シアトル・マリナーズのイチローが14日、敵地でのテキサス・レンジャーズ戦でメジャーリーグ移籍以来9年連続となるシーズン200安打を達成した。記録まであと1本で迎えたダブルヘッダーの2試合目、2回の第2打席でショートへのタイムリー内野安打を放った。9年連続の200安打はウィリー・キーラーが1894年から1901年にかけて記録した8年連続を上回り、メジャー初の偉業。通算の達成回数でもピート・ローズの10度に次ぐ、歴代2位タイの記録となった。
 外角のボールにバットを合わせると、打球はショートの前方に転がった。遊撃手が慌てて前進して捕球するも、もうその時に、背番号51は一塁ベースを駆け抜けようとしていた。記念の一打は、代名詞とも言える内野安打。雨で試合開始が4時間以上遅れ、その瞬間を見届けた観衆は決して多くなかったが、メジャーリーグの歴史に新たな金字塔が立てられた。

 今年はメジャー9年目で、もっとも記録達成が危ぶまれたシーズンだった。WBC後、胃潰瘍を患い、開幕から8試合を欠場。しかし、復帰後は遅れを取り戻すように打ちまくった。春先はスロースタートだった男が4月から打率3割以上をキープ。5月から6月にかけては自己新となる27試合連続安打を打って、量産体制に入る。6月の月間打率は.407。今季はこれまで2試合連続ノーヒットが1度もない。

 だが、大台まで残り14本となったところで再びアクシデントに襲われる。試合中に左ふくらはぎを痛め、8月末に8試合の欠場。メジャー8年間でわずか16試合しか休まなかった“鉄人”が今季だけで16試合もゲームに出られなかった。それでも左打席に立てばヒットが飛び出すのが、安打製造機たるゆえんだ。復帰後は5試合で10本を稼ぎ、7日のアスレチックス戦ではメジャー通算2000安打を達成。それからちょうど1週間で前人未到の領域に到達した。

 記録達成時、一塁塁上でヘルメットをとって観客の拍手にこたえたイチロー。しかし、その目は既に先を見つめているように映った。「人(の記録)との戦い、争いに終わりを迎えることができた」。試合後、そう語ったバットマンは、次は何と戦い、どんな世界をみせてくれるのか。その答えをこれからも自らのプレーで見せてくれるに違いない。