四国・九州アイランドリーグは4日、5年目のシーズンが開幕する。昨年に続き、6球団で前後期合わせて80試合のリーグ戦を戦う。各球団ともチームの顔ぶれは大きく変わっており、どこが勝ってもおかしくない状況だ。激戦を勝ち抜き、最後に笑うのはどの球団か? そして、NPB行きの切符をつかむのは誰か? 各チームの戦力を分析してみたい。

(写真:愛媛の開幕投手・川西)
香川オリーブガイナーズ
★08年成績
前期 26勝10敗4分 1位
後期 20勝16敗4分 3位

 リーグ3連覇に貢献した堂上隼人(福岡ソフトバンク)、丈武(東北楽天)がNPB入りを果たし、チームは大きく変わろうとしている。堂上が扇の要として存在感を示していた正捕手の座には2年目の西森将司がつく。またルーキーの恩田康夫(野田ベースボールクラブ)も評価が高い。台湾人捕手のチャン・チェンシェンは「打撃は基礎ができている」(西田真二監督)とDHでの起用になりそう。内野には5年目をむかえる智勝や国本和俊、外野にはキャプテンの洋輔が入り、守備面での不安はない。

 塚本浩二(東京ヤクルト)、松尾晃雅(引退)が抜けた投手陣は、昨季途中入団ながら防御率1.95と安定していた福田岳洋に大きな期待がかかる。加えて5年目の橋本亮馬、3年目の高尾健太、サウスポーの松居伊貴らがローテーションに入る予定だ。抑えはMAX152キロの速球を誇る上野啓輔(レンジャーズ傘下)。巨人から復帰した深沢和帆は、本来の投球を取り戻すことが先になりそうだ。「攻撃力がダウンするのは否めない。投手力で優勝を勝ちとる」と岡本克道新コーチは意気込む。「育成元年」と西田監督がスローガンを掲げる今シーズン、当然、目標は育てながら勝つことだ。

愛媛マンダリンパイレーツ
★08年成績
前期 18勝17敗5分 4位
後期 22勝13敗5分 1位

「投打のバランスは、過去5年間でもっともいい状態でシーズンに臨めそう」
 キャンプ中から沖泰司監督は手ごたえを感じていた。昨年の後期Vで選手たちが自信をつけ、半数以上のメンバーが抜けたにもかかわらず、むしろ戦力はアップしている印象だ。香川の連覇を止める最右翼とみていい。投手では2年目の18歳右腕・篠原慎平の進化が楽しみだ。140キロ超の速球は魅力的でNPBのスカウトも注目している。他にも実績充分の浦川大輔が福岡から復帰し、右サイドハンドの能登原将(西濃運輸)が新たに加わるなど、個性的なメンバーが揃った。

 投高打低だった昨季と比べれば攻撃力は格段にアップした。まずは球団初の新外国人・文相勲。「大振りせず、ミートに徹して、どんな球にも対応できる」(沖監督)打撃はオープン戦でホームランを放つなど結果を残した。近藤幸志郎(松山大)と鈴木快(青山学院大)と和製大砲候補も2人獲得し、相手にとってはイヤな打線となりそう。「今季は23名と少数精鋭で臨むため、怖いのはケガだけ」。故障者が相次ぎ、指揮官の心配が的中している点が唯一の不安材料だ。

高知ファイティングドッグス
★08年成績
前期 22勝16敗2分 2位
後期 22勝15敗3分 2位

 打線の破壊力は6球団でナンバーワンだろう。ベネズエラからやってきたカラバイヨは埼玉西武との交流試合で2ランを含む5打点をマークするなど、頼りになる助っ人だ。中村龍央、中平大輔、呉武烈と脇を固めるバッターにもパワーがある。また「NPBでも充分通用するレベル」と定岡智秋監督が認める西本泰承(奈良産業大)は走攻守3拍子揃った逸材。昨季の盗塁王・YAMASHINとのコンビで相手をかき回し、一発のあるカラバイヨで仕留めるのが理想の得点パターンになるだろう。

 一方、投手陣では昨季最多勝(17勝)の西川徹哉(関西独立リーグ・神戸)、最多セーブ(22セーブ)&最優秀防御率(1.05)の上里田光正が抜けた穴は埋まったといいがたい。先発では15勝をあげた野原慎二郎、ベネズエラからやってきたメドラーノに続く投手が必要だ。定岡監督はキーマンとして地元出身の山中智貴をあげる。「昨季、31試合に登板したことで、マウンド度胸が徐々についてきた。秋の練習ではシーズン中には数回しかなかったような素晴らしい投球をバンバン見せてくれた」。2年目の成長を指揮官は楽しみにしている。武田大輔(阪南大)と升田大助(三重中京大中退)の地元出身のルーキーコンビも安定感があり、登板機会は増えそうだ。

