当HP編集長の二宮清純がインタビュアーを務めるBS朝日の番組『勝負の瞬間(とき)』が11月1日(日)、21:00より放送されます。この番組では毎回、各スポーツから一流たちをお招きし、トップを極めたテクニックと、その思考法に迫ります。これまでのスポーツ番組とは一味違ったインタビュードキュメントです。今回はボクシングWBC世界バンタム級王座を9回連続防衛中の長谷川穂積選手をお招きします。
(写真:神業ともいえる王者のテクニックが明らかに)
 当サイトでは番組に先駆けて、長谷川選手とのインタビューの一部を紹介します。

二宮: とにかく長谷川さんの試合は、本当に目が離せない。あっという間に終わっちゃうんですから。
長谷川: そうですね。ここ4試合は2、2、1、1(R)で終わっています。お客さんからのクレームもだいぶいただいていますね(苦笑)。早すぎると。最初は2ラウンドで倒したら、「まぁ、たまにはいいかな」って感じだったんですけど、その次から2ラウンド、1ラウンドと連続して、この前も1ラウンド。「さすがにお金を払ってもらって、それはないんじゃないか」と。

二宮: 私も長い間ボクシングを見てきましたが、早く倒してお客さんに謝っているのは、長谷川さんだけだと思います。
長谷川: そうですね(苦笑)。まぁ、ボクサーとしては1秒でも早く終わりたいんですけど。

二宮: たとえば、一番最近の9度目の防衛を果たしたネストール・ロチャとの試合でも、相手の懐に入っていったら、一発で終わっていました。左のストレートで相手がグラッとなったところへ、今度は右フックを入れたでしょう。本当にマッハのスピードと言えるのですが、最初のプラン通りだったのですか?
長谷川: 左を打って、右フックを合わせるというのは、(山下正人)会長とこの試合に向けてすごく練習してきました。それでカーンとゴングが鳴って試合が始まった時に、何発かパーンと打ってみたら、「これ当たるんちゃうんかなー」と思ったんです。実際、2分過ぎに出したらどんぴしゃで当たって倒れた。自分でもびっくりでしたね。まさか、こんなに奇麗に当たって倒れるとは……。でも、その後、相手が立ち上がってくるとも思わなかったです。

二宮: もう、これで終わりと思うくらい完璧なパンチだったと?
長谷川: あれだけ急所に当たって、あんな倒れ方したら「もう立ってこられないだろうな」と思ったんです。そしたら、しっかり立ってきた。この試合に向けて、すごく練習してきたんでしょうね。たいした選手だなと思いました。

二宮: ボクサーにとって大切なものを聞かれたら、たとえばスピードがそのひとつでしょう。パワーもないよりあったほうが良いと思います。でも私が見ていて、一番大事だと思うのは距離感。長谷川さんの場合、これが絶妙なんですよ。“神の距離感”を持つ男といえばいいのかな。こちらのパンチの当たる位置に入れば、相手に当てられる危険性もある。ボクサーはそのリスクをとらないと勝てないのだけれども、そこでちゃんと相手に当てて倒して、さっと自分はパンチをもらわずに下がっている。この距離感についてはどう思いますか?
長谷川: 二宮さんはボクシングにすごく詳しいので、今、言われたようにその距離感が本当に大事なんです。確かにパンチとかスピードとかテクニックとかも必要なんですけど、でも本当にボクシングをする上で大事なのは距離感。ボクシングをやっている人ならわかると思いますが、自分のパンチが当たって、相手のパンチが当たらないゾーンがある。紙一重だけど、ここは大丈夫というのが自分で分かりますね。
>>この続きは番組をお楽しみ下さい。

 番組ではこの後、長谷川選手の強さの秘密を次々と解明していきます。相手の呼吸を見ながら繰り出すパンチ、わざとパンチを打たせて、カウンターで仕留めるテクニック、止まることない連打……など、本人の実演(写真)も交えながらの解説は必見です。さらには、ここまでのボクシング人生を振り返り、デビュー戦から抱えてきたトラウマについても初めて語ります。

 アマチュア経験もなくプロテストも1度目は不合格、デビュー5戦で2回の敗戦と、決してエリートとは呼べなかったボクサーは、今や世界に誇る日本のエースに成長しました。
「自分が自分と戦うとしたら弱点はない」
 長谷川選手はそう断言する一方で、「強いと言えるだけの自信はない。本当に強いのかってずっとクエスチョンなんです」と自らを冷静に見つめています。

「ボクシングが大好きなので長く続けたい。そのためには勝ち続けないといけない」
 夢は日本人が未だに成し遂げていない3階級制覇、そして海外進出。「もう勝たれへんやろって言われるような相手とやりたい」とチャンピオンは新たなステージを見据えています。区切りの一戦と位置付けた10度目の防衛戦(12月18日、対エリック・モレル)まで、あと1カ月半。最強王者の過去、現在、未来がわかる貴重なインタビューです。

 この「勝負の瞬間」は月1回ペースで2010年3月まで全12回シリーズでお届けしています。今後も各スポーツの一流たちを続々とゲストにお招きします。12月には、これまでの番組分から反響の大きかった回をまとめて再放送する予定です。どうぞお楽しみに!


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