18日、日本サッカー協会(JFA)は7月に行われるアジア杯に臨む日本代表候補30名を発表した。海外組はMF中村俊(セルティック)とFW高原(フランクフルト)。17日のリーグ戦で右足首を痛めたDF闘莉王(浦和)も選出された。今回選ばれた30名は7月4日までに本登録の23名に絞り込まれる。
(写真:記者会見でのオシム監督)
 オシム監督は苦渋の表情でメンバー選考について語った。
「メンバーを決めるのは難しい作業だった。枠に入るか、入らないかはわずかなニュアンスの差。(枠に)入っていない選手の気分がよくないのはよくわかるが、それでも私は30人を決めてなくてはいけなかった」
 
 今回の選考では故障明けの選手の扱いが焦点だった。誰が選ばれ、誰が外れるのか。オシム体制で中心選手として活躍していた闘莉王、DF加地(G大阪)が順当に復帰した一方、FW前田(磐田)がA代表初召集の昨年11月のサウジアラビア戦以来となる劇的な代表復帰を果たした。前田は3ヶ月前に右ヒザ半月板の手術を行い、代表どころかピッチからも遠ざかっていた。だが、今季初のスタメン出場となった6月10日のJ1甲府戦から2試合で3ゴールを挙げ、決定力の高さでオシム監督の目にとまった。

 オシム監督は「前田は他のFWにないモノを持っている」と評し、「運動量が非常に多く、よく走る。個人技術も高い。それに、見た目にはそれほど速くは見えないが、いつのまにか(相手にとって)危険なポジションにいる」とベタ誉め。巻、播戸(G大阪)など献身的な選手が揃っている現FW陣の中では、テクニカルな前田のようなタイプはいいアクセントになりそうだ。

 前田とは対照的に、今大会を見送ることになったのはFW田中達(浦和)。J1復帰戦となった17日のFC東京戦で1ゴールを挙げたが、「いいプレーを1試合したからといって、代表に戻る十分な理由にはならない」(オシム監督)と選出されなかった。一方でオシム監督は田中に「彼には未来がある。W杯最終予選もあるし、この大会が最後というわけではない」とエールを送っていた。

<新旧世代バランスよく選ばれる>

 今回のメンバー30人は各年代の選手が新旧バランスよく組み合わさっているといえそうだ。日本が連覇した過去2大会を経験したのは中村俊、DF中澤(横浜FM)、GK川口(磐田)の3人。MF遠藤(G大阪)、加地、GK楢崎(名古屋)の3人も00年大会、04年大会のいずれかを経験している。一方で、水野(千葉)、家長(G大阪)ら北京五輪世代の5名の若手が選ばれた。今大会はW杯南アフリカ大会、そして、その先を見据えた貴重な育成の場でもある。オシム監督は「(中村俊や川口などのベテラン勢が)若手選手にとって、よい模範になってほしい」と話した。

<オシム、J日程に激怒>

 3連覇がかかった今大会のノルマに話が及ぶと、オシム監督の表情が途端に険しくなった。
「ここにいる人たち(メディア)の99.9%は日本がタイトルを獲らなければいけないと考えているだろう。だが、私には(日本が)タイトルを獲れない1000の理由が挙げられる」とまくしたてた後、その理由を説明した。「アジア杯に参加する国の中で大会直前までリーグ戦を戦っているのは日本だけ。それは大きなハンディキャップだ」。Jリーグは今回のメンバー発表の後も30日まで3節が行われる。オシム監督の興奮はおさまらず、「アジア杯で対戦する国に対しても失礼だとは思いませんか」とも話した。

 リーグ戦で負傷者が出る可能性があるため、7月4日の離日直前まで本登録のメンバーを決めるのは難しいという。「負傷以外の理由でメンバーを追加する可能性もある。だから現状としては30人+αで考えて欲しい」(オシム監督)。中村俊や高原を除くJリーグ所属の候補選手はケガに注意しながらも、本登録枠に生き残るべく、リーグ戦でアピールをしなければならない。アジア杯に向けての熾烈なサバイバルはまさに今始まろうとしている。

<日本代表候補30人>
GK
川口能活(ジュビロ磐田)
楢崎正剛(名古屋グランパス)
西部洋平(清水エスパルス)
川島永嗣(川崎フロンターレ)

DF
中澤佑二(横浜F・マリノス)
坪井慶介(浦和レッズ)
加地亮(ガンバ大阪)
田中マルクス闘莉王(浦和レッズ)
駒野友一(サンフレッチェ広島)
水本裕貴(ジェフ千葉)

MF
中村俊輔(セルティック)
橋本英郎(ガンバ大阪)
羽生直剛(ジェフ千葉)
遠藤保仁(ガンバ大阪)
中村憲剛(川崎フロンターレ)
鈴木啓太(浦和レッズ)
阿部勇樹(浦和レッズ)
今野泰幸(FC東京)
山岸智(ジェフ千葉)
太田吉彰(ジュビロ磐田)
伊野波雅彦(FC東京)
水野晃樹(ジェフ千葉)
本田圭佑(名古屋グランパス)
家長昭博(ガンバ大阪)

FW
高原直泰(フランクフルト)
播戸竜二(ガンバ大阪)
巻誠一郎(ジェフ千葉)
前田遼一(ジュビロ磐田)
佐藤寿人(サンフレッチェ広島)
矢野貴章(アルビレックス新潟)

<日本代表 アジア杯スケジュール>

6月25〜27日 直前合宿(千葉県内)

7月1〜3日  直前合宿(千葉県内)

4日(火)    グループステージ 対カタール

13日(水)    グループステージ 対UAE

16日(月)    グループステージ 対ベトナム

21日(土)    準々決勝

25日(水)    準決勝

29日(日)    決勝