千葉ロッテ・木村雄太「プロの壁に悩む日々」 〜ルーキー・レポート〜

facebook icon twitter icon
 2008年新人選択会議(ドラフト)で千葉ロッテから1位指名を受けたのが、190センチの長身左腕・木村雄太投手だ。1月の新人合同自主トレーニングを経て春季キャンプでは1軍に帯同するなど、球団からも大きな期待を寄せられている。また、昨年12月の入団発表時には結婚を発表。公私ともに順風満帆なスタートを切ったかと思われていた。しかし木村の前には今、プロの高い壁が立ちはだかっている。ファームで悪戦苦闘する木村投手に現況を訊いた。
「調子は……あまりよくはないですね。悪いなりになんとかやっているという感じです」
 冷静な口調は彼そのままではあったが、その表情は少し曇っているように感じられた。現在、木村はファームでは最多の12試合に先発登板している。22日現在、12試合に投げ、2勝3敗、防御率3.32という成績だ。数字にはこだわらないという木村だが、安打数(61)の多さに納得していない。

「自分に何かが足りないからこそ、打たれているわけですから、その部分を克服していかなければいけない」と木村。何が不足しているか、課題は既に明確になっているものの、それをどう克服していいのか、解決策がまだ見出せていないという。
「コーチからアドバイスをもらったり、自分自身で考えたことをやってみても、何かしっくりこない。それでまた、新しいのを取り入れて……今はこの繰り返しです。何が自分にとっていいのか、まだ判断できないんです」

 木村に迷いを生じさせている要因のひとつにはアマチュアとプロとの違いが挙げられる。それはレベルうんぬんではなく、試合に対する気持ちの持ち方、高め方だ。アマチュア時代は、春のスポニチ大会、夏の都市対抗、そして秋の日本選手権と主要3大会に照準を合わせていけばよかった。加えてどの試合も負けたら終わりの一発勝負。自然と気持ちは高揚し、高い集中力をもって試合に臨むことができた。

 一方、プロではシーズンを通して投げなければならない。アマチュアのように負ければ後がないといったプレッシャーがない代わりに、集中力を維持しながら結果を残し続けていくことが求められる。それがどれほど難しいことか。それは木村の予想以上だった。
「アマチュアは負けたら終わりですが、プロは終わらない。次にまた試合があるわけです。そうなるとアドレナリンの出方も違ってくる。正直、“負けても次がある”という気持ちが出てきたりする。どこで気合いを入れたらいいのか……。そういう点でプロは難しいのかなと」
 今まで経験したことのない未知の世界――。混沌とした状況の中で木村は今、光明を見出そうと必死にもがいているように見えた。

 どれほど優秀な選手にも浮き沈みの波は必ずくるものだ。それでも「調子が悪ければ悪いなりに」プレーすることこそがプロの所以の一つだろう。その点では、木村は今、プロとしての道をしっかりと歩んでいる。
「ホームランや四死球数が少ないのは自分でもまぁ、いいかなと思っています。四死球が多くなると、どうしても失点に結びついてしまいますから。ピッチングはしっくりきていないんですけど、なんとかゲームはつくれているかなと思います」

 プロとアマとの違いに未だ戸惑いはあるものの、それでも木村のプロとしての認識は高い。その顕著な例が食事である。
「プロになって一番変わったのは体調管理の面ですね。社会人時代は朝ごはんも食べずに出社していましたが、今は朝、昼、晩と三食しっかり食べています」
おかげで入団前は80キロ後半だった体重も5キロほど増え、今では90キロを超えたという。資本である体の成長が多少停滞気味の精神面を支えているからこそ、木村は「悪いなりに」投げられているのだ。

 豊富な投手陣が揃っているチームの中で、1軍昇格はそう容易いことではない。しかし、木村は自らが掴んだチャンスの重要性を感じながら、立ち止まることなく勝負を挑み続けている。真のプロ選手になるために木村は今、必死で目の前の壁を乗り越えようとしている。

(斎藤寿子)

>>入団前のインタビュー「過去の過ちを糧に」はこちら(2009年1月更新)
facebook icon twitter icon
Back to TOP TOP