新日本石油ENEOSから今季、ボストン・レッドソックスに入団した田澤純一投手が12日、本拠地でのデトロイト・タイガース戦でメジャー初先発し、5回4安打3失点の内容で初勝利をおさめた。田澤は立ち上がりに3安打を許し、味方のエラーも重なって3点を失ったが、2回以降は立ち直り、タイガース打線をゼロに抑えた。レッドソックスは2回にジェイソン・ベイの3ランで同点に追いつくと、3回にマイク・ローウェルのソロで勝ち越し。その後も追加点を奪い、粘る相手を7−5で振り切った。
「いずれ、この(フェンウェイパークの)マウンドで投げてみたい」
 入団前の田澤の夢は早くも現実となった。そして、最良の結果がついてきた。

 8日のメジャー初登板(ヤンキース戦)でアレックス・ロドリゲスにサヨナラアーチを浴び、負け投手になった田澤はこの日、まっさらな本拠地のマウンドに上がった。だが、固くなったのかいきなりピンチを招く。1死後、連打と死球で満塁。続く打者のショートゴロでダブルプレーとなるところが、エラーで1点を失った。さらに併殺崩れの間に1点を追加され、2死満塁からは8番ブランドン・インジにタイムリーを浴びる。これで計3失点。結局、タイガース打線に打者一巡の攻撃を許してしまった。

 しかし、以降の田澤は尻上がりに調子を上げる。バラついていた制球も定まり始め、ストレートの威力も増してきた。3回の1死3塁の場面では後続を連続三振に切ってとると、4回、5回と3連続三振も含む2イニング連続の三者凡退。スターターの責任投球回を投げ切った背番号63に、ボストンのファンから大きな拍手が送られた。

 ルーキーの頑張りに打線も奮起した。2回は4番のケビン・ユーキリスが相手投手の死球に激怒し、乱闘が勃発。ユーキリスは退場になったが、ナインの闘志に火がついた。2回、3回、5回とホームラン攻勢で計6点を奪い、3点のビハインドをあっさり逆転。田沢をしっかりと援護した。

 リリーフ陣も新人から受け取ったバトンを着実につないだ。7回は斎藤がマウンドに上がり、危なげないピッチングでタイガースに反撃を許さない。最終回は抑えのパペルボン。2点を失いながらも、最後の打者を空振り三振に仕留め、日本からやってきた右腕の初勝利を飾った。

 本拠地で最高のデビューを果たしたとはいえ、田澤の現状はあくまでも “代役”だ。テリー・フランコーナ監督は、故障者リストに入っているティム・ウェイクフィールドが復帰した際は、田澤をマイナー降格させる考えを示している。この1勝が、すぐに次のチャンスにつながるかどうかは分からない。ただ、レッドソックスが3年総額330万ドル(約3億3000万円)で獲得した実力は十二分にある――そのことを自らの投球で証明した1勝だった。