3日、ヤマザキナビスコカップ決勝が東京・国立競技場で行なわれ、FC東京が川崎フロンターレを2−0で下し5年ぶり2度目のカップ戦制覇を達成した。前半から押され気味のFC東京だったが、前半22分、カウンターから米本拓司がミドルシュートで先制する。後半も相手にペースを握られるが、14分に相手コーナーキックから再びカウンター。最後は平山相太がヘッドで流しこみ点差を2点に広げる。このリードを守り切り2−0で勝利、MVPには先制点を奪った米本が選ばれた。

 カウンターから2得点 猛攻しのぎ戴冠(国立)
FC東京 2−0 川崎フロンターレ
【得点】
[F東京] 米本拓司(22分)、平山相太(59分)
 晴天の中4万4千人のサポーターを集めたヤマザキナビスコカップ決勝は、FC東京が川崎フロンターレを2−0で下した。戦前の見方では川崎が絶対的に有利、東京は厳しい戦いを強いられるとされていた。しかし、結果は2−0の完封勝ち。東京をカップ制覇に導いた要因を城福浩監督は“我慢”という言葉で表現した。

「戦前の川崎有利という評価は非常にフェアなものだったと思います。こちらはケガ人も多くいますし、選手層の厚さでも劣っていますから」

「この試合では2つの我慢を心がけました。一つはボールを回させた時にFWにしかけないこと。インターセプトできずに空いたスペースを使われたら決定機になります。3つのラインをしっかりと保つことようにしました。もう一つは自分たちでボールをキープする、つまり、行きたい気持ちを我慢することです。ボールを持って相手のスキを突く。これがうちの戦い方でした」

 優勝決定後に城福監督は落ち着いた表情でこう語った。城福監督の言葉とおり、終始試合を押し気味に進めたのは川崎だった。先制点を奪う直前、19分に鄭大世とのワンツーから谷口博之が抜け出し1対1となる。これはGK権田修一のスーパーセーブで危機を脱したが、この後も鄭、ジュニーニョ、レナチーニョといった川崎アタッカー陣が東京ゴールに襲いかかった。しかし、攻め込まれながらも権田の好守連発で得点を許さない。まさに我慢の時間が続く展開だった。

 東京が先制点を奪ったのは22分。左サイドで細かいパスをつなぎ、ペナルティエリア手手前から米本拓司が思い切りのいいシュートを狙う。ボールは無回転で川崎ゴールを襲い、GK川島永嗣がセービングを試みたが、ボールは川島の手をかすめゴールネットを揺らす。今大会でニューヒーロー賞を受賞した18歳の米本が決勝で貴重な先制弾を叩き込んだ。

 得点こそ奪われたものの、その後も主導権を握ったのは川崎だった。中村憲剛から効果的な縦パスが入り、ジュニーニョらが次々とシュートを放つ。しかし、東京のDFラインが体を張った守備で川崎に得点を許さない。「権田のプレーだけでなく前線からのハードワークがうまくいった。ボールを回されたが、体を寄せることで余裕のあるプレーはさせなかった」と試合後に城福監督が振り返る。幾度か決定機を作られながらも、前半を1−0で折り返す。

 後半も川崎ペースで試合は進むが、ゴールはなかなか生まれない。川崎はゴール前まで侵入するものの、やや強引なプレーが目立ち、中央からの攻めが目立った。サイドを起点とする攻撃が機能せず、中へ中へと寄っていってしまう。ゴール前には青と赤のユニフォームを着た壁が立ちはだかり、ゴールネットを揺らすことは叶わない。後半15分ころまで一方的に攻め続けた川崎だが、それでも東京の堅い守りを打ち破ることはできなかった。

 そして、後半14分。数回続いたコーナーキックのピンチから、クリアボールに反応したのは東京の快足MF鈴木達也だ。左サイドを一気にえぐり、ゴール前に絶妙なクロスボールを上げる。そこへ走りこんだのが平山相太。落ち着いてヘディングをゴールに流し込みリードを2点に広げる。攻め込まれても集中を切らさず、自分たちの形で2点を奪った東京。攻め込みながらもなかなか点の奪えない川崎とは対照的な姿だった。

 その後も2点を返すべく川崎が猛攻をしかける。前がかりになりボールをゴール前へ供給するが、局面を打開することはできない。対する東京は、2点目を奪った直後に右肩を痛めていた長友佑都を投入。長友の脚力をいかし、またもカウンターで川崎ゴールを脅かした。ポゼッションでは優位に立つ川崎が残り時間の少なくなる中、次第に追い込まれていき、自分たちのサッカーを見失っていった。

 試合はこのまま2−0で東京が勝利。5年ぶりにナビスコ杯を制し、サポーターへビッグタイトルを捧げた。MVPには先制弾を叩き込んだ米本が選ばれ、ニューヒーロー賞とのダブル受賞となった。

 東京のタイトル獲得は04年ナビスコ杯以来5年ぶり。リーグ戦でも現在5位につけており、この優勝で勢いを増すことになりそうだ。ACL出場圏内の3位までは勝ち点2差。「この優勝に満足せず、さらにクラブがステップアップするようにしなければならない」。城福監督が力強く語ったように、この優勝で一気にアジアでの戦いへ追い風が吹くことになるだろう。

 一方の川崎はまたしても悲願のタイトル獲得はならなかった。ナビスコ杯決勝で敗れるのはこれで3回目。国内屈指の実力を持つクラブだが、まだ栄冠に手が届いていない。タイトルに向けて必要なものはなにかと問われた川崎・関塚隆監督は「平常心が必要。先制点を取られても、自分たちのサッカーをやりつづけなければいけなかった。それ以上のことは今は思いつかない」と意気消沈の様子だった。

 ACLに続きナビスコ杯でも善戦しながらタイトルを獲得ならず。残るタイトルはリーグ戦と天皇杯だ。悲願達成を目指して、首位に立つリーグ戦はどうしても優勝したいところ。これまで乗り越えられなかった壁を越えることはできるのか。川崎の眼前に立ちはだかる壁は、私たちが思う以上に高く、分厚い。