高橋尚成の3本柱は揺るぎがない。4番手以降のスターターが流動的な面はあるが、東野峻、木佐貫洋、西村健太朗、栂野雅史と候補は多い。昨季はスタートでつまづきながら、一気に巻き返し、トップでゴールした。もし開幕をうまく乗り切れば、そのまま独走する可能性もある。

 巨人を追う2番手は阪神、中日、広島、東京ヤクルトがほぼ横一線とみていい。その中で順位を上げそうなのがヤクルトだ。何より正捕手の相川亮二をFAで補強したことが大きい。古田敦也の引退後、不安定だった扇の要がかちっと固まり、課題が解消された。
 投手陣も故障に泣かされていた右腕の川島亮が順調な調整ぶり。石川雅規、館山昌平に続く3本目の柱となりそうだ。ここに若い由規が続き、ある程度の勝ちは計算できる。

 昨季はリーグワーストタイの本塁打数に終わり、迫力不足だった打線も新外国人のジェイミー・デントナがオープン戦で4本塁打を放ち、期待が持てる。アーロン・ガイエルも5本塁打と好調だ。12球団トップの148盗塁を決めた機動力にパワーが加わり、イヤらしい打線になりそうだ。

 中日と阪神はチームが過渡期に入り、今季に勝負をかける体制ではない。中日はタイロン・ウッズが抜け、昨季リーグワーストだった得点力がさらに落ち込むのは必至。藤井淳志や新人の野本圭ら若い芽に期待がかかるが、シーズン通じての活躍となると未知数だ。守り勝つ野球にあって、荒木雅博、井端弘和の二遊間コンビが万全の状態でない点も気になる。

 阪神は久保田智之、岩田稔、矢野輝弘とバッテリーに故障者が多い。今季41歳になる正捕手・矢野の後継育成は大きなテーマだっただけに、この機会にチャンスをつかむ若手が出てくるかに注目したい。先発投手も岩田の離脱で計算が立つのは安藤優也と下柳剛くらい。ロッテから移籍した久保康友、復活を目指す福原忍らの頑張りが上位進出には必要不可欠だ。打線は新外国人のケビン・メンチが加わり、迫力が増した。3番から5番にまわった新井貴浩が、どれだけアーチを描けるかもポイントになる。

 広島には昨季、追い風が吹いていた。まず、五輪で夏場に他球団の主力が抜けた。そして、市民球場ラストイヤーでファンの後押しも大きかった。しかし、今年はそれがない。両翼が広がった新球場を生かすためには、いかに機動力野球を徹底するかにかかる。赤松真人、東出輝裕、天谷宗一郎の俊足トリオが昨季12〜13個だった盗塁を倍にできればおもしろい。横浜から移籍したベテラン石井琢朗が元気で、それに若手が呼応すればAクラスに手が届く。

 横浜は残念ながら、すべてにおいて苦しい。投打に戦力不足なのはもちろん、球団関係者より開幕前から身売りの噂が出るようでは勝つ体制は整わない。希望の星は松本啓二朗、細山田武史の早大ルーキーコンビ。2人で新人王を争うような成績を残せば、チームが活性化する。若い投手たちは、ローテ入り確実な球界最年長投手・工藤公康の奮闘を刺激にしてほしい。

★セ・リーグ開幕カード★ ( )内は先発予想

・巨人(グライシンガー)×広島(ルイス) 東京ドーム 18時
・中日(吉見一起)×横浜(三浦大輔) ナゴヤドーム 18時
・阪神(安藤優也)×東京ヤクルト(石川雅規) 京セラドーム 18時