ある朝、モノマネで有名なまっちゃんこと松村邦洋さんからケータイに電話が入った。まっちゃんとは古い付き合いだが、午前中に電話が入ることは珍しい。

 何事かといぶかしがっていると「八幡浜について教えて欲しい」という。八幡浜とは私の生まれ故郷である。

「今日の午後、僕のラジオ番組で八幡浜出身のシンガーソング・ライター井上昌己さんと対談するんですよ。それで、ちょっと知識を仕入れようと思いましてね。あのぉ、慶大から巨人に行った上田和明って八幡浜でしょう?」

「そうですよ。彼は僕の高校の後輩になるんですよ。ドラフト1位で巨人に入ったんですけどねぇ……」

「では、中日で活躍した藤沢公也は? あの人もドラフト1位だったでしょう?」

「そうそう、あの人は4回もドラフト指名を蹴り、5回目の指名で中日に入ったんですよ。1年目に13勝をあげて新人王に輝いたんですけど、2年目は、わずか1勝に終わりました」

 八幡浜の知識と言いながら、出してくるのは野球のことばかり。それにしても、まっちゃんの知識はハンパではない。
「じゃあ、ラジオ頑張ってくださいね。昌己ちゃんにもヨロシク!」

 夕方、番組終了後に電話が入った。なぜか、声が申し訳なさそうだ。
「清純さん、せっかく、いろいろと教えてもらったのに井上さん、あまり野球に興味がないみたいで……。もっと他の話を聞いといた方がよかったですね」

 そりゃ、そうだろう。まっちゃんがオタク過ぎるのだ。いったい、どこから、あれだけの知識を仕入れてくるのだろう。むしろ、こちらが聞きたいくらいである。

(編集長N)


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