新日本石油ENEOSから今季、ボストン・レッドソックスに入団した田澤純一投手が現地時間7日、初のメジャーリーグ昇格を果たした。日本でのプロ経験を経ずにメジャー昇格したのはマック鈴木(当時マリナーズ)、多田野数人(当時インディアンス、現北海道日本ハム)に次いで3人目。同日のニューヨーク・ヤンキース戦では0−0のスコアレスで迎えた延長14回、8番手としてマウンドに登場。先頭の松井秀喜をセンターライナーに打ち取るなど、その回を無失点に抑えたものの、続く延長15回、アレックス・ロドリゲスにサヨナラ2ランを浴び、デビュー登板は初黒星の結果となった。
 レッドソックス期待のルーキーが、ついに大舞台のマウンドに上がった。昨年12月、プロで実績のないルーキーとして破格の3年契約を結んだ田澤は球団の育成方針により、1年目のシーズンを2Aでスタート。先発で9勝5敗、防御率2.57の成績を残し、マイナーリーグのオールスター出場選手にも選出された。7月には3Aに昇格。2試合に登板して勝ち星には恵まれなかったが、安定した投球をみせていた。

 そしてデビューの機会はすぐにやってきた。ヤンキース、レッドソックスの首位攻防第2Rとなったこの試合、両軍投手陣の好投で試合は0−0のまま延長戦に突入する。レッドソックスは岡島秀樹、斎藤隆らリリーフ陣が次々と登板するが、打線が勝ち越し点をあげることができない。

 延長14回、斎藤の後を継いで、田澤がブルペンに残っていた最後の投手としてマウンドに上がる。最初に迎えたのは松井秀喜。いきなりの日本人対決だった。松井はカウント1−1から投じたのは低めのストレートをセンターにはじき返す。いい当たりだったが、これはセンターの正面で田澤に軍配があがった。

 しかし、この後、ヤンキース打線がルーキー右腕に襲いかかる。連打で1死1、2塁と一打サヨナラのピンチから8番エリック・ヒンスキーの打球もライト線へ。抜ければ完全にサヨナラ負けだったが、ライトのJ.D.ドルーがランニングキャッチをみせ、新人を救う。バックの好守備に落ち着いたのか、田澤は続くメルキー・カブレラをフルカウントから空振り三振に仕留め、窮地を切り抜けた。

 続く15回も続投した田澤だが、先頭のデレク・ジーターにヒットを浴びる。相手のバント失敗にも助けられ、2死までこぎつけたものの、4番のアレックス・ロドリゲスは失投を見逃さなかった。カウント1−2からカーブをすくいあげ、レフトスタンドへ叩き込むサヨナラ2ラン。メジャー最高年俸を誇る主砲の歴代9位タイとなる通算573号メモリアル弾でヤンキースが熱戦を制した。田澤は敗戦投手となり、悔しいデビュー戦となった。

 現在、レッドソックスはア・リーグ東地区2位。宿敵ヤンキースと首位争いを繰り広げている状況だが、4連敗中で決して台所事情は芳しくない。松坂大輔が肩痛で長期離脱していることに加え、ナックルボーラーのティム・ウェイクフィールドも故障者リスト入りしている。200勝右腕のジョン・スモルツも2勝5敗、防御率8.33と振るわず、田澤と入れ替わりで戦力外通告を受けた。首脳陣は当面はリリーフ起用を示唆しているが、今後は先発に抜擢される可能性もある。

 ほろ苦いデビューを糧に、プレーオフ進出に向けたチームの救世主となれるか。次の登板は真価が問われそうだ。
 
>>「田澤、Rソックスとメジャー契約」の記事はこちら[/b](二宮清純特別コラムも掲載、2008年12月更新)