27日(日本時間28日早朝)、ローマ・スタディオオリンピコで欧州チャンピオンズリーグ(CL)決勝が行われる。今季の欧州王者を決めるカードは現在考えうる最も豪華な組み合わせとなった。ビッグイヤーを手にするのは、現行の大会フォーマットになって以降初のCL連覇を狙うマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)か、それとも爆発的な破壊力でリーガ・エスパニョーラを制し、勢いそのまま3年ぶりの欧州王者を狙うバルセロナ(スペイン)か? 全てのサッカーファン必見の1戦を展望する。
 全世界のサッカーファンが注目する試合が近づいてきた。マンチェスター・ユナイテッドvs.バルセロナ。世界を代表する2大ビッグクラブが最高の舞台で激突する。

 過去の両雄の対戦成績はマンチェスター・ユナイテッドの3勝2敗4分け。最近の試合では07−08シーズン準決勝で2試合合計1−0、ポール・スコールズのミドルシュートでマンチェスター・ユナイテッドがバルセロナを下している。ユナイテッドはこの勢いそのままに、欧州王者まで上り詰めた。昨年の2試合も死闘だったが、今年の対戦は1発勝負の決勝戦。昨年以上に張り詰めた空気の中での1戦となる。

 ここまで隙のない戦いぶりで決勝まで駒を進めてきたのは、王者・マンチェスター・ユナイテッドだ。準々決勝1stレッグ(ホーム)でポルト(ポルトガル)と2−2で引き分けたが、第2戦はクリスティアーノ・ロナウドのスーパーゴールが決まり、1−0で勝利。準決勝ではアーセナルとの“プレミア対決”を2戦合計4−1で圧勝し、決勝へ余力を残して駒を進めてきた。

 イングランド・プレミアリーグでもシーズン序盤から圧倒的な強さを見せ3連覇を達成。サー・アレックス・ファーガソンをして「これまで自分が率いたチームの中で最強」と言わしめたほど磐石の態勢で大一番に臨む。

 一方のバルセロナは準決勝のチェルシー戦で最後の最後まで苦しめられた。ホームのカンプノウで行われた1stレッグではチェルシーの堅守を突破することができずスコアレスドロー。2ndレッグでも立ち上がりに失点を許し、厳しい戦いを強いられた。そして決勝進出がなくなりかけた後半ロスタイム。時計の針が3分ほど進んだ所で、右サイドからのクロスに競り合ったこぼれ球をアンドレス・イニエスタが芸術的なミドルシュートを突き刺す。試合終了直前に貴重なアウェーゴールを上げ、劇的なドローで決勝進出を決めた。

 CL準決勝では苦戦したものの、国内リーグでは圧倒的な強さを見せ、勝ち点86点を獲得。2位レアル・マドリーに8ポイント差をつけ、見事優勝を果たしている。スペイン国王杯も手にしており、CL決勝では3冠がかかっている。

 ここで気になるのは、両クラブの出場選手だ。負傷者を多く抱えているのはバルセロナ。準決勝2ndで左膝の半月板を傷めたDFラファエル・マルケスは欠場、準決勝2ndレッグで出場しなかったFWティエリ・アンリは右足靭帯に故障を抱える。そして劇的ゴールでクラブを決勝に導いたイニエスタも、国内リーグで右太ももを傷めた。アンリとイニエスタはおそらく出場するが、万全の状態ではないだろう。

 仮にシャビ・エルナンデスと組んで試合を組み立てるイニエスタが出場できない場合、バルセロナは別のチームになってしまう。アンリについても、リオネル・メッシ、サミュエル・エトーと形成する超攻撃3トップの一角。3名で今シーズン94得点(CL、リーガ・エスパニョール、スペイン国王杯の合計)を生み出しているだけに、欠場の影響は大きい。

 また累積警告の影響で両サイドバックのダニエウ・アウベスとエリック・アビダルが出場停止だ。本来はセンターバックのカルレス・プジョルが右サイドに入ることになる。強烈なサイド攻撃を武器とするマンチェスター・ユナイテッド相手にどこまで持ちこたえることができるか。

 一方のマンチェスター・ユナイテッドは、中盤の底を支えてきたダレン・フレッチャーが準決勝でのレッドカードで出場停止処分になっただけ。フレッチャーの他にもスコールズ、アンデルソン、ライアン・ギグスらがおり中盤の選手層は抜群。赤い悪魔はほぼベストの布陣で試合に臨むことができる。フレッチャーの穴をいかに埋めるか、名将ファーガソンの腕の見せ所だ。

 ともに攻撃サッカーを身上とし、世界中にサポーターを持つビッグクラブの激突だけに、名勝負になることは間違いない。ケガ人や出場停止の選手を考えるとマンチェスター・ユナイテッド有利かもしれないが、1発勝負の決勝は何が起こるかわからない。08−09シーズンを締めくくる、事実上の世界一決定戦から目が離せない。

(大山暁生)