キリンカップ2009が31日、東京・国立競技場で行われ、日本代表はベルギー代表と対戦した。欧州帰りの中村俊輔(セルティック)がスタメン入りした日本は、前半20分、長友佑都(FC東京)のゴールで先制。24分にも中村憲剛(川崎F)が得点をあげてリードを広げる。後半に入っても猛攻は続き、15分に岡崎慎司(清水)、32分に矢野貴章(新潟)がゴールを決めて4−0と圧勝した。W杯最終予選の前哨戦で2戦8点と攻撃力をみせた岡田JAPANは、6月6日(土)に敵地でのウズベキスタン戦に臨む。

 復帰の長友、1ゴール1アシスト(国立)
日本代表 4−0 ベルギー代表
【得点】
[日] 長友佑都(21分)、中村憲剛(24分)、岡崎慎司(60分)、矢野貴章(77分)
 2試合連続のゴールラッシュだ。4日前のチリ戦と同じくスコアは4−0。南米の強豪に続き、欧州の古豪も大差で撃破し、42,520人がつめかけたスタンドでは歓喜のウェーブが巻き起こった。

 しかし、試合後、岡田武史監督に笑顔はなかった。「前半20分を過ぎたところで、選手たちが8割の力でいいだろうと、パスを出しっぱなしになったり、ボールには詰めにいかない、ロングボールにはストッパーが競らないで中盤に任せていた」。ハーフタイムには「何のために、この試合をやっているんだ! ウズベキスタンに勝つためにやっているんだ!」とチームに喝を入れた。W杯予選の最終局面を前に、指揮官も戦闘モードに入ったことを感じさせる一戦だった。

 スタメンは現時点でのベストメンバーと言える布陣を敷いた。右足付け根に故障を抱える中村俊を先発で起用。トップ下にはチリ戦同様、中村憲を入れた。また「左サイドに置くと、彼の持っているワイルドさが消えてつなごうとする」と大久保嘉人(ウォルフスブルク)をワントップに据えた。ディフェンスラインも虫垂炎で一時離脱していた長友、左太もも裏を痛めていた田中マルクス闘莉王(浦和)が復帰した。

 最初から引き気味のベルギーに対し、試合は立ち上がりから完全な日本ペース。「外からまわしながら、中から攻める」と中村憲が語った狙い通りに、両サイドから切り込みながら、中央が空いたところをミドルシュートで相手ゴールを脅かす。

 しかし、チャンスがありながらゴールは遠かった。前半13分に放たれた遠藤保仁(G大阪)のミドルはゴール左隅で相手GKにはじき出され、その2分後には岡崎、大久保、中村憲が連続シュートをみせたが決め切れなかった。ピッチにはやや重苦しい空気が流れ始めたかに思われた。

 そんな雰囲気を一変させたのが長友だ。前半21分、中央の中村憲から左サイドに供給されたパスに反応。本人によれば「最初はクロスを上げる予定」だったが、相手キーパーが重心をゴールとは反対方向に移したのを見逃さなかった。狙いすましたシュートはゴール右上隅へ。「あんなにきれいに入るとは思わなかった」。本人も驚きのゴールで日本が先取点をあげる。

 さらにその2分後、今度は中村憲が魅せる。左サイドの大久保から斜めに入ったボールをペナルティエリア内で受け取ると、囲んだ相手DF2人を切り返してかわす。そして、すぐさま右足を振りぬいた。ゴールネットを再び揺らす鮮やかな2点目。中村憲はこの日、チーム最多のシュート6本を放ち、「点に絡める才能を感じている。あの形でいく時は憲剛はトップ下でハマる」と岡田監督も新布陣に手ごたえを感じていた。

 しかし、その後は運動量が落ち、やや中だるみの状態に。闘莉王がトラップミスで相手に決定的なチャンスを与えるなど、危ない場面もあった。「相手は(チリ戦から)中1日でやっている。あれくらいで動きが落ちるようなら、我々の目標に達成できない。選手たちは(控え室に)ピッチから歩いて戻ってきていた。充分できると思っている」。指揮官は前半の残り時間の動きを反省点として掲げた。

 ただ、中だるみ状態を後半に持ち越さなかった点は評価できるだろう。チリ戦で代表発ゴールを決めた本田圭佑(VVVフェンロ)を中村俊に代えて投入すると、積極的に相手陣内に攻め込んだ。そして後半15分、待望の追加点が生まれる。右サイドから大久保が低いクロスをあげたところへニアに飛び込んだのは岡崎。「いいボールが来たんで合わせるだけでした」。ヘディングシュートが見事に決まり、2試合連続ゴール。ケガ人の多いFW陣の中で2戦3発と結果を残し、日本には心強い点取り屋が現れた。

 さらに32分には本田が起点となり、左サイドの長友にスルーパスを供給。受けた長友がサイド奥深くから鋭いクロスをあげると、途中出場の矢野がタイミングよく、ゴール前へ。スライディングしながら押し込み、4点目をゲットした。大久保が左ひざを痛め、最後は10人で戦うアクシデントがあったものの、守りも危なげなく、ベルギーを零封した。「アグレッシブなサッカーをしていた。いい形での得点も生まれた」。後半の戦いぶりについては岡田監督も満足そうだった。

 次はいよいよ6月6日のW杯最終予選ウズベキスタン戦。勝てば日本は4大会連続の本大会出場が決定する。
「2試合とも得点をとって、失点ゼロだったが、この結果がウズベキスタン戦を保証してくれるものではない」
 岡田監督は決戦に向けて、気を引き締め直す。

 ただ、この2戦、岡崎や本田など、これまでの岡田JAPANでは決して主力でなかったメンバーが活躍した。「次もスタメンではないと思うが、いいパフォーマンスをみせてレギュラー陣を脅かしたい」。そう本田が語ったように、彼らのプレーがチーム全体にいい刺激を与えている。最終予選のラスト3試合へ岡田JAPANは上げ潮ムードになってきた。
 
「ウズベキスタンでW杯出場を決めたいと思います」
 1日の休養を挟み、2日に日本代表はウズベキスタンに向けて出発。キャプテン中澤佑二(横浜FM)が試合後、満員のファンに誓った約束が現実にする時は、6日後にやってくる。

(石田洋之)

<日本代表出場メンバー>

GK
楢崎正剛
DF
中澤佑二
田中マルクス闘莉王
→山口智(74分)
長友佑都
内田篤人
MF
中村俊輔
→本田圭佑(HT)
遠藤保仁
→阿部勇樹(62分)
中村憲剛
→興梠慎三(67分)
長谷部誠
→橋本英郎(HT)
FW
大久保嘉人
岡崎慎司
→矢野貴章(70分)