プロ野球が開幕し、アイランドリーグ出身選手も各球団で頑張っています。なかでも福岡ソフトバンクの育成選手から中日で支配下選手になった亀澤恭平(元香川)が、いきなりデビュー戦で4安打の大当たりを見せました。

「まぐれです。たまたまです」
 当日、亀澤からは興奮した様子で電話があり、初ヒットの報告をしてくれました。

 ソフトバンク時代は内野の層が厚く、支配下登録には至りませんでしたが、走攻守3拍子揃った内野手として評価を受けていました。香川にいた時から体が強く、塁に出ようとする意識の高さがありましたね。育成で3年間、鍛えられたことで心身ともにさらにタフになったはずです。

 開幕1軍を勝ち取ったとはいえ、正直、彼の立場は次のカードで先発ピッチャーを登録するまでの予備要員だったと思われます。それは本人もわかっていたでしょう。生き残るにはワンチャンスしかない。そんな状況でスタメン起用され、結果を出しました。

 これでは、さすがに首脳陣も亀澤を外せません。中日は3連敗スタートでしたが、彼の活躍は希望の光となったのではないでしょうか。

 今後も出場機会は出てくるでしょうから、つなぎ役として、バントを決めたり、四球を選んだりと相手に嫌がられるタイプになってほしいと願っています。おそらく、1軍の緊張感で1試合フルに出ると最初はかなり疲れるでしょうが(笑)、何とかくらいついてほしいですね。

 亀澤がブレイクの兆しをみせた一方で、セットアッパーを任される存在となった2年目の又吉克樹(元中日)は試練のスタートとなっています。開幕戦のリードした場面で登板したものの、同点に追い付かれてチームは結果的にサヨナラ負け。2死無走者からの失点が痛すぎました。

 重要な場面で投げるということは、それだけ背負っているものが大きくなります。開幕は独特の雰囲気で力が入った面もあったのでしょう。ピッチングを見ていると、コースが高いため、決していい当たりでなくともヒットゾーンに飛んでしまいます。

 まだシーズンは始まったばかり。悪い部分は速く修正してコンスタントに結果を出してほしいものです。亀澤と又吉は環太平洋大とガイナーズで、いずれも先輩後輩の関係になります。2人で中日を上位に押し上げるような働きをしてくれれば、香川のファンも喜びます。

 亀澤と又吉の縁で、この4月より我がガイナーズに中日から育成選手が派遣されることになりました。21歳の右腕・川崎貴弘です。彼は高卒で中日に入り、一昨年には1軍登板も果たしています。ただ、制球難で思うようなピッチングができず、今季は育成選手として契約を結ぶことになりました。

 今回は谷繁元信兼任監督、森繁和ヘッドコーチとも話をし、我々の育成力が買われて預かることになりました。187センチと身長は高く、ボールもいいものを持っています。ただ、実戦で投げなければ、本当のピッチングは学べません。香川では先発としての起用を考えています。ぜひ1年間で1球の大事さを体感し、制球力を磨いて帰ってほしいと思っています。

 いよいよアイランドリーグも4日からシーズンの開幕です。香川はJABA四国大会に参加するため、リーグ戦の開始は11日と1週間遅れます。チームの仕上がり具合は、投手のムダな四球に、守りのミス、攻撃ではあと1本が出ないなど、まだまだですが、選手たちには「やれるころをやってほしい」と伝えています。

 たとえば、試合に向けての準備、次のプレーに対する備えは誰でも意識すればできることです。これをおろそかにすると、判断を焦り、ミスにつながります。

 長いシーズン、ケガや思わぬアクシデントは避けられません。一方で、予期せぬ選手が急成長を遂げることもあります。僕自身も監督として、どんな状況になっても慌てないよう体制を整えて開幕を迎えるつもりです。

 ぜひ、チャンスをつかもうとプレーしている選手たちをたくさんの方に観ていただければと思っています。その中には、未来の又吉や亀澤がいるかもしれません。今季も球場での応援、声援をよろしくお願いします。

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