福岡レッドワーブラーズ
★08年成績
前期 20勝16敗4分 3位
後期 20勝17敗3分 4位

 昨季は新規参入ながら勝率5割超の成績をおさめ、金無英(福岡ソフトバンク)をNPBに送り込むことに成功した。2年目でチームの完成度はさらに高まっており、優勝を充分狙える位置にいる。投手陣では角野雅俊のクローザー転向がポイント。「三振を狙って、スカウトにアピールしてほしい」との森山良二監督の試みは成功するか。角野がはまれば、セットアッパーのサウスポー大澤亮と終盤の計算が立つ。先発には徳島から移籍した渡邊隆洋、2年目の森辰夫、西村拓也と3本柱が決定。サイドスローの徳永雄哉、中田卓宏もリリーバーとして使える。

 打線は西村悟、中村真崇、荒川大輔のクリーンアップが充実。昨季、首位打者に輝いた西村はヘッドを速く走らせることをテーマにさらなる高みを目指す。一発のある新加入の三国慶太(青山学院大)も中軸を打てる力があり、層が厚くなった。また同じく新人の増田康弘(東京農大生物産業学部)はチーム一の俊足。「目指すはスモールベースボール」と語る森山監督にとって、レギュラー定着を望む選手のひとりだ。チームスローガンは「夢は叶う」。チームとして独立リーグ日本一、個人としてはドラフト指名を目指し、80試合を戦い抜く。

長崎セインツ
★08年成績
前期  8勝24敗8分 6位
後期 18勝21敗1分 5位

 昨季は前期で監督を解任するなど、残念ながら戦う体制が整わなかった。今季は長冨浩志監督を招き、心機一転、シーズンに臨む。「投手の立場からしても、一発のある打線は怖い。長打力のある打線にしたい」。新監督の方針の下、BCリーグから根鈴雄次、末次峰明(元新潟)とスラッガーを獲得。オープン戦でも広島2軍に8−1と快勝するなど、打線は活発だ。

 投手陣は途中から監督代行も務めた前田勝宏が抜け、2年目を迎える選手たちのレベルアップが望まれる。オーストラリアリーグに派遣されていた酒井大介、速球が武器の19歳右腕・土田瑞起らが柱になってほしい。米マイナーリーグでもプレーしていた上村(かみむら)聡一はサイド気味のフォームから投げ込む速球が武器。投手登録は7人と絶対数が不足しているため、全員が戦力として機能しないと苦しくなる。

徳島インディゴソックス
★08年成績
前期 11勝22敗7分 5位
後期  9勝29敗2分 6位

 ここ3年で5回の最下位。下位からの脱却がまずは最大の目標だ。堀江賢治新監督の下、23選手中13名がルーキーとチームを一新して巻き返しをはかる。攻撃ではリーグ2位の盗塁数だった機動力を重視。トライアウトで俊足の選手を多く獲得した。その中から外野手の神谷厚毅(名城大)、猪澤海(関西メディカルスポーツ学院)が上位に座り、打線を引っ張る形になりそうだ。クリーンアップには本塁打、打点王の実績を持つ山本健士が福岡から移籍してきた。

 投手陣では抑えに竹原俊介を起用。加藤博人新コーチの指導の下、サイドから右打者の内をえぐるシュート系のボールを効果的に使い、“アイランドリーグの高津臣吾”を目指す。先発はカープドミニカアカデミーから派遣されたソリアーノ、新人の大川学史のローテ入りが決定。開幕投手に指名された大川は「まっスラになったり、まっシューになったり、微妙に変化する」(加藤コーチ)クセ球が持ち味。オリックス2軍との交流試合でも先発で好投し、実力を示した。ただ、その他の投手の起用法についてはまだ固まっていない。「現時点では先発が完投してくれるのがベスト」と明かす加藤コーチが、いかにピッチングスタッフの適材適所を見極められるか。MAX147キロ右腕の弦本悠希(大阪商業大中退)ら磨けば光る素材は少なくない。


<4月4日(土)の予定> ( )内は予告先発
佐世保野球場       長崎(藤岡)−福岡(渡邊) 13時
蔵本運動公園       徳島(大川)−愛媛(川西) 13時
サーパススタジアム    香川(高尾)−高知(野原) 18時


次の100年へ。太陽石油から、SOLATOはじまります。[/color][/size]