愛媛マンダリンパイレーツ出身の福岡ソフトバンク・西山道隆投手が31日、球団から来季の契約を更新しない旨を通告された。リーグ出身選手では今オフ、既に千葉ロッテの小林憲幸投手、白川大輔内野手、東京ヤクルトの小山田貴雄捕手が戦力外となっており、これで4人目。今後は未定だが、当サイトの取材に対し、第一線から退く意向を示した。リーグ初のNPB選手として道を切り開いてきた男は、新たな人生を歩み始める。
「(合同)トライアウトは受けないつもりです」
 通告を受け、西山は静かに今後について口を開いた。
「育成から這い上がって、1年1年というか1日1日が勝負のつもりでやるだけのことはやりました。もうおなかいっぱいという感じです。悔いはありません」

 2005年、創設1年目のアイランドリーグで地元・愛媛に入団した西山は、150キロを超えるストレートでエースとして活躍した。5連続完封を含む10勝をマーク。その年のオフに導入された育成選手制度でソフトバンクの指名を受け、広島入りした中谷翼とともにリーグ初のNPB選手となった。

 ルーキーイヤーの06年5月には支配下登録を勝ち取り、1軍に昇格。育成出身の第1号選手として、6月1日の横浜戦では初先発を果たす。西山自身も4年間の思い出の1つとしてあげた試合は3回途中3失点。「立ち上がりに三振をとって、調子に乗ってしまった。それが自分の悪いところですね(笑)」と振り返った。

 先発の一角を担える投手として期待され、07年には3試合に先発。7月26日の千葉ロッテ戦では角中勝也(元高知)との元アイランドリーグ対決も実現した。この試合では6回1失点と勝利投手の権利を得ていたものの、2番手以降の投手が同点に追いつかれ、初白星を逃す。その同点打を放ったのが角中だったのは、なんとも皮肉だった。その後は制球難もあって、2連敗で2軍に降格。08年は中継ぎとして2度1軍に上がったものの、結果を残せず、2試合の登板にとどまった。

 勝負の1年となった今季、キャンプで古傷のひざを痛め、別メニューを余儀なくされた。人一倍の練習で自らを支えてきた西山にとって、この出遅れは痛かった。結局、4年目で初めて1軍昇格ができず、2軍での成績も23試合に登板して0勝3敗1セーブ、防御率7.71。ソフトバンクは今回のドラフトで若い高校生投手を2名指名したこともあり、来年30歳を迎える右腕が構想から外れた。4年間の1軍での通算成績は7試合、0勝2敗、防御率7.59だった。

 チームの先輩である斉藤和巳が自身のブログで「クソが付く程の真面目な奴」と評したように、黙々とトレーニングに励む姿勢はアイランドリーグ時代から全く変わらなかった。取材に行くと、いつも最後まで居残り練習を続けていた。思えばアイランドリーグがなければ、育成選手制度がなければ、西山はもうずっと前に野球を諦めざるをえなかっただろう。その意味では本人の努力が運命を引き寄せたと言えるかもしれない。

「せめて1勝はしたかったですけどね。たいした実績も残せず、申し訳なく思っています」
 元アイランドリーガーによる初勝利の夢は各球団で投げるリーグの後輩たちに託された。
「いつか、こういう時が来るとは思っていましたから。後ろを振り向いてもしょうがない。NPBに行ったおかげでいろんな人と出会えた。あまりのんびりもできないですけど、野球以外のことにも視野を広げて、これからのことを考えたい」 

 確かに西山はNPBでほとんど記録を残すことはできなかった。ただ、紛れもないパイオニアとしての足跡は残したのではないか。彼の入団後、アイランドリーグからは毎年、NPBへ選手が送り込まれ、育成の場としての地位を確立した。育成上がりでも山口鉄也(巨人)のように、新人王を獲得した選手も現れた。西山道隆の歩んだ小さな道は、球界内で着実に大きな道になりつつある。

(石田洋之)

<最多セーブ・角野を古巣の徳島が指名、首位打者の中村は香川へ 〜福岡救済ドラフト〜>

 来季のリーグ戦不参加を決定した福岡球団で来季もリーグでプレーを希望する選手を対象に実施された救済ドラフトの結果が公表された。今季最多セーブ(18S)に輝いた角野雅俊は古巣の徳島が指名。首位打者(.361)の中村真崇は香川、最多勝(14勝)の森辰夫は愛媛が交渉権を獲得した。香川が最多の6選手を指名した一方、高知はひとりも獲得の意思を示さなかった。

 今後、各球団は指名選手と入団交渉を実施し、15日間でまとまらなかった場合は、他球団とも話し合いが可能になる。なお、徳永雄哉、森下一平、倫太郎の3選手にはどの球団も獲得の希望がなかったが、今オフの合同トライアウト合格者を対象とした12月のドラフトで他の新人選手とともに指名できる。
 各球団の指名選手は以下の通り。

徳島インディゴソックス
 角野雅俊(投手、5年目) 42試合、0勝3敗18S、防御率3.04
 関口大志(外野手、2年目) 79試合、打率.259、27打点、24盗塁 

愛媛マンダリンパイレーツ
 増田康弘(外野手、1年目) 56試合、打率.317、1本塁打、26打点
 森辰夫(投手、2年目) 33試合、14勝7敗、防御率3.30 

香川オリーブガイナーズ
 中村真崇(内野手、2年目) 80試合、打率.361、11本塁打、54打点 
 國信貴裕(内野手、5年目) 65試合、打率.281、4本塁打、23打点
 三國慶太(捕手、1年目) 39試合、打率.211、6打点
 西村拓也(投手、2年目) 17試合、2勝2敗、防御率4.47
 中田卓宏(投手、1年目) 33試合 0勝2敗1S、防御率4.42
 大野武洋(内野手、1年目) 58試合 打率.256、2本塁打、14打点

長崎セインツ
 陽耀華(内野手、2年目) 69試合、打率.286、3本塁打、32打点、30盗塁
 富岡拓也(捕手、2年目) 34試合、打率.161、2打点
※成績は今季