たとえば2月3日、広島版のスポーツ紙の一面は何だったと思いますか(たまたま、この日、広島に行っていたもので)。

「九里 侍推し」(日刊スポーツ)
「ジョンソン 頭脳派」(デイリースポーツ)
「野間 8発全開」(スポーツニッポン)

 同じ日で、一面の話題がこんなにあるとは。カープが、いかに話題満載のキャンプを送っているかが、よくわかる。ちなみに順に解説すると、「ニッカン」は緒方孝市監督が、視察に訪れた小久保裕紀・日本代表監督に、九里亜蓮投手を推薦したというもの。「デイリー」は新外国人投手のクリス・ジョンソンが頭脳派左腕の片鱗をみせた、「スポニチ」はドラフト1位ルーキーの野間峻祥がフリー打撃で8発ホームランを打って新井宏昌打撃コーチが高く評価した、という記事である。

 現時点では、今年のカープには期待がふくらむばかり、というところですね。けっこうなことである。澤村拓一がクローザーに転向する(らしい)巨人軍よりは強いだろう、なんて憎まれ口のひとつも叩きたくなる。

 過日(7日だったか)、ぼんやりキャンプ中継を眺めていた。シート打撃に九里が登板していたけれど、少なくとも、日本代表に推薦するほどのいい出来には見えなかったけどなぁ。強い当たりが目についた(もちろん、その1日だけで何かを判断することはできませんが)。

 それより、木村昇吾のスイングが、すごくいいような気がした。内角のボールでも、バットが内側からきれいに抜ける。しかも、フォロースルーが大きい。もしかして、この人、34歳にしてさらに進化しているのではあるまいか。

 というのは、木村の存在は大きいと思うのだ。
 古くは故障離脱した東出輝裕の穴を埋めた年から、毎年のように離脱したレギュラーに代わって出場し、活躍してきた。横浜から移籍してきた当初は、明らかにバッティングが非力だったけれども、去年などは、かなり力がついた印象がある。

 もちろん、“キクマル”コンビをはじめとするレギュラー選手が活躍して、ペナントレースを突っ走れば、それで言うことはない。しかし、必ずシーズンのどこかで故障や不振は起きる。控えの力は、きわめて重要なポイントだ。控えの力を木村が支えてくれることは、優勝の条件かもしれない。

 投手では、ポイントは九里よりも野村祐輔ではないだろうか。前田健太、黒田博樹、大瀬良大地までは計算できるとして(あとはジョンソンですか?)、ここに「野村の逆襲」が起これば心強い。

 たんなる願望ではない。体のキレを取り戻すために、オフに6キロ減量したという。新球として、フォークにとりくんでいるそうだが、映像を見る限り、けっこう落ちているように見えた。野村はスピードよりキレだから、この選択はまちがっていないのかもしれない。

 野村を「控え」と呼ぶと叱られそうだが、いずれにせよ、木村や野村のような存在が輝くか否かということも、今年の大きなカギである。

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんが第2週木曜を担当します)
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