ある朝、事務所でのことです。
「H~!!ちょっと来てくれ!」洗面所から編集長の声が聞こえてきます。
「どうされました?」
「これ、どうやって使うのかな?」
「ああ!白髪を染めるんですか!?」
「初めて使うから分からないんだよ」
「私も使ったことはないですけど、ブラシにクリームを乗せて髪の毛をとかすように塗った後、5分くらい置くみたいですね」
「それだけでいいの?簡単だな」

 スタッフルームに戻り仕事をしていると、洗面所から“あ~!!”という雄叫びにも近い声が幾度となく聞こえてまいります。声がする度に、スタッフの仕事の手も一旦止まり、洗面所で何が起きているのか気になって仕方がない状況です。

 しばらくすると雄叫びも聞こえなくなり、仕事に集中していると、清清しい顔をして、髪の毛が黒くなった編集長がスタッフルームに現れました。
「あれ!?編集長、髪の毛が黒くなりましたね!」
「高倉健みたいです!!」
「いや、板前さんみたいですよ!」
「昭和の映画スターみたいでいいじゃないですか!」

 どうして“板前さん”や“昭和のスター”というキーワードが出てきたかと申しますと、散髪に行かれたばかりの短髪に、見慣れない黒髪になったからです。

 髪の毛を染めていただけなのに、どうしてあのような雄叫びが聞こえてきたのか気になり洗面所に行ってみると、それはそれは恐ろしい光景が目に飛び込んでまいりました。
「ぎゃ~~!!」
なんと、洗面所のシンクや敷きマットがかなりの広範囲で黒く染まっておりました。

 ブラシにクリームを乗せて髪の毛をとかすだけなのに、どうしてこうなったのか不思議です・・・
  
(スタッフH)

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