昨年、北京五輪で悲願の金メダルに輝き、一躍人気スポーツとなった女子ソフトボール。しかし、2012年のロンドン五輪では正式種目から外されることが決定している。オリンピックはソフトボーラーたちの最大の目標であり、その夢舞台の存在こそが競技の発展を下支えしてきたといっても過言ではない。北京五輪以降、日本ソフトボール協会では五輪復帰を目指し、さまざまな取り組みを行なっている。国内リーグの開幕戦もその一環だった。昨季までは全国の各会場で行なわれていたが、今季は2日間にわたって全カードを西武ドームで開催。試合の合間に行われたイベントでは観客全員で「Back Softball!」と叫ぶなど、会場全体が五輪復帰への熱気に包まれていた。
「上野さ〜ん!」
 ひときわ大きな声援が飛んでいたのは、北京五輪で2日間で3試合413球を投げ、金メダル獲得の最大の立役者となった上野由岐子投手(ルネサステクノロジ高崎事業所)だった。2日間にわたって行なわれた西武ドームでの開幕戦、2日目の最後の試合に登場した上野は佐川急便相手に2安打12奪三振で完封勝ちし、日本のエースとしての貫禄を見せつけた。

 この試合、ひときわ歓声が大きくあがったのは、6回裏だった。打席に入ったのはなんとピッチャーの上野。2006年5月以来、実戦では一度もバットを振ったことがなかった上野だったが、豪快なスイングで二塁打を放ってみせた。敵も味方も関係なく、両スタンドから大歓声が沸き起こる中、上野は二塁ベース上で満面の笑みでガッツポーズ。ファンにとっては嬉しいサプライズとなった。

 また、11日の第3試合では北京五輪で日本と死闘を繰り広げた米国の左腕エース、モニカ・アボット(トヨタ自動車)が日本デビューを果たし、11奪三振で完投と実力を遺憾なく発揮。そのほか、多くの北京五輪日本代表やオーストラリア代表の選手たちもレベルの高いプレーを見せ、開幕はみどころ満載となった。今後は全国各地で試合が行なわれる。1部リーグは全12チームが総当り2回戦(各チーム22試合ずつ)行い、上位4チームで決勝トーナメントが行なわれる仕組みだ。今季は昨季2部優勝の伊予銀行が4年ぶりに1部復帰している。

 初の試みとなった「開幕節」の会場には2日あわせて1万人以上ものファンが詰め掛け、リーグは幸先いいスタートを切った。だが、これが五輪復帰への第一歩となるかは今後が重要である。ソフトボールの魅力を国内から世界へと発信するためにも、国内リーグの発展は必須。好プレー、スター選手が数多く誕生することを願うばかりだ。