メジャーリーグの2009シーズンも大詰めを迎えた。イチロー(マリナーズ)の9年連続シーズン200安打達成にも注目が集まるが、ポストシーズンゲームへの出場権をかけた各チームの争いも見ものだ。残り20試合強となったシーズンの行方を展望したい。
 今年のメジャーリーグで目をひくのは王者ニューヨーク・ヤンキースの復権だろう。ここまで91勝50敗。3年ぶりの地区優勝は目前だ。開幕1カ月こそ出遅れたが、以降は7割近い勝率で白星を積み重ねてきた。5年ぶりのシーズン100勝も達成しそうな勢いだ。

 好調のチームを引っ張るのは破壊力のある打線だ。本塁打の出やすい新球場を味方につけ、チーム本塁打数219は30球団でトップ。マーク・テシェイラの35本を筆頭に、アレックス・ロドリゲスが24本、松井秀喜が23本など、7選手が20本塁打以上をマークしている。9年ぶりのワールドシリーズ制覇も充分に狙える戦いぶりだ。ただ、ヤンキースは04年にレッドソックスに3連勝からの4連敗を喫して以降、ディビジョンシリーズで3年連続敗退するなど、プレーオフで足元をすくわれるケースが目立つ。特に西地区首位を走るロサンゼルス・エンゼルスには今季2勝4敗と負け越しており、注意が必要だ。

 ア・リーグは西地区がエンゼルス、中地区はデトロイト・タイガースが頭ひとつ抜けており、プレーオフ進出が濃厚。残すはワイルドカードだが、こちらは最後まで目が離せない。現時点は東地区2位のボストン・レッドソックスがワイルドカードの首位。しかし、西地区のテキサス・レンジャーズが2差で追っている。両者の直接対決はもう組まれていないため、取りこぼしたほうが脱落する展開だ。

 レンジャーズは同地区最下位のオークランド・アスレチックス戦を7試合、首位のエンゼルス戦を6試合も残している。プレーオフ進出には、目標を失ったアスレチックスを確実に叩き、エンゼルスに大負けしないことが必要条件となる。8月には10年前の地区優勝時にMVPを獲得したイバン・ロドリゲスをトレードで獲得した。強打のベテラン捕手が攻守にチームを引っ張り、その時以来のポストシーズンゲームに名乗りをあげたい。

 対する2年連続のワイルドカードを目指すレッドソックスは、来週中の復帰が見込まれている松坂大輔に期待がかかる。肩の不調で戦列を離れて約3カ月、夏の間はマイナー施設でしっかりトレーニングを積んできた。体重を絞り込み、下半身を強化した結果、本来のボールがどこまで戻っているか。レッドソックスの先発陣はティム・ウェイクフィールドが腰痛を抱えるなど万全の状態ではない。今季は故障続きだった右腕が、最後の勝負どころで復活を遂げれば、ワイルドカード争いはもちろん、その後のプレーオフの戦いにも大きなプラスになる。斎藤隆、岡島秀樹、田澤純一との日本人カルテットでチームを牽引する場面を見たいところだ。

 イチローの所属するシアトル・マリナーズ、岩村明憲が復帰したタンパベイ・レイズはレッドソックスに9.5差をつけられた。現在、マリナーズは4連敗、レイズは8連敗中とチームに勢いがない。プレーオフ争いからは完全に脱落したと言えるだろう。
 
 一方のナ・リーグはセントルイス・カージナルスが中地区を独走。世界一に輝いた06年以来のプレーオフ進出は決定的だ。東地区がフィラデルフィア・フィリーズが2位に6ゲーム差をつけ、地区優勝がみえてきた。ワイルドカードを含めた残り2つのイスを競うのが、西地区の3チーム。現在はロサンゼルス・ドジャースが首位。2.5差でコロラド・ロッキーズが2位につけ、さらに4差でサンフランシスコ・ジャイアンツが追う。熾烈な争いを続けるだけに、各球団ともここにきての補強が目立つ。

 ドジャースは8月末に通算564本塁打のジム・トーミ、通算114勝右腕のジョン・ガーランドを獲得した。打球を頭に受けて故障者リスト入りしていた黒田博樹も復帰を果たし、チーム防御率、打率ともにリーグ1位の戦力はさらに厚みを増した。後半戦のもたつきで、他の追撃を許しているものの、ラストスパートをかける態勢は整っている。

 ロッキーズは野手で元ヤンキースのジェーソン・ジアンビを獲得。投手は4年連続2ケタ勝利の実績を持つホセ・コントレラスを補強し、9月は8勝1敗と好調だ。5日の試合ではジアンビが代打決勝打を放ち、翌日はコントレラスが7回途中1失点の好投で勝ち投手になるなど早速、活躍をみせている。ポイントとなるのは15日からのジャイアンツとの3連戦。8月末にスイープを喫した敵地での戦いを制し、優位に立ちたい。

 そのジャイアンツはドジャース時代、最多勝にも輝いたブラッド・ペニーを補強した。9月に入って早くも2勝をあげ、ともに13勝をあげているティム・リンスカム、マット・ケインとともに貴重な先発の柱になりそうだ。12日からはいよいよドジャース、ロッキーズとの9連戦。逆転でのプレーオフ進出に向けたラストチャンスだ。上位との直接対決を大きく勝ち越すようなことがあれば、地区優勝、ワイルドカードの行方はさらに混沌としてくる。打線が低調なチームだけに、投手陣の頑張りがカギを握る。

 また東地区のフロリダ・マーリンズもワイルドカード首位のロッキーズに5.5差で、ギリギリ望みを残す。福留孝介の所属するシカゴ・カブス、川上憲伸が入団したアトランタ・ブレーブスは大きく水を開けられ、プレーオフの可能性はほぼ消えた。

 昨季はア・リーグ東地区でシカゴ・ホワイトソックスとミネソタ・ツインズが同率で並び、ワンデープレーオフで雌雄を決した。今季はア・リーグ、ナ・リーグともにワイルドカード争いで、そんなしびれる状況が生まれるかもしれない。