カープが球団創設26年目で初優勝を果たした1975年、オールスターゲームで大暴れしたのが山本浩二と衣笠祥雄だった。

 甲子園での第1戦、まず初回に3番の浩二がレフトスタンドに2ランを放つと、6番の衣笠もレフトスタンドにソロアーチを架けた。

 赤ヘル旋風は止まらない。2人は2打席目もレフトスタンドに打球を運ぶ。浩二が2回に3ラン、衣笠が3回にソロだ。

 ちなみに浩二と衣笠の間を打ったのが王貞治(4番)と田淵幸一(5番)である。まだ一度もタイトルをとったことのない赤ヘルの2人の主砲を、全セ監督の与那嶺要は、よく3番、6番という重要な打順で起用したものだ。

 2回に浩二、3回に衣笠からホームランを浴びたのが阪急のエース山田久志である。山田ほどのピッチャーが、こうも打たれるものなのか。

 推測をまじえていえば、山田は浩二と衣笠を試したのではないか。どこが打ててどこが打てないかを。

 実際、秋の日本シリーズで山田はカープ相手に2勝をあげ、最優秀投手に輝いている。交流戦のない時代、オールスターゲームは数少ない腕試しの場だった。山田はそこを有効に使ったとも言える。

 それはともかく、オールスターゲームでの浩二と衣笠の大暴れが、後半戦、チームに勢いを与えたのは言うまでもあるまい。カープから12球団最多の8人が参戦する今季のオールスターゲーム、チームを勢いづけるヒーローは現れるのか。

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)

